上 下
47 / 77
第二章 夢なんかみなくても

【コーヒーコラム】マラウイのコーヒー

しおりを挟む
今回は、かなり真面目なお話です。

私の通っているコーヒーショップは、比較的珍しい豆を仕入れてきてくれるお店です。きっと、私のような客が多く集まる店なんだと思います。
訳:物好きが集まるコーヒーショップ。

ブレンドコーヒーのセンスも良く、焙煎士さんの豆の薦め方もいい。
シングルオリジンの豆も色々なものが入荷します。

そんな行きつけのお店で、先日マラウイのコーヒーが入荷していました。

マラウイ共和国というのは、アフリカの貧しい国です。
コーヒー生産地の多くは貧しい国なのですが、マラウイは元イギリス領だったこともあってコーヒーよりも紅茶の生産が盛んな地域。

ただ、土地としてはコーヒー向きで、ゲイシャ種も作っているらしいんですよね。今回入荷していたのもゲイシャでした。
マラウイのコーヒーって希少なのに、パナマゲイシャに比べると安かったです。パナマは人気で高騰しているんだなー・・。

焙煎士さんお薦めの中深煎りにしてもらいました。
折角なので、私の味の感想を書き残しておきます。
同じ国でも農園によって味が異なるので、一つの記録としてお読みください。

今回は中深煎りなのでローストの香ばしい香りが最初に来ますが、コク深く、酸味はマイルドで苦味は強いというよりしっかり、という感じ。

全体的に濃さを感じます。アフリカ系はやっぱりしっかり目の味がします。ミルクとも相性が良いはずです。
※コクはインドネシア系の方が強いのでミルクに負けないのはインドネシアですが、アフリカ系は甘みが出やすい感じがします。

酸味と香りの種類は複雑で、最初はアップル系?ですが途中から柑橘っぽい香りもしつつ、最後はフローラル。

鮮度が高くて良い豆は香りが変化したりして楽しめるものが多いんです。なので、多分これ、品質がとてもいいのでは?とびっくり。

バランス感もあって、さすが私の好みだと把握してくださっている行きつけのお店だー!と思いました。

実は、お店の焙煎士さんが「きっとこれ好きだと思います」って薦めて下さったんです。万人受けするかは分かりませんが、私にとってはとても美味しいコーヒーでした。

コーヒーのことを知ろうとすると、歴史や風土がセットになってきます。

標高が高くなるとコーヒーの味が良くなるのは、朝晩で気温の差が激しくなるからです。
そういう場所は、自然災害も多く貧しくなりやすい土地でもあります。

私はアフリカの歴史や風土のことにあまり詳しくないので、なぜこの産地でこれが等級が高いんだ?というのを調べると、ああなるほど、と遠くの国の事情が分かったりします。

コーヒー生産地の多くが、もともとはどこかの領土だった国が多い。内戦などが続いていた国が多かったり。

日本に住んでいると外国の統治下だったことがないので忘れてしまうんですが、どこかの統治から独立して貧困から抜け出そうとしている国はまだまだたくさんあります。

元アヘン(ケシ)栽培畑だったところが、麻薬に頼らない生活のためにコーヒー農家へ転換していったりと、社会のためにコーヒー栽培が行われるケースもあり、日本の大手企業がそういった農家を支援していたりもします。
※ケシとコーヒーは栽培条件が似ている

世間がSDGsを騒ぎ始める前から、コーヒーには「レインフォレストアライアンス認証」マークがついている商品が割と多くありました。
かわいい緑色のカエルマーク。

レインフォレストアライアンス認証というのは、人と自然に配慮した農園から買い付けた農産物として一定の基準をクリアしている証明です。
※農園が他との差別化のために取るマークで、指標が人と自然に配慮されている証拠。マークが無ければ悪い、というわけではないし、そういった農園の商品と別農園の商品がブレンドされているケースもあるので一概にマークがついているから良いというものでもない。

品質の良いコーヒーを栽培するというのは、森林を守っていく活動に密接です。
厳しい気象条件の中でコーヒーを守るために植える「シェードツリー」は熱帯雨林を守るために機能しています。

一方で、コーヒー生産を行うために森林伐採を行っているケースもあり、コーヒー栽培が環境保全のためと言い切れないのが難しいところ・・。
栽培方法によって、コーヒー栽培は環境保全にも環境破壊にもなりえます。

私たち消費者が選ぶ目を持って環境保全のためにコーヒーを買えるようになると、消費で世界を変えていくこともできるはずです。
この辺は、トレーサビリティとかそういう話になっていくのだと思いますが・・。
※トレーサビリティとは追跡可能性のこと。物品の流通経路を生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態をいう。

生活が世界と繋がっている感覚は意識しないとなかなか思い出せないものですが、毎日時間に追われる生活の中で、ふとした瞬間に世界と繋がるところもコーヒーの良いところ。

私にできることはコーヒーを飲むくらいですが、美味しい時間に思いを馳せて、なるべくその土地のことに興味を持つというのも必要な時間なのかもしれず・・。

マラウイのコーヒーアロマを楽しんでいたら、コーヒーという農産物の持つ世界の広さをつくづく感じました。
何か特別なことができるわけではないのですが、こうやって少しでも世界への関心を持って過ごしていかなければと、ふと考えさせられます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...