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誤魔化せない想い
デート 4
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外にずっといるのもおかしいので、私はシンを誘って店内に戻った。
先程のカップルはもうお店を出て行くところで、その密着ぶりからこの後もずっと一緒に過ごしそうな雰囲気だ。
そういうのを目の当たりにしても特に気持ち悪くはならなくて、お腹が減っていた私は食事を食べたくてメイン料理やパンを注文した。
私が切った鳩肉をシンにあげたり、シンの兎肉をもらったりして、私たちは他のカップルと大差のないやり取りをしている。
美味しい料理と温かい空間に、好きな人がいる。
なんだか涙が出そうになって来た。
「土日は何をして過ごすの?」
「農業の手伝いと狩りだなあ。今日食べたみたいな美味しい肉を狩らないと」
「働きづめじゃないの」
シンは働き者だ。平日は騎士として、休日は農民として、毎日働いているらしい。
「そうだなあ、確かに働きづめかも」
「もっと遊びたいとか思わない? ほら、団員のみんなが街に繰り出していったみたいに」
「どうだろ。家族は欲しかったけど」
ちょっとだけシンの顔が翳った。家族が欲しかったということは、諦めたってことなんだろうか。もしかして、借金があったのと関係がある……?
「なんだか意外ね。欲しかったとか、過去形」
「まあ、ね」
これ以上は深入りしてはいけない雰囲気がして、私はその先を聞くのは止めた。
「……かっこわる」
「ほんと、かっこわるいよなあ」
苦笑いして認めているシンを見ていたら、私はイライラしてきた。
違う、こんなやり取りがしたいんじゃない。なんでシンが自分のことをかっこ悪いって言って落ち込んでるの?
「何よそれ。大人ぶってるつもり? 諦めるのが賢いとか思ってるの? 馬鹿じゃない?」
狭い店内で、ハッキリと言い切ってしまった。他のお客さんや店員さんもびっくりして私を見ている。
少なくとも、さっきまで和やかだった割に馬鹿じゃない? の罵倒は無い。
シンは驚いて私を見ているし、店内がしんとしてしまった。私のせいで。
「えっと……。大きな声でごめんなさい。でも、言わせてもらうけど。私にかっこ悪いって言われて素直に認めるのは0点よ」
「何点満点?」
「100点満点中」
「でもさ、かっこ悪いって言って来たリリスが言うこと?」
確かに……。
どの口が言うかってことになると、途端に私の立場は無い。
「言っておくけど……私、思ったことが全部口から出るだけじゃなくて、思ってないことも全部口から出るわけ」
「難しい口だね」
「たまに自分でもよく分からなくなるのよ」
シンは吹き出して笑っていた。そう、偉そうに言ってるけど、馬鹿は私だ。
言いたいことも言えず、そのくせ可愛げのないことばかりが口を突いて出て行く。
こんな女、誰が好きになるものか。
「かわいいなあ」
は?? はあ?? 頭打った?? 今のどこが??
シンはニコニコしながら私を見ていた。
ちょっと頭、おかしいんじゃないの??
「ねえリリス。今度の任務から帰ってきたら、また一緒に帰ろうよ」
「今度の任務……?」
私は今の今まで忘れていたのだ。
この目の前の男の人が、騎士という職業に就いていたことを。
先程のカップルはもうお店を出て行くところで、その密着ぶりからこの後もずっと一緒に過ごしそうな雰囲気だ。
そういうのを目の当たりにしても特に気持ち悪くはならなくて、お腹が減っていた私は食事を食べたくてメイン料理やパンを注文した。
私が切った鳩肉をシンにあげたり、シンの兎肉をもらったりして、私たちは他のカップルと大差のないやり取りをしている。
美味しい料理と温かい空間に、好きな人がいる。
なんだか涙が出そうになって来た。
「土日は何をして過ごすの?」
「農業の手伝いと狩りだなあ。今日食べたみたいな美味しい肉を狩らないと」
「働きづめじゃないの」
シンは働き者だ。平日は騎士として、休日は農民として、毎日働いているらしい。
「そうだなあ、確かに働きづめかも」
「もっと遊びたいとか思わない? ほら、団員のみんなが街に繰り出していったみたいに」
「どうだろ。家族は欲しかったけど」
ちょっとだけシンの顔が翳った。家族が欲しかったということは、諦めたってことなんだろうか。もしかして、借金があったのと関係がある……?
「なんだか意外ね。欲しかったとか、過去形」
「まあ、ね」
これ以上は深入りしてはいけない雰囲気がして、私はその先を聞くのは止めた。
「……かっこわる」
「ほんと、かっこわるいよなあ」
苦笑いして認めているシンを見ていたら、私はイライラしてきた。
違う、こんなやり取りがしたいんじゃない。なんでシンが自分のことをかっこ悪いって言って落ち込んでるの?
「何よそれ。大人ぶってるつもり? 諦めるのが賢いとか思ってるの? 馬鹿じゃない?」
狭い店内で、ハッキリと言い切ってしまった。他のお客さんや店員さんもびっくりして私を見ている。
少なくとも、さっきまで和やかだった割に馬鹿じゃない? の罵倒は無い。
シンは驚いて私を見ているし、店内がしんとしてしまった。私のせいで。
「えっと……。大きな声でごめんなさい。でも、言わせてもらうけど。私にかっこ悪いって言われて素直に認めるのは0点よ」
「何点満点?」
「100点満点中」
「でもさ、かっこ悪いって言って来たリリスが言うこと?」
確かに……。
どの口が言うかってことになると、途端に私の立場は無い。
「言っておくけど……私、思ったことが全部口から出るだけじゃなくて、思ってないことも全部口から出るわけ」
「難しい口だね」
「たまに自分でもよく分からなくなるのよ」
シンは吹き出して笑っていた。そう、偉そうに言ってるけど、馬鹿は私だ。
言いたいことも言えず、そのくせ可愛げのないことばかりが口を突いて出て行く。
こんな女、誰が好きになるものか。
「かわいいなあ」
は?? はあ?? 頭打った?? 今のどこが??
シンはニコニコしながら私を見ていた。
ちょっと頭、おかしいんじゃないの??
「ねえリリス。今度の任務から帰ってきたら、また一緒に帰ろうよ」
「今度の任務……?」
私は今の今まで忘れていたのだ。
この目の前の男の人が、騎士という職業に就いていたことを。
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