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一緒に生きていく
ハツヨル シン視点
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リリスの部屋は小さな蝋燭の灯りだけが灯っている。
仄暗い部屋で二人きり。
将来を誓い合った後で、リリスは俺を求めてくれた。
気持ちは確かめ合っているし、迷いはない……けれど。
半年も募らせた想いを、こんな風にぶつけることになるなんて。
リリスの首筋に唇を当てながら、その衣服を剥くように脱がしていく。
素肌が露わになったからじっと見つめると、恥ずかしそうに目線が泳いだ。
もう、これだけで充分なくらい満たされる。
リリスを手に入れる贅沢な男を想像して、何度も何度も嫉妬に狂っていた。
こういう時にリリスが全てを委ねる相手が、心底羨ましかったから。
君は知らない。
俺がどれだけリリスを毎日想っていたのか。
諦めようと自分に言い聞かせて醜い未練を燻らせてきたのか。
体にゆっくりと手と唇を当ててなぞる間も、離れていた半年分の気持ちが溢れてくる。
リリスは心地良さそうに目をとろんとさせながら、時々息を漏らしていた。
「可愛い。すごく綺麗だよ」
何度も声に出して言うと、それに応えるように反応する。
お世辞でもなんでもなく、リリスはいつも可愛くて俺の理想の女の子だった。
何度も囁いて触れると叫びに近い声が上がりだす。
素直な反応が愛しくて、その度に切ない。
ごめんーー。
最初は、団長なんか止めて俺にすればいいのにって近付いたんだ。
それなのに、別れる選択をするなんてどうかしていた。
こんなに至らない俺なのに、ずっと気持ちが繋がっていたのだと思うと嬉しくて泣けそうになる。
リリスは必死に「大好き」と口に出した。
その度に「大好きだよ」と応えてはみるけど、言葉とは裏腹に行動はどんどん荒くなっていく。
快楽を覚えて助けを求めるように鳴く様子を、ひたすら求めてしまう。
このリリスを知るのは俺だけなのだと歪んだ独占欲が満たされていった。
リリスの目は愛情を訴えるような熱を帯びているし、切なげな声で何度も俺の名前を呼ぶ。
その度に、どんどん自分が自分でなくなっていくような心地がした。
少しでも優しくできるようにと思っていたのに、君をもっともっと、深く知りたくて。
どうやら、その欲求が止められそうにない。
ぐったりしている身体を抱え、引き寄せた。
「ごめん。もう、いいかな」
申し訳ないと思いながら、我慢ができなくなっている。
傷付けるのは気が引けるけど、ひとつになりたい。
リリスが明らかに苦痛に歪んだ顔をしているのが分かる。
薄っすらと見える顔に唇で触れた。
「つらいよね……ごめ……ん」
気を抜くと意識が遠のきそうな中で謝る。リリスは懸命に首を振った。
最低だ。好きな子が痛みを堪えているのに、その現実が見えなくなっていく。
本能とは厄介で、感情を越えて暴走をする。
苦しめたくないという気持ちが、どんどん自分から消えていくのが分かった。
痛みに上がる小さな悲鳴に、身体の奥がビリビリと痺れる。
困ったな。誰のためにこうしているんだっけ……。
「シンは、良いの? これが、いい?」
リリスは、こちらの様子を気にしている。多分、顔に全部出てるんだと思う。
「うん……。すごくいい」
愛が相手のためのものならば、この行為は愛ではないのかもしれない。
少なくとも、リリスは苦しんでいるのに。
「そうなの?」
苦しそうな顔が綻んで、満面の笑みが咲く。
全てを受け止めてくれるようなその性格は、普段の口調からは想像もつかないけど。本当に愛情深い子だ。
いつから君のことが好きだったのかな。
もしかすると、初めて会った時からこうなることを望んでいたのかもしれない。
リリスを感じる。どうしようもなく。
今のこの幸せな感覚は、まだ一方的なものだ。
「愛してるよ」
半年も悲しい思いをさせた挙句、君を他の誰にも渡したくなかったって気付いて。
こんなの、愛にしては自分本位だと分かっているけど。
「リリスだけを、愛してる」
「嬉し……」
苦しそうな顔にごめんと言いそうになったけど、きっと謝られたくないんだろうなと止めた。
「どんなリリスも、全部好きだよ」
誤魔化すような告白に、「私も、シンの全部が好き」とリリスは目に涙を溜めて言った。
本音で言ってくれているのが分かるから、つられて泣きたくなる。
腕の中のリリスをきつく抱きしめながら、もう二度と離さないと誓った。
嬉しいのか苦しいのか分からない表情で、リリスは涙を流していた。
*
仰向けになったリリスの四肢はだらりとしている。荒い息をしながら切なげな顔をこっちに向けて。
今、どんな気持ちでいるんだろう。髪を撫でて、そっとかぶさるように抱きしめる。
「ねえ……」
リリスが胸元で言った。
「大丈夫だった……? これで、良かった……?」
うん……?! 大丈夫だった? ってどういうことだ?
「大好きなリリスとこうしていられて、幸せだよ」
「……そう」
いやいや、なんでそんな無理矢理納得した感じになってんだよ??
何が悪かったんだ? え? どうしてこうなってる??
あー……なんだ。最後までずっと不安だったのか。全然ダメだ。ダメダメだ……。
「リリス。ちょっと余韻から抜けられないみたいで。もう一回いい?」
「えっ??」
予想外の提案をされたせいか、リリスは慌てていた。
反省した俺は、もう次しか見えていない。
一度で伝わらなければ、伝わるまで伝える。
君はまだ、知らないと思うけど……。
実は俺、かなり負けず嫌いなんだよね。
仄暗い部屋で二人きり。
将来を誓い合った後で、リリスは俺を求めてくれた。
気持ちは確かめ合っているし、迷いはない……けれど。
半年も募らせた想いを、こんな風にぶつけることになるなんて。
リリスの首筋に唇を当てながら、その衣服を剥くように脱がしていく。
素肌が露わになったからじっと見つめると、恥ずかしそうに目線が泳いだ。
もう、これだけで充分なくらい満たされる。
リリスを手に入れる贅沢な男を想像して、何度も何度も嫉妬に狂っていた。
こういう時にリリスが全てを委ねる相手が、心底羨ましかったから。
君は知らない。
俺がどれだけリリスを毎日想っていたのか。
諦めようと自分に言い聞かせて醜い未練を燻らせてきたのか。
体にゆっくりと手と唇を当ててなぞる間も、離れていた半年分の気持ちが溢れてくる。
リリスは心地良さそうに目をとろんとさせながら、時々息を漏らしていた。
「可愛い。すごく綺麗だよ」
何度も声に出して言うと、それに応えるように反応する。
お世辞でもなんでもなく、リリスはいつも可愛くて俺の理想の女の子だった。
何度も囁いて触れると叫びに近い声が上がりだす。
素直な反応が愛しくて、その度に切ない。
ごめんーー。
最初は、団長なんか止めて俺にすればいいのにって近付いたんだ。
それなのに、別れる選択をするなんてどうかしていた。
こんなに至らない俺なのに、ずっと気持ちが繋がっていたのだと思うと嬉しくて泣けそうになる。
リリスは必死に「大好き」と口に出した。
その度に「大好きだよ」と応えてはみるけど、言葉とは裏腹に行動はどんどん荒くなっていく。
快楽を覚えて助けを求めるように鳴く様子を、ひたすら求めてしまう。
このリリスを知るのは俺だけなのだと歪んだ独占欲が満たされていった。
リリスの目は愛情を訴えるような熱を帯びているし、切なげな声で何度も俺の名前を呼ぶ。
その度に、どんどん自分が自分でなくなっていくような心地がした。
少しでも優しくできるようにと思っていたのに、君をもっともっと、深く知りたくて。
どうやら、その欲求が止められそうにない。
ぐったりしている身体を抱え、引き寄せた。
「ごめん。もう、いいかな」
申し訳ないと思いながら、我慢ができなくなっている。
傷付けるのは気が引けるけど、ひとつになりたい。
リリスが明らかに苦痛に歪んだ顔をしているのが分かる。
薄っすらと見える顔に唇で触れた。
「つらいよね……ごめ……ん」
気を抜くと意識が遠のきそうな中で謝る。リリスは懸命に首を振った。
最低だ。好きな子が痛みを堪えているのに、その現実が見えなくなっていく。
本能とは厄介で、感情を越えて暴走をする。
苦しめたくないという気持ちが、どんどん自分から消えていくのが分かった。
痛みに上がる小さな悲鳴に、身体の奥がビリビリと痺れる。
困ったな。誰のためにこうしているんだっけ……。
「シンは、良いの? これが、いい?」
リリスは、こちらの様子を気にしている。多分、顔に全部出てるんだと思う。
「うん……。すごくいい」
愛が相手のためのものならば、この行為は愛ではないのかもしれない。
少なくとも、リリスは苦しんでいるのに。
「そうなの?」
苦しそうな顔が綻んで、満面の笑みが咲く。
全てを受け止めてくれるようなその性格は、普段の口調からは想像もつかないけど。本当に愛情深い子だ。
いつから君のことが好きだったのかな。
もしかすると、初めて会った時からこうなることを望んでいたのかもしれない。
リリスを感じる。どうしようもなく。
今のこの幸せな感覚は、まだ一方的なものだ。
「愛してるよ」
半年も悲しい思いをさせた挙句、君を他の誰にも渡したくなかったって気付いて。
こんなの、愛にしては自分本位だと分かっているけど。
「リリスだけを、愛してる」
「嬉し……」
苦しそうな顔にごめんと言いそうになったけど、きっと謝られたくないんだろうなと止めた。
「どんなリリスも、全部好きだよ」
誤魔化すような告白に、「私も、シンの全部が好き」とリリスは目に涙を溜めて言った。
本音で言ってくれているのが分かるから、つられて泣きたくなる。
腕の中のリリスをきつく抱きしめながら、もう二度と離さないと誓った。
嬉しいのか苦しいのか分からない表情で、リリスは涙を流していた。
*
仰向けになったリリスの四肢はだらりとしている。荒い息をしながら切なげな顔をこっちに向けて。
今、どんな気持ちでいるんだろう。髪を撫でて、そっとかぶさるように抱きしめる。
「ねえ……」
リリスが胸元で言った。
「大丈夫だった……? これで、良かった……?」
うん……?! 大丈夫だった? ってどういうことだ?
「大好きなリリスとこうしていられて、幸せだよ」
「……そう」
いやいや、なんでそんな無理矢理納得した感じになってんだよ??
何が悪かったんだ? え? どうしてこうなってる??
あー……なんだ。最後までずっと不安だったのか。全然ダメだ。ダメダメだ……。
「リリス。ちょっと余韻から抜けられないみたいで。もう一回いい?」
「えっ??」
予想外の提案をされたせいか、リリスは慌てていた。
反省した俺は、もう次しか見えていない。
一度で伝わらなければ、伝わるまで伝える。
君はまだ、知らないと思うけど……。
実は俺、かなり負けず嫌いなんだよね。
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