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一緒に生きていく
オトナノカンケイ
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私は初めて仕事を休んだ。
シンは普通に出勤していて、私の休みを伝えてくれている。
半分仮病の私はベッドで休んでダラダラしていた。え? 恋の病だからいいのよ。
シンは仕事終わりで我が家に来てくれて、私のベッド脇に座って事の次第を報告してくれた。
カイに「何でお前がリリスの欠勤を知ってるんだ」と突っ込まれ、その空気の読めなさに周りが無言の大騒ぎになったんだとか。相変わらずだわ。
私が正直に言ったのかと聞いたら「未来の妻だからですって言った」とシンがニコニコするから、ハートが射抜かれてキュン死寸前になっている。
やだもう、好き! シンってばニコニコしてて可愛いのに、ちゃんとこういうこと言ってくれるから好き!
ベッドで身悶える私を見て、シンは心配そうにこっちを見た。
「体調は? 明日は出勤できそう?」
「……ダメって言ったら? シンも一緒に休んでくれるの??」
「甘えてないで明日は仕事行くよ」
「……はあーい……」
シンって、なんだかちゃんとしてるのよねえ。全然乗ってくれない。
そういうところも好きだから、私の負けだわ! はい、負け負け!!
負けでもなんでもいいから、そろそろキスしてくれないかなー。
シンってばー。この熱い視線を無視しないでよおー。
ねえねえー。なんで分かってて目を逸らすのよおー。
*
次の日は、シンと出勤した。
この行動は一緒の場所から出勤していると宣言しているようなもので、既に結婚した関係みたいで嬉しくて恥ずかしい。
「あら、あらら? なんだか肌つやが良いんじゃないの??」
トランスジェンダーのハンは、こういうことを無神経に言って来る。
ちょっと。偶然聞かされた野菜が数名、動揺しているじゃないの。
「さあ、どうでしょう……」
私は別にどうってことはない。何も変わっていないんだから。
シンとよりを戻して、婚約して、家族同然のように一緒にいるだけ。
「ねえ、シンって良かった??」
ハンは他に聞こえないようにコッソリと耳打ちして聞いてきた。
このオカマぁあ!! 下品なこと聞かないでよ!!
「ご想像にお任せします」
「そっかあ、良かったんだあ」
「何にも言ってないでしょ??」
「顔が違うもんねえ。愛されて満たされてますって顔。女ってやだやだ」
ハンはニヤリと笑って「良かったね」と去って行った。
私は昨日堂々と仕事を休んでしまった手前、何も言えない。
愛されて満たされている部分に関しては、反論のしようもない。
だって、その通りだもの。
私は、人生を諦めかけたどん底一歩手前で、大好きな人にすくいあげられた。
もう一緒になれないと諦めていた人に告白され、求婚され、挙句たっぷり愛されてしまったら、満たされないわけがない。
私の好きな人はいつだって優しくて、お砂糖菓子のように甘い人かと思ったのに。
実際は私を砂糖のように甘く変えてくれる人で、そのくせちょっと意地悪で……それはもう、かっこよかった。
そんなことを思い出すと何もできなくなってしまいそうだから、仕事の数字を見て気を紛らわせている。
「うまく行ったの?」
サラさんが心配そうに私を見た。
私は「ええ、プロポーズされました」と改めて報告をする。「良かったわね、報われたわね」とサラさんは嬉しそうに目を細めていた。
心配してくれていたんだと思うと、ちょっとうるっとしてしまう。
私には、いつの間にか応援してくれる人がいたらしい。
「ありがとうございます。私、これからはずっとシンと一緒です」
「頑張んなさいよ、ずっと一緒にいるってのは、それなりに大変よ」
「その点に関しては、一番心配のない人と一緒になれるので」
私が得意気に言うと、サラさんは納得していた。
穏やかに過ごせるという点において、シンほど安定感のある人はいない。
ただ恥ずかしいことに、私は前よりもシンのことがずっとずっと好きで、多分もう引き返せない位に彼に夢中で、見ているだけでおかしくなりそうで。
こうしている間にも、あの腕の中に収まって溶け合うように過ごした時間がフラッシュバックしてしまう。
ああ、こんなはずじゃなかった。
彼に愛されたくて、彼の一番になりたくてたまらなかったのは間違いないんだけど。
前よりも……思い出すだけでこんなにドキドキしてしまうほど好きになってしまうなんて、想定外だったの。
シンは普通に出勤していて、私の休みを伝えてくれている。
半分仮病の私はベッドで休んでダラダラしていた。え? 恋の病だからいいのよ。
シンは仕事終わりで我が家に来てくれて、私のベッド脇に座って事の次第を報告してくれた。
カイに「何でお前がリリスの欠勤を知ってるんだ」と突っ込まれ、その空気の読めなさに周りが無言の大騒ぎになったんだとか。相変わらずだわ。
私が正直に言ったのかと聞いたら「未来の妻だからですって言った」とシンがニコニコするから、ハートが射抜かれてキュン死寸前になっている。
やだもう、好き! シンってばニコニコしてて可愛いのに、ちゃんとこういうこと言ってくれるから好き!
ベッドで身悶える私を見て、シンは心配そうにこっちを見た。
「体調は? 明日は出勤できそう?」
「……ダメって言ったら? シンも一緒に休んでくれるの??」
「甘えてないで明日は仕事行くよ」
「……はあーい……」
シンって、なんだかちゃんとしてるのよねえ。全然乗ってくれない。
そういうところも好きだから、私の負けだわ! はい、負け負け!!
負けでもなんでもいいから、そろそろキスしてくれないかなー。
シンってばー。この熱い視線を無視しないでよおー。
ねえねえー。なんで分かってて目を逸らすのよおー。
*
次の日は、シンと出勤した。
この行動は一緒の場所から出勤していると宣言しているようなもので、既に結婚した関係みたいで嬉しくて恥ずかしい。
「あら、あらら? なんだか肌つやが良いんじゃないの??」
トランスジェンダーのハンは、こういうことを無神経に言って来る。
ちょっと。偶然聞かされた野菜が数名、動揺しているじゃないの。
「さあ、どうでしょう……」
私は別にどうってことはない。何も変わっていないんだから。
シンとよりを戻して、婚約して、家族同然のように一緒にいるだけ。
「ねえ、シンって良かった??」
ハンは他に聞こえないようにコッソリと耳打ちして聞いてきた。
このオカマぁあ!! 下品なこと聞かないでよ!!
「ご想像にお任せします」
「そっかあ、良かったんだあ」
「何にも言ってないでしょ??」
「顔が違うもんねえ。愛されて満たされてますって顔。女ってやだやだ」
ハンはニヤリと笑って「良かったね」と去って行った。
私は昨日堂々と仕事を休んでしまった手前、何も言えない。
愛されて満たされている部分に関しては、反論のしようもない。
だって、その通りだもの。
私は、人生を諦めかけたどん底一歩手前で、大好きな人にすくいあげられた。
もう一緒になれないと諦めていた人に告白され、求婚され、挙句たっぷり愛されてしまったら、満たされないわけがない。
私の好きな人はいつだって優しくて、お砂糖菓子のように甘い人かと思ったのに。
実際は私を砂糖のように甘く変えてくれる人で、そのくせちょっと意地悪で……それはもう、かっこよかった。
そんなことを思い出すと何もできなくなってしまいそうだから、仕事の数字を見て気を紛らわせている。
「うまく行ったの?」
サラさんが心配そうに私を見た。
私は「ええ、プロポーズされました」と改めて報告をする。「良かったわね、報われたわね」とサラさんは嬉しそうに目を細めていた。
心配してくれていたんだと思うと、ちょっとうるっとしてしまう。
私には、いつの間にか応援してくれる人がいたらしい。
「ありがとうございます。私、これからはずっとシンと一緒です」
「頑張んなさいよ、ずっと一緒にいるってのは、それなりに大変よ」
「その点に関しては、一番心配のない人と一緒になれるので」
私が得意気に言うと、サラさんは納得していた。
穏やかに過ごせるという点において、シンほど安定感のある人はいない。
ただ恥ずかしいことに、私は前よりもシンのことがずっとずっと好きで、多分もう引き返せない位に彼に夢中で、見ているだけでおかしくなりそうで。
こうしている間にも、あの腕の中に収まって溶け合うように過ごした時間がフラッシュバックしてしまう。
ああ、こんなはずじゃなかった。
彼に愛されたくて、彼の一番になりたくてたまらなかったのは間違いないんだけど。
前よりも……思い出すだけでこんなにドキドキしてしまうほど好きになってしまうなんて、想定外だったの。
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