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the 5th night 扉越しのコミュニケーション
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その日の夜は、ロキが最初に夜の護衛に入った。その間、カイとシンは部屋で休んでいる。
ロキは王女の部屋に繋がる扉の前に座り、昼間に行った国立図書館での、奇妙な体験を思い出していた。
(記録が消されたのは、単純に女系王族ではなかったからなのか?そんなことで、一国の王家の記録が消されるようなら、この国は大分病んでるな)
シンの情報収集やカイの話を聞く限り、この国は宗教によって王女が信仰されているらしいことが分かってきた。レナは充分魅力的な女性だと思うが、特別な能力のない普通の19歳に見える。
そんなことを考えていると、不意に、隣の部屋からロキの守っている扉に向かって声がした。
「今日もそこにいるんでしょう?」
レナの声だ。どうやら本当にこの国の王女は夜の護衛中に現れるらしい。
「はい、こちらで護衛をしています」
ロキは立ち上がって声のする方に向かって答えた。
「そう、毎日どうもありがとう。任務とは言え、大変ね」
扉一枚を隔てた距離で労わりの声をかけられて、ロキは、
「大変……でもないですよ。王女殿下の責に比べたら、私たちの任務など大したことはありません」
と丁寧に、穏やかに答えた。
「そこにいるのはロキでしょう? カイが、あなたは女性とのコミュニケーションがとても上手いと褒めていたの。カイなら、そんな返答にはならないものね」
レナはそう言って、カイに比べて優しい物言いの護衛を褒める。
「団長は、女性と距離を縮めることに抵抗があるだけです。あの人は女性相手になると冷たいんですけど、相手のためなんですよ」
ロキは、一応上司をフォローする。案外王女も団長の本質を分かっているらしい。
「それは、カイが女性にとって魅力的すぎるからかしら?」
レナが聞くと、
「いえ……いや、そんなに魅力的ですか?」
とロキは笑って続ける。
「団長は女性運がとにかく悪いんです。お母様もお婆様も、団長にとってはトラウマの元なので。大好きなお父様も、お母様が原因で亡くしてますし。どこかで女性を憎んでしまうところがあるんです。そういうのを、避けたいみたいですね」
「そう……カイにも複雑な事情があるのね。小説のモデルにもなって、あんなに人気なのに。ロキ、あなたは団長想いの良い部下ね。私はもう寝るけれど、後をよろしくお願いします。それでは、おやすみなさい」
レナはそう言うと、その場を離れた。
ロキは足音が遠ざかるのを聞きながら、
「お休みなさい、王女殿下。良い夜を」
と、遠ざかる王女の気配に向かって呟いた。
(あなたも、団長を想う女性の1人なのでしょうか)
言えない言葉を心の中に留めていた。
ロキは王女の部屋に繋がる扉の前に座り、昼間に行った国立図書館での、奇妙な体験を思い出していた。
(記録が消されたのは、単純に女系王族ではなかったからなのか?そんなことで、一国の王家の記録が消されるようなら、この国は大分病んでるな)
シンの情報収集やカイの話を聞く限り、この国は宗教によって王女が信仰されているらしいことが分かってきた。レナは充分魅力的な女性だと思うが、特別な能力のない普通の19歳に見える。
そんなことを考えていると、不意に、隣の部屋からロキの守っている扉に向かって声がした。
「今日もそこにいるんでしょう?」
レナの声だ。どうやら本当にこの国の王女は夜の護衛中に現れるらしい。
「はい、こちらで護衛をしています」
ロキは立ち上がって声のする方に向かって答えた。
「そう、毎日どうもありがとう。任務とは言え、大変ね」
扉一枚を隔てた距離で労わりの声をかけられて、ロキは、
「大変……でもないですよ。王女殿下の責に比べたら、私たちの任務など大したことはありません」
と丁寧に、穏やかに答えた。
「そこにいるのはロキでしょう? カイが、あなたは女性とのコミュニケーションがとても上手いと褒めていたの。カイなら、そんな返答にはならないものね」
レナはそう言って、カイに比べて優しい物言いの護衛を褒める。
「団長は、女性と距離を縮めることに抵抗があるだけです。あの人は女性相手になると冷たいんですけど、相手のためなんですよ」
ロキは、一応上司をフォローする。案外王女も団長の本質を分かっているらしい。
「それは、カイが女性にとって魅力的すぎるからかしら?」
レナが聞くと、
「いえ……いや、そんなに魅力的ですか?」
とロキは笑って続ける。
「団長は女性運がとにかく悪いんです。お母様もお婆様も、団長にとってはトラウマの元なので。大好きなお父様も、お母様が原因で亡くしてますし。どこかで女性を憎んでしまうところがあるんです。そういうのを、避けたいみたいですね」
「そう……カイにも複雑な事情があるのね。小説のモデルにもなって、あんなに人気なのに。ロキ、あなたは団長想いの良い部下ね。私はもう寝るけれど、後をよろしくお願いします。それでは、おやすみなさい」
レナはそう言うと、その場を離れた。
ロキは足音が遠ざかるのを聞きながら、
「お休みなさい、王女殿下。良い夜を」
と、遠ざかる王女の気配に向かって呟いた。
(あなたも、団長を想う女性の1人なのでしょうか)
言えない言葉を心の中に留めていた。
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