31 / 35
一緒に生きていく
大好きな君に シン視点
しおりを挟む
最近、リリスの家と実家の両方を行き来しながら生活している。
土日に狩りをして実家の家計を助けていたのをやめて、実家に入れるお金を増やした。
金曜の夜からリリスの家に入り浸るようになっているから。
まだ結婚していないのにと思うんだけど、リリスの家族が「もうずっとここに住んで欲しい」と引き留めてくる始末だ。
リリスは仮にもお嬢様なはずなのに、「もう事実婚しちゃう?」と甘えながら俺をマクウェル家に置こうとする。
しちゃう? じゃない。欲求に素直すぎる。しっかりしようよ。
リリスはすぐに周りが見えなくなる子だ。
特に、俺とのことになるとその傾向が強い。
別に頭が悪い子じゃないんだけどなあ。
リリスが暴走しないようにちゃんと見張っていないと、とんでもないことになりそうな気がする。
最近職場でも、リリスが怒っていたり騒いでいるとみんな俺を呼びに来るようになった。
騒いでいるリリスは抱きしめたら一発で大人しくなるから、猛獣使いになった気分だ。
彼女に冷静という言葉の意味はなかなか浸透しない。
そんなリリスだけど、一緒にいるようになって人生観が変わったのは間違いない。
これまで、この世は頭のいいクソッタレが支配するところだと思っていた。
生まれた時から恵まれた人間が、一生恵まれたまま生きているのだと疑っていなかった。
父さんを騙した奴らが賢くて、貧しい農民は一生貧しい。
騙されるやつが悪いんであって、被害者は自業自得だと言われた。
だから、ろくでもないこの世には何の未練もなく、俺は騎士になった。
君は、俺のことを情報弱者の典型だと言ったよね。
今まで、そんなふうに言われたことはなかったんだ。
被害者は被害者らしく生きろっていう、そんな圧力の中で。
同じ人間だとすら思ってもらえなかったし、それまで誰にも助けてもらえなかった。
だから、家族なんか持てないって諦めるのが当然だったんだよ。
諦めるのに慣れると、夢なんか見なくなる。
それが普通になれば楽だったけど、そのせいで君を傷付けた。
君やロキに出会い、見方が変わったんだ。
情報弱者の自分を捨てて、武器を持った。
相変わらず農民ではあるけれど、騎士爵という爵位がもらえた。
それに、あんなに特権階級だと思っていた貴族階級の君を見ていたら、貴族は貴族で色々ある。
好きな人と一緒になりたいという平民にとってはごく当たり前の幸せを願う君が、貴族階級では生きづらかったのだと知った。
君と出会ってからの世界は、絶望よりも希望に満ちてる。
すぐに怒るし落ち着きなんかは全く無い君だけど。
冷めた目で物事を見がちな俺には、その位の君が側にいるのがちょうどいい。
リリスと一緒にいるようになってから、前より諦めが悪くなった気がする。そのお陰で仕事は順調だ。
大好きだと囁かれながら過ごす夜が、愛しているとしがみつかれる朝が、この先もずっと続いていってくれるように。
君が望むものを、望む以上に与え続けられるパートナーでありたいと願うから。
土日に狩りをして実家の家計を助けていたのをやめて、実家に入れるお金を増やした。
金曜の夜からリリスの家に入り浸るようになっているから。
まだ結婚していないのにと思うんだけど、リリスの家族が「もうずっとここに住んで欲しい」と引き留めてくる始末だ。
リリスは仮にもお嬢様なはずなのに、「もう事実婚しちゃう?」と甘えながら俺をマクウェル家に置こうとする。
しちゃう? じゃない。欲求に素直すぎる。しっかりしようよ。
リリスはすぐに周りが見えなくなる子だ。
特に、俺とのことになるとその傾向が強い。
別に頭が悪い子じゃないんだけどなあ。
リリスが暴走しないようにちゃんと見張っていないと、とんでもないことになりそうな気がする。
最近職場でも、リリスが怒っていたり騒いでいるとみんな俺を呼びに来るようになった。
騒いでいるリリスは抱きしめたら一発で大人しくなるから、猛獣使いになった気分だ。
彼女に冷静という言葉の意味はなかなか浸透しない。
そんなリリスだけど、一緒にいるようになって人生観が変わったのは間違いない。
これまで、この世は頭のいいクソッタレが支配するところだと思っていた。
生まれた時から恵まれた人間が、一生恵まれたまま生きているのだと疑っていなかった。
父さんを騙した奴らが賢くて、貧しい農民は一生貧しい。
騙されるやつが悪いんであって、被害者は自業自得だと言われた。
だから、ろくでもないこの世には何の未練もなく、俺は騎士になった。
君は、俺のことを情報弱者の典型だと言ったよね。
今まで、そんなふうに言われたことはなかったんだ。
被害者は被害者らしく生きろっていう、そんな圧力の中で。
同じ人間だとすら思ってもらえなかったし、それまで誰にも助けてもらえなかった。
だから、家族なんか持てないって諦めるのが当然だったんだよ。
諦めるのに慣れると、夢なんか見なくなる。
それが普通になれば楽だったけど、そのせいで君を傷付けた。
君やロキに出会い、見方が変わったんだ。
情報弱者の自分を捨てて、武器を持った。
相変わらず農民ではあるけれど、騎士爵という爵位がもらえた。
それに、あんなに特権階級だと思っていた貴族階級の君を見ていたら、貴族は貴族で色々ある。
好きな人と一緒になりたいという平民にとってはごく当たり前の幸せを願う君が、貴族階級では生きづらかったのだと知った。
君と出会ってからの世界は、絶望よりも希望に満ちてる。
すぐに怒るし落ち着きなんかは全く無い君だけど。
冷めた目で物事を見がちな俺には、その位の君が側にいるのがちょうどいい。
リリスと一緒にいるようになってから、前より諦めが悪くなった気がする。そのお陰で仕事は順調だ。
大好きだと囁かれながら過ごす夜が、愛しているとしがみつかれる朝が、この先もずっと続いていってくれるように。
君が望むものを、望む以上に与え続けられるパートナーでありたいと願うから。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】お姉様の婚約者
七瀬菜々
恋愛
姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。
残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。
サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。
誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。
けれど私の心は晴れやかだった。
だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。
ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる