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第一章 定食屋で育って
市場調査 2
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ナツさんと私は、地下鉄に乗って別の店に向かっている。
地下鉄の席って、隣の人と身体が密着するけど……今まで意識なんかしたことなかった。
「さっきのお店でプリンをいただいちゃいましたが……お昼どこかで食べましょうか?」
「ああ、はい」
「利津さんは、何が食べたいですか?」
「定食以外で」
「……洋食とか?」
そんなわけで、次の目的地に近い場所にあるビストロでお昼を食べることになった。
「このお店は、ナツさんがよく来るお店ですか?」
「よくというか、前の仕事をしていた時に、たまに」
「お勧めはどれですか?」
「ラザニアか、ポークソテーですね」
2階に上がった場所にあるそのお店は、女性客が多かった。
お肉料理が有名らしいけど、ポークソテーを見るとお店の生姜焼きを思い出す私はラザニアに決める。
「さっきのお店、どう思いました?」
「あのプリンとコーヒーですか?」
「はい」
ナツさんに尋ねられた。本音の話をして欲しいということなんだろう。さっきのお店では言えなかったような。
「味で勝負、という感じではないんだなあと」
「直球」
ナツさんが吹き出している。爆笑するとは失礼な。
「そういうナツさんはどうだったんですか?」
「ああ、はい……。観光地向けな感じですね。地元密着のリピーター向け商売ではないなあと」
「写真が撮れたら満足で、もうあの行列に並んだりはしないんでしょうね」
そういう意味では、ナツさんのお店があるうちの商店街とは特性が違う。
うちの定食屋が生き残っていられるくらい、リピーター向けで地元の人向けのメニューが必要だ。
さっきのお店は、市場調査として参考にはならなかったってことだろうか。
「でも、演出の大事さには改めて気付かされました。僕はメニューの美味しさで他に勝つことは難しいので、やっぱりクリエイティブ勝負でいかないと」
「なるほど」
人気店を見て、自分にできることが思い浮かんでしまうらしいナツさん。
羨ましいなあと言いそうになったところで、ランチが運ばれてきた。
ラザニアは、鉄の器で赤いトマトベースらしいソースと白いベシャメルソースをぐつぐつと煮立たせていた。
「わあ、美味しそう」
私が素直な感想を言ったらナツさんはくくっと笑う。
そんなナツさんの注文したポークソテーには、粒マスタードのソースがかかっている。
「なんか、おかしかったですか? 私」
「いえ、利津さんって食べ物を前にした時に本当に嬉しそうにするなあと」
単純だと言われている気がして、私は膨れた。笑われて喜ぶ人間などいない。
「いつかうちの店でも、その顔が見られたらいいなあって」
ナツさんはポークソテーにナイフを入れながら、何でもないことのようにサラリと言った。
私は、思わず手元が狂いそうになる。
あまりに動揺して、息苦しくなるしラザニアどころではない。
人を揶揄うのも、大概にして欲しい。
*
ビストロを出た私たちは、ナツさんが行きたかったというコーヒーショップにやってきた。
「ここはまた、ぐっと大人っぽいですね……」
地下に降りてお店に入ると、薄暗い店内にぼんやりとした照明。昼間だというのに既に夜のような雰囲気がする。
「さっきのお店は1階で路面店でしたからね、明るかったですよね」
席に案内されて、えんじ色のベルベット生地が張られた1人掛けのソファに座る。お尻が深く沈み込んで、目の前のガラステーブルがちょっと遠くなった。
ここは行列にもなっていないし、すんなりと店にも入れる。
「このお店は、並んだりしないんですね?」
「この辺は、平日が混んでいるんですよ。周りに会社が結構あって」
「へえ……」
メニューを渡されて、何が良いだろうかと唸る。
ケーキはいくつか種類があるし、大人っぽいお洒落なパフェ、フレンチトースト、パンケーキまで……。いや、全体的に重い。重すぎる。
「食後にこんな重いデザート食べるんですね……」
「ドン引きしてますね、利津さん」
「いやちょっと、そこまでお腹に余裕あるかなあって」
巷の女性達には別腹なるものがあるらしいが、私にはない。
食後はそれなりに食べられる量が減る。
「じゃあ、こうしませんか? 僕が何か頼みますから、利津さんは味見だけ、好きなだけ食べてもらうのではいかがでしょうか? 僕、さっきのお店のランチでは足りないのでまだ余裕があるんです」
「そうしていただけると、大変助かります……」
ナツさんが「じゃあ、フレンチトーストとパフェはどちらが興味あります?」と聞くので、「どちらでも……」と答えると「折角なのでパフェ行っちゃいましょう」と笑っていた。
確かに、このお店のパフェはビジュアルが気になる。
フルーツの断面が綺麗にグラスの外から見えるように盛り付けられていて、ゼリーの層とムースの層が鮮やかに線を引いている。てっぺんにはアイスにフルーツソース、そしてメレンゲらしきお菓子が飾り付けられていて……。
飲み会が終わった後に行く夜パフェがあるって聞いたことがあるけど、多分こういうお店なんじゃないだろうか。営業時間を確認してみたら、やっぱり22時過ぎまで営業していた。
そうかあ、こういう街で働いていると……夜こんなお洒落なパフェを食べたりするんだなあ。
そんなことがよぎると、私は自分の働く定食屋を思い出して悲しくなる。
毎日、半径100mの中で生きているような私。下町で、定食屋で、キラキラした世界を知らない。
そんなことをボーっと考えていたら、オーダーを取りに来たのでナツさんはマスカットのパフェとブレンドコーヒーを、私はブレンドコーヒーをお願いした。
「都会で働いていると、こんなお洒落なパフェが食べられちゃうんですね」
私はメニューのパフェ一覧を見ながらため息をつく。いいなあ、楽しそう。
刺激があって、毎日がきっと同じことの繰り返しではなくて……。
「何か、思うところがあるんですか?」
ナツさんがいつもの柔らかい顔でこっちを見ている。今なら、ぶちまけられるだろうか。
「実は私……一度普通に就職したんです」
「ああ、ご自宅の定食屋で働く前ですか?」
「はい」
ナツさんは、やっぱり何でもないことのように聞いてくれようとしている。
今話さないと後悔するような気がした。
「その、就職したのは小さなメーカーだったんですけど……最初、お客様相談窓口に配属になって。私、お客様から聞かれたこととか、クレームとか、全力で応えようとしちゃったんですよ、そういうものだと思ってて」
「ああ、新人さんだとそうなりますよね。すいません……続けてください」
「それがなんか、とある先輩にとっては癪だったらしくて。新人だから大抵の事は分からなかったんですけど、誰からも助けてもらえなくなっちゃって」
思い出すと、未だに足が震えてくるのが分かる。
誰にも相手にされなかったショックや絶望を、今でもはっきりと覚えていた。
「クレームは鳴り続けちゃうし、相談相手がいないしで、会社に行こうとするとお腹が痛くなるようになってしまったんです」
「……それはそうでしょう」
「だけど、お父さんは私が就職して喜んでくれていたから、そんなことで諦めちゃいけないって」
「無理をしたんですね?」
情けないことに、その後の記憶は曖昧で、そこまでよく覚えていない。
無理しながら会社に行くと、トイレの個室にいる時間がどんどん長くなり、ある日突然、何かが切れたように辞表を提出した。
「だから、お父さんには心配をかけっぱなしで。うち、私が4歳の時にお母さんが亡くなってるんです。お父さんは私を育てるのに小料理屋では生活リズムが合わないって、今のお店を開いて家で仕事ができるようにしてくれて」
「いいお父さんですねえ」
「今は、私のせいで仕事が辞められません」
下町から出られない私は、お父さんの人生を奪って生きている。
年が行ってからできた子である私、お父さんはもうすぐ60歳だ。世間的には定年の年齢が近付いている。
だけどもう、私を外で働かせようとはしなくなった。
「でもそれは、利津さんのせいではないですね」
「私が就職先でちゃんと出来ていれば……」
「就職先が圧倒的に悪いです。そんなところは辞めて正解です」
お父さんも同じようなことを言っていたけど、一度逃げた経験が原因で前に進めなくなることもある。
私は居心地のいい下町に甘え、もう他に行きたくなくなっていた。
でも、今日このお店に来て、その時間で失っている物を見た気がした。
「お待たせしましたー」
その時、席にパフェが運ばれてくると目の前の景色が一気に変わる。
「う、うわあ」
思わず目が釘付けになってしまった。マスカットの黄緑色とアイスクリームの薄いクリーム色、そこにホイップクリームの白い装飾と薄い黄緑色のマカロン。グラスの内側が透明とグリーンと茶色の3層になっていて可愛らしい。
「利津さん」
パフェを視界に入れて口が半開きになっている私を、ナツさんが堪らず笑っている。
あ、さっきも言われたな、食事を目に入れるとどうこうって。
「就職先には恵まれなかったかもしれませんが、僕は利津さんがお隣で働いていてくれて良かったですよ」
「は、はあ……」
深刻な話をしていた最中に、すっかりパフェに目を奪われた私を笑っているのだろう、それはそうだ。
「次は、僕の力で利津さんが毎日そんな顔になってくれるように頑張ります」
「……は? どういうことですか?」
「ブレンドコーヒーのお礼です。外で働きに出るよりも、利津さんが楽しく過ごせるように、刺激のある毎日を送れるように、何かお役に立てるように、試行錯誤します。これも何かの縁ですから」
「……え、えっと」
予想外のことを言われてしまい、今の私はもう、心ここにあらずだ。
ああ、収まれ、この胸の高鳴りみたいなもの。
違うんだって、これはドキドキしてるんじゃない。
ドキドキしてるんじゃなくて……。
ーー駄目だ。こんなの、ドキドキするなと言われても無理でしょうが。
地下鉄の席って、隣の人と身体が密着するけど……今まで意識なんかしたことなかった。
「さっきのお店でプリンをいただいちゃいましたが……お昼どこかで食べましょうか?」
「ああ、はい」
「利津さんは、何が食べたいですか?」
「定食以外で」
「……洋食とか?」
そんなわけで、次の目的地に近い場所にあるビストロでお昼を食べることになった。
「このお店は、ナツさんがよく来るお店ですか?」
「よくというか、前の仕事をしていた時に、たまに」
「お勧めはどれですか?」
「ラザニアか、ポークソテーですね」
2階に上がった場所にあるそのお店は、女性客が多かった。
お肉料理が有名らしいけど、ポークソテーを見るとお店の生姜焼きを思い出す私はラザニアに決める。
「さっきのお店、どう思いました?」
「あのプリンとコーヒーですか?」
「はい」
ナツさんに尋ねられた。本音の話をして欲しいということなんだろう。さっきのお店では言えなかったような。
「味で勝負、という感じではないんだなあと」
「直球」
ナツさんが吹き出している。爆笑するとは失礼な。
「そういうナツさんはどうだったんですか?」
「ああ、はい……。観光地向けな感じですね。地元密着のリピーター向け商売ではないなあと」
「写真が撮れたら満足で、もうあの行列に並んだりはしないんでしょうね」
そういう意味では、ナツさんのお店があるうちの商店街とは特性が違う。
うちの定食屋が生き残っていられるくらい、リピーター向けで地元の人向けのメニューが必要だ。
さっきのお店は、市場調査として参考にはならなかったってことだろうか。
「でも、演出の大事さには改めて気付かされました。僕はメニューの美味しさで他に勝つことは難しいので、やっぱりクリエイティブ勝負でいかないと」
「なるほど」
人気店を見て、自分にできることが思い浮かんでしまうらしいナツさん。
羨ましいなあと言いそうになったところで、ランチが運ばれてきた。
ラザニアは、鉄の器で赤いトマトベースらしいソースと白いベシャメルソースをぐつぐつと煮立たせていた。
「わあ、美味しそう」
私が素直な感想を言ったらナツさんはくくっと笑う。
そんなナツさんの注文したポークソテーには、粒マスタードのソースがかかっている。
「なんか、おかしかったですか? 私」
「いえ、利津さんって食べ物を前にした時に本当に嬉しそうにするなあと」
単純だと言われている気がして、私は膨れた。笑われて喜ぶ人間などいない。
「いつかうちの店でも、その顔が見られたらいいなあって」
ナツさんはポークソテーにナイフを入れながら、何でもないことのようにサラリと言った。
私は、思わず手元が狂いそうになる。
あまりに動揺して、息苦しくなるしラザニアどころではない。
人を揶揄うのも、大概にして欲しい。
*
ビストロを出た私たちは、ナツさんが行きたかったというコーヒーショップにやってきた。
「ここはまた、ぐっと大人っぽいですね……」
地下に降りてお店に入ると、薄暗い店内にぼんやりとした照明。昼間だというのに既に夜のような雰囲気がする。
「さっきのお店は1階で路面店でしたからね、明るかったですよね」
席に案内されて、えんじ色のベルベット生地が張られた1人掛けのソファに座る。お尻が深く沈み込んで、目の前のガラステーブルがちょっと遠くなった。
ここは行列にもなっていないし、すんなりと店にも入れる。
「このお店は、並んだりしないんですね?」
「この辺は、平日が混んでいるんですよ。周りに会社が結構あって」
「へえ……」
メニューを渡されて、何が良いだろうかと唸る。
ケーキはいくつか種類があるし、大人っぽいお洒落なパフェ、フレンチトースト、パンケーキまで……。いや、全体的に重い。重すぎる。
「食後にこんな重いデザート食べるんですね……」
「ドン引きしてますね、利津さん」
「いやちょっと、そこまでお腹に余裕あるかなあって」
巷の女性達には別腹なるものがあるらしいが、私にはない。
食後はそれなりに食べられる量が減る。
「じゃあ、こうしませんか? 僕が何か頼みますから、利津さんは味見だけ、好きなだけ食べてもらうのではいかがでしょうか? 僕、さっきのお店のランチでは足りないのでまだ余裕があるんです」
「そうしていただけると、大変助かります……」
ナツさんが「じゃあ、フレンチトーストとパフェはどちらが興味あります?」と聞くので、「どちらでも……」と答えると「折角なのでパフェ行っちゃいましょう」と笑っていた。
確かに、このお店のパフェはビジュアルが気になる。
フルーツの断面が綺麗にグラスの外から見えるように盛り付けられていて、ゼリーの層とムースの層が鮮やかに線を引いている。てっぺんにはアイスにフルーツソース、そしてメレンゲらしきお菓子が飾り付けられていて……。
飲み会が終わった後に行く夜パフェがあるって聞いたことがあるけど、多分こういうお店なんじゃないだろうか。営業時間を確認してみたら、やっぱり22時過ぎまで営業していた。
そうかあ、こういう街で働いていると……夜こんなお洒落なパフェを食べたりするんだなあ。
そんなことがよぎると、私は自分の働く定食屋を思い出して悲しくなる。
毎日、半径100mの中で生きているような私。下町で、定食屋で、キラキラした世界を知らない。
そんなことをボーっと考えていたら、オーダーを取りに来たのでナツさんはマスカットのパフェとブレンドコーヒーを、私はブレンドコーヒーをお願いした。
「都会で働いていると、こんなお洒落なパフェが食べられちゃうんですね」
私はメニューのパフェ一覧を見ながらため息をつく。いいなあ、楽しそう。
刺激があって、毎日がきっと同じことの繰り返しではなくて……。
「何か、思うところがあるんですか?」
ナツさんがいつもの柔らかい顔でこっちを見ている。今なら、ぶちまけられるだろうか。
「実は私……一度普通に就職したんです」
「ああ、ご自宅の定食屋で働く前ですか?」
「はい」
ナツさんは、やっぱり何でもないことのように聞いてくれようとしている。
今話さないと後悔するような気がした。
「その、就職したのは小さなメーカーだったんですけど……最初、お客様相談窓口に配属になって。私、お客様から聞かれたこととか、クレームとか、全力で応えようとしちゃったんですよ、そういうものだと思ってて」
「ああ、新人さんだとそうなりますよね。すいません……続けてください」
「それがなんか、とある先輩にとっては癪だったらしくて。新人だから大抵の事は分からなかったんですけど、誰からも助けてもらえなくなっちゃって」
思い出すと、未だに足が震えてくるのが分かる。
誰にも相手にされなかったショックや絶望を、今でもはっきりと覚えていた。
「クレームは鳴り続けちゃうし、相談相手がいないしで、会社に行こうとするとお腹が痛くなるようになってしまったんです」
「……それはそうでしょう」
「だけど、お父さんは私が就職して喜んでくれていたから、そんなことで諦めちゃいけないって」
「無理をしたんですね?」
情けないことに、その後の記憶は曖昧で、そこまでよく覚えていない。
無理しながら会社に行くと、トイレの個室にいる時間がどんどん長くなり、ある日突然、何かが切れたように辞表を提出した。
「だから、お父さんには心配をかけっぱなしで。うち、私が4歳の時にお母さんが亡くなってるんです。お父さんは私を育てるのに小料理屋では生活リズムが合わないって、今のお店を開いて家で仕事ができるようにしてくれて」
「いいお父さんですねえ」
「今は、私のせいで仕事が辞められません」
下町から出られない私は、お父さんの人生を奪って生きている。
年が行ってからできた子である私、お父さんはもうすぐ60歳だ。世間的には定年の年齢が近付いている。
だけどもう、私を外で働かせようとはしなくなった。
「でもそれは、利津さんのせいではないですね」
「私が就職先でちゃんと出来ていれば……」
「就職先が圧倒的に悪いです。そんなところは辞めて正解です」
お父さんも同じようなことを言っていたけど、一度逃げた経験が原因で前に進めなくなることもある。
私は居心地のいい下町に甘え、もう他に行きたくなくなっていた。
でも、今日このお店に来て、その時間で失っている物を見た気がした。
「お待たせしましたー」
その時、席にパフェが運ばれてくると目の前の景色が一気に変わる。
「う、うわあ」
思わず目が釘付けになってしまった。マスカットの黄緑色とアイスクリームの薄いクリーム色、そこにホイップクリームの白い装飾と薄い黄緑色のマカロン。グラスの内側が透明とグリーンと茶色の3層になっていて可愛らしい。
「利津さん」
パフェを視界に入れて口が半開きになっている私を、ナツさんが堪らず笑っている。
あ、さっきも言われたな、食事を目に入れるとどうこうって。
「就職先には恵まれなかったかもしれませんが、僕は利津さんがお隣で働いていてくれて良かったですよ」
「は、はあ……」
深刻な話をしていた最中に、すっかりパフェに目を奪われた私を笑っているのだろう、それはそうだ。
「次は、僕の力で利津さんが毎日そんな顔になってくれるように頑張ります」
「……は? どういうことですか?」
「ブレンドコーヒーのお礼です。外で働きに出るよりも、利津さんが楽しく過ごせるように、刺激のある毎日を送れるように、何かお役に立てるように、試行錯誤します。これも何かの縁ですから」
「……え、えっと」
予想外のことを言われてしまい、今の私はもう、心ここにあらずだ。
ああ、収まれ、この胸の高鳴りみたいなもの。
違うんだって、これはドキドキしてるんじゃない。
ドキドキしてるんじゃなくて……。
ーー駄目だ。こんなの、ドキドキするなと言われても無理でしょうが。
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