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好きな人と気になる人
約束
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私は、気付くと帰りのことを考えてしまっていた。
シンさんと約束した帰り道のこと。パパとママに同僚の人に送ってもらうと伝えたら、「なんで?」と聞かれてうまく答えられなかった。
なんで、送ってくれるんだろう。
別に、途中とかついでではないはずなんだけど……。
よく分からないけど、初めて馬に乗せてもらう。
それって……なんかちょっとデートみたいな感じなのかなあ。
っていうか、デートって何だろう。世間ではどういうのをデートっていうんだろう。
「リリス、俺の股下っていくつだっけ?」
「81㎝よ」
「すげえな」
団員が自分のサイズを確認するのに私に気軽に話しかけてくる。
全員のあらゆる数値が頭の中に記憶されている私は、聞かれたら大体すぐに答えられるわけだけれど、これは普通ではないらしい。
男所帯の中で仕事をしていると男性にもすっかり慣れて来て、その辺の野菜程度にしか思わなくなって来た。
だから野菜に話しかけられても適当に返せる。
「リリスってお嬢様なんだろ? 許嫁とかいるの?」
「興味ないからいない」
「この騎士団で誰がタイプ?」
「カイ」
「やっぱりかー」
何がやっぱりなのか分からないけど、こんな感じで普通に野菜との会話はできている。
シンさんと一緒に現れた数字の大したことのない金髪美男は、ロキといって団員のくせに商社を経営している実業家だった。しかも同い年。
私もだけど、あんたもここでわざわざ働く必要ないでしょうが。
と思ったらますます気に入らなくなってしまった。同族嫌悪だ。
あちらも貴族階級者が嫌いらしく、お互いに嫌い合う仲になっている。彼に関しては野菜とは思えなくて、私にとって害虫みたいなものだ。
あっという間に今日の分の仕事が終わってしまった。
自分でもびっくりするくらい、集中していたのかもしれない。
手持無沙汰になってしまって、こっそりと外を眺める。
団員の中で、みんなの中心で楽しそうに笑っている人がいた。
誰に対しても平等で、明るい茶髪が似合う人だ。
その人は、まさか私がこんなに早く仕事を終わらせていることなんか知らずに、同僚たちとふざけ合っている。
年齢は24歳らしい。
私よりも6つも年が上なのかと思うと、結構上なんだなってびっくりする。
いい意味でも年上っぽくないというか、若々しいのか腰が低いのか、誰とでも親しそう。
ねえ、シンさん。私もう仕事終わってますけどーー。
こんな若い乙女を捕まえて、同僚とふざけてる暇なんてないでしょう?
早くこっちに来なさいよ……。
と念を送っていたらシンさんがこっちを見た。
しまった、と焦って咄嗟に目を逸らし、私は慌てて机に向かう。
部屋の中からだから、向こうから見えていたかは分からないけど……。
仕事が片付いた席に座っていたら、なんだか虚しくなって来た。
私ばっかり急いで仕事を片付けて、馬鹿みたい。こっちの気も知らないで、楽しそうにふざけ合ってて……。
「もう、仕事終わった?!」
その時、事務所の扉が勢いよく開いた。
大きな声を上げて現れたのは、シンさんだった。
「終わってますけど……?」
私はつんとしながらそちらから視線を外して、相当かわいくない態度で答えてしまった。
シンさんと約束した帰り道のこと。パパとママに同僚の人に送ってもらうと伝えたら、「なんで?」と聞かれてうまく答えられなかった。
なんで、送ってくれるんだろう。
別に、途中とかついでではないはずなんだけど……。
よく分からないけど、初めて馬に乗せてもらう。
それって……なんかちょっとデートみたいな感じなのかなあ。
っていうか、デートって何だろう。世間ではどういうのをデートっていうんだろう。
「リリス、俺の股下っていくつだっけ?」
「81㎝よ」
「すげえな」
団員が自分のサイズを確認するのに私に気軽に話しかけてくる。
全員のあらゆる数値が頭の中に記憶されている私は、聞かれたら大体すぐに答えられるわけだけれど、これは普通ではないらしい。
男所帯の中で仕事をしていると男性にもすっかり慣れて来て、その辺の野菜程度にしか思わなくなって来た。
だから野菜に話しかけられても適当に返せる。
「リリスってお嬢様なんだろ? 許嫁とかいるの?」
「興味ないからいない」
「この騎士団で誰がタイプ?」
「カイ」
「やっぱりかー」
何がやっぱりなのか分からないけど、こんな感じで普通に野菜との会話はできている。
シンさんと一緒に現れた数字の大したことのない金髪美男は、ロキといって団員のくせに商社を経営している実業家だった。しかも同い年。
私もだけど、あんたもここでわざわざ働く必要ないでしょうが。
と思ったらますます気に入らなくなってしまった。同族嫌悪だ。
あちらも貴族階級者が嫌いらしく、お互いに嫌い合う仲になっている。彼に関しては野菜とは思えなくて、私にとって害虫みたいなものだ。
あっという間に今日の分の仕事が終わってしまった。
自分でもびっくりするくらい、集中していたのかもしれない。
手持無沙汰になってしまって、こっそりと外を眺める。
団員の中で、みんなの中心で楽しそうに笑っている人がいた。
誰に対しても平等で、明るい茶髪が似合う人だ。
その人は、まさか私がこんなに早く仕事を終わらせていることなんか知らずに、同僚たちとふざけ合っている。
年齢は24歳らしい。
私よりも6つも年が上なのかと思うと、結構上なんだなってびっくりする。
いい意味でも年上っぽくないというか、若々しいのか腰が低いのか、誰とでも親しそう。
ねえ、シンさん。私もう仕事終わってますけどーー。
こんな若い乙女を捕まえて、同僚とふざけてる暇なんてないでしょう?
早くこっちに来なさいよ……。
と念を送っていたらシンさんがこっちを見た。
しまった、と焦って咄嗟に目を逸らし、私は慌てて机に向かう。
部屋の中からだから、向こうから見えていたかは分からないけど……。
仕事が片付いた席に座っていたら、なんだか虚しくなって来た。
私ばっかり急いで仕事を片付けて、馬鹿みたい。こっちの気も知らないで、楽しそうにふざけ合ってて……。
「もう、仕事終わった?!」
その時、事務所の扉が勢いよく開いた。
大きな声を上げて現れたのは、シンさんだった。
「終わってますけど……?」
私はつんとしながらそちらから視線を外して、相当かわいくない態度で答えてしまった。
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