数字で恋する男爵令嬢

碧井夢夏

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一緒に生きていく

大好きな君に シン視点

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 最近、リリスの家と実家の両方を行き来しながら生活している。

 土日に狩りをして実家の家計を助けていたのをやめて、実家に入れるお金を増やした。
 金曜の夜からリリスの家に入り浸るようになっているから。

 まだ結婚していないのにと思うんだけど、リリスの家族が「もうずっとここに住んで欲しい」と引き留めてくる始末だ。

 リリスは仮にもお嬢様なはずなのに、「もう事実婚しちゃう?」と甘えながら俺をマクウェル家に置こうとする。
 しちゃう? じゃない。欲求に素直すぎる。しっかりしようよ。

 リリスはすぐに周りが見えなくなる子だ。
 特に、俺とのことになるとその傾向が強い。
 別に頭が悪い子じゃないんだけどなあ。

 リリスが暴走しないようにちゃんと見張っていないと、とんでもないことになりそうな気がする。

 最近職場でも、リリスが怒っていたり騒いでいるとみんな俺を呼びに来るようになった。
 騒いでいるリリスは抱きしめたら一発で大人しくなるから、猛獣使いになった気分だ。

 彼女に冷静という言葉の意味はなかなか浸透しない。

 そんなリリスだけど、一緒にいるようになって人生観が変わったのは間違いない。

 これまで、この世は頭のいいクソッタレが支配するところだと思っていた。
 生まれた時から恵まれた人間が、一生恵まれたまま生きているのだと疑っていなかった。

 父さんを騙した奴らが賢くて、貧しい農民は一生貧しい。
 騙されるやつが悪いんであって、被害者は自業自得だと言われた。
 だから、ろくでもないこの世には何の未練もなく、俺は騎士になった。

 君は、俺のことを情報弱者の典型だと言ったよね。
 今まで、そんなふうに言われたことはなかったんだ。
 被害者は被害者らしく生きろっていう、そんな圧力の中で。
 同じ人間だとすら思ってもらえなかったし、それまで誰にも助けてもらえなかった。

 だから、家族なんか持てないって諦めるのが当然だったんだよ。
 諦めるのに慣れると、夢なんか見なくなる。
 それが普通になれば楽だったけど、そのせいで君を傷付けた。

 君やロキに出会い、見方が変わったんだ。
 情報弱者の自分を捨てて、武器を持った。

 相変わらず農民ではあるけれど、騎士爵という爵位がもらえた。

 それに、あんなに特権階級だと思っていた貴族階級の君を見ていたら、貴族は貴族で色々ある。
 好きな人と一緒になりたいという平民にとってはごく当たり前の幸せを願う君が、貴族階級では生きづらかったのだと知った。


 君と出会ってからの世界は、絶望よりも希望に満ちてる。

 すぐに怒るし落ち着きなんかは全く無い君だけど。
 冷めた目で物事を見がちな俺には、その位の君が側にいるのがちょうどいい。

 リリスと一緒にいるようになってから、前より諦めが悪くなった気がする。そのお陰で仕事は順調だ。

 大好きだと囁かれながら過ごす夜が、愛しているとしがみつかれる朝が、この先もずっと続いていってくれるように。

 君が望むものを、望む以上に与え続けられるパートナーでありたいと願うから。
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