あの丘でもう一度。

うたは

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出会い

入学式

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「あれ、もしかして翔!?」

今日から大学が始まった。小さなこの街では、小学校から大学までほぼほぼ皆同じが当たり前だ。

つまり、幼い頃この街に住んでいた翔にも知り合いがいても当然なのだ。

「うわ、友哉じゃん。久しぶり。お前全然変わってないな~。」久々に見た友との再会に翔の顔にも思わず笑みが浮かぶ。

「もう大丈夫なの?」突然の問いに翔は首を傾げた。咄嗟に事故の記憶が脳裏を過る。翔はあの事故以来、事故の話を避けてきた、朱音のことは思い出しても事故の記憶だけは消し続けてきたのだ。

「ん?何が?」「え、お前あの事故以来すっかり笑わなくなってたから笑えるようになったんだと思ってさ!」友哉にきっと悪気はない、翔は精一杯の笑顔で頷き、話題を変える。


彼女はいないのか、今あいつは何をしているのか、聞きたいこと、知りたいこと、沢山ある。入学式そっちのけですっかり話し込んでしまった。

ふと翔の目の前を何かが通過した気がして顔を上げる、目の前には勿論他の新入生たちが真剣に話を聞いている。気のせいか、再び友哉の方に目を向けた。


____

長かった入学式が終わり、講堂を出ると真っ青な空が広がっていた。雲ひとつない綺麗な青空で、思わず翔の顔も綻ぶ。

「翔って、空好きだよな。」「何、ダジャレ?」友哉のしょうもないボケに笑ってつっこめる、幸せだなあと心の中で呟いた。

と、その時だった。翔の前をまた誰かが通過した気がして慌てて周りを見る。息が詰まりそうになった。

翔の目線の先には中学生ぐらいだろうか、一人の女の子がオドオドしている。。「朱音…?」思わず声が漏れる。大人にはなっているが確かにその少女は朱音にそっくりで、目が離せない。

「翔、どうした?」友哉が翔の目線の先を追う。「なにおまえ、ロリコン趣味?」今は茶化しに乗っている気分じゃない。

「あの子、誰?」こんな小さな街だ。知らない子なんて少ないはず、そんな希望を持って聞いてみたが友哉の答えは呆気なかった。「いや、見た事ないなあ…誰だろ。」

翔の動悸がますます早くなる、朱音にしか見えないその少女と目が合った。少女がこっちに駆け寄ってくる。翔は思わず後退りした。

「こんにちは!私、最近転校してきたばっかで、杉野中学の新1年生です!!迷子になったので道教えてください!」
「迷子…?」
「はい!入学式終わってあと帰るだけだったんですけど中学校探検しようとしたら迷子になりました!」

元気よく言ってのける少女はあの頃の朱音のままだ。彼女は朱音じゃない、わかってるのに気持ちが追いつかない。

中学校は確かこの大学の裏側だ。奥に奥に行くうちに迷子になったのだろう。

「分かった、ついておいで。」翔も正直全く分からないが友哉に道案内は任せることにした。「友哉いいよな?」呆れたように頷いたのを見届け、翔たちは、杉野中学へと向かった。
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