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誤魔化せない想い
デート 2
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シンと馬上で色々な話をした。
シンは狩猟が得意で、投石でも動物を狩ることが出来るんだという。
貴族階級の中でも狩りは好まれていることだから、狩りが得意というのは貴族でも自慢できるわよと言ったらシンは笑っていた。
私が話をすると、シンは本当に楽しそうに笑ってくれる。
それが嬉しいから、私も普段よりおしゃべりになった。
今まで出会った男の人は私がしゃべると嫌がる人ばかりだったけど、シンは嬉しそうに聞いてくれる。
私の家に向かうルートを外れて、どんどん人気のない森に入って行った。
賑やかな街の方向とは外れていくと、一体どこに向かっているのか不安になってくる。
このシンに限って、どこかに連れ込まれて乱暴されるようなことはないと信じているけど……もしかして、私が浅はかだったのか。
不安になると、私の口数は減った。
「こんなところに、店があるとは思わないよね?」
足元すら見えないような暗い森を進んでいると、本当に何かされてしまうのかもしれないと身体が硬直してくる。
突然、一軒家のようなお店が見えて、そこから賑やかな声が聞こえて来た。
「あそこ、本当にいい店なんだ」
まさか普通にお店に着くとは思わなくて、私の緊張がそこで一気にほぐれた。
お店の造りからして、バールか何かなんだろう。
「よく来るの?」
「いや、3回しか来たこと無いけどね」
その3回っていうのは、女の人と?
どちらかというと、そういうことが知りたい。
シンはお店の前に馬を停めると、昨日と同じように私を降ろした。
また一瞬だけ、彼の腕の中に収まる。
もう少しこのまま、と願ってしまって、何を考えているんだろうと慌てた。
シンの数字を思い浮かべていなかったから、もっと時間が欲しかったんだと思う、多分。
シンは馬をお店の裏手に預けて、私の手を取ってお店に入った。
当たり前のように手を繋いでいるけれど、これって普通なんだろうか。
「こんばんはー」
シンがお店に入って挨拶をすると、木の温かみのある店内が目に入る。お店の中にいた人たちが一斉にこちらを見た。
「こんばんは!」
店内のお客さんも店員さんも、私たちを見て挨拶をしてくれる。
お店にいる人たちも温かくて、こういうお店を『本当にいい店』だと言った隣の男性を、私は見直していた。
カウンター席に着くと温かい鶏肉のシチューが初めに提供されて、あつあつのシチューを木製のスプーンですくいながら私たちは他愛もない話をしている。
お店からお酒も勧められたけれど、私もシンも今日は飲まないからと言って断った。
よく見るとお店には夫婦らしき人たちも含めたカップルばかりで、私たちの側にいる2人組は、隣り合って座りながら濃厚なキスをしている。
どうしよう、こんな世界知らない……。
気まずくて私がドキドキとしていたら、「人前でも随分堂々としてるね」とシンは世間話を振って来た。私は頷いてシチューを飲み干すと、無言になってしまう。
濃厚なことをしていた2人が何やらこの後の予定を話し始めていて、私から冷や汗が溢れて来た。
どこに泊まるとか泊らないとか、私が人生で一度も聞いたことのない会話だ。
女の人の甘ったるい声が、なんだかとても怖い。
「リリス、外の空気を吸いに行く?」
シンに誘われるまま、私は一度外に出た。
シンは狩猟が得意で、投石でも動物を狩ることが出来るんだという。
貴族階級の中でも狩りは好まれていることだから、狩りが得意というのは貴族でも自慢できるわよと言ったらシンは笑っていた。
私が話をすると、シンは本当に楽しそうに笑ってくれる。
それが嬉しいから、私も普段よりおしゃべりになった。
今まで出会った男の人は私がしゃべると嫌がる人ばかりだったけど、シンは嬉しそうに聞いてくれる。
私の家に向かうルートを外れて、どんどん人気のない森に入って行った。
賑やかな街の方向とは外れていくと、一体どこに向かっているのか不安になってくる。
このシンに限って、どこかに連れ込まれて乱暴されるようなことはないと信じているけど……もしかして、私が浅はかだったのか。
不安になると、私の口数は減った。
「こんなところに、店があるとは思わないよね?」
足元すら見えないような暗い森を進んでいると、本当に何かされてしまうのかもしれないと身体が硬直してくる。
突然、一軒家のようなお店が見えて、そこから賑やかな声が聞こえて来た。
「あそこ、本当にいい店なんだ」
まさか普通にお店に着くとは思わなくて、私の緊張がそこで一気にほぐれた。
お店の造りからして、バールか何かなんだろう。
「よく来るの?」
「いや、3回しか来たこと無いけどね」
その3回っていうのは、女の人と?
どちらかというと、そういうことが知りたい。
シンはお店の前に馬を停めると、昨日と同じように私を降ろした。
また一瞬だけ、彼の腕の中に収まる。
もう少しこのまま、と願ってしまって、何を考えているんだろうと慌てた。
シンの数字を思い浮かべていなかったから、もっと時間が欲しかったんだと思う、多分。
シンは馬をお店の裏手に預けて、私の手を取ってお店に入った。
当たり前のように手を繋いでいるけれど、これって普通なんだろうか。
「こんばんはー」
シンがお店に入って挨拶をすると、木の温かみのある店内が目に入る。お店の中にいた人たちが一斉にこちらを見た。
「こんばんは!」
店内のお客さんも店員さんも、私たちを見て挨拶をしてくれる。
お店にいる人たちも温かくて、こういうお店を『本当にいい店』だと言った隣の男性を、私は見直していた。
カウンター席に着くと温かい鶏肉のシチューが初めに提供されて、あつあつのシチューを木製のスプーンですくいながら私たちは他愛もない話をしている。
お店からお酒も勧められたけれど、私もシンも今日は飲まないからと言って断った。
よく見るとお店には夫婦らしき人たちも含めたカップルばかりで、私たちの側にいる2人組は、隣り合って座りながら濃厚なキスをしている。
どうしよう、こんな世界知らない……。
気まずくて私がドキドキとしていたら、「人前でも随分堂々としてるね」とシンは世間話を振って来た。私は頷いてシチューを飲み干すと、無言になってしまう。
濃厚なことをしていた2人が何やらこの後の予定を話し始めていて、私から冷や汗が溢れて来た。
どこに泊まるとか泊らないとか、私が人生で一度も聞いたことのない会話だ。
女の人の甘ったるい声が、なんだかとても怖い。
「リリス、外の空気を吸いに行く?」
シンに誘われるまま、私は一度外に出た。
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