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血も唾液も混ざり合って、黒に犯されたい。

16話 秘密の血は吸血鬼を魅了する。

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息をするだけで痛い。喉に空気が行き来するだけで、涙がボロボロと流れる。目の奥が熱い。

こんなにも痛いのに抵抗1つせず、俺は言われた通りに首を差し出していた。

牙が中から抜かれる。

赤い髪と赤い目の吸血鬼。吸血鬼は親指の腹で唇を拭うと...掠れた声で「あー」と漏らす。なにか考えてるような声で、赤い目が俺を見ている。

、それだけで体が金縛りにあっている。
動けない。体が震える。雨に打たれたからじゃない、目の前の吸血鬼に恐怖を感じてるんだ。雫ではない、冷や汗が頬を通って顎から落ちる。
吸血鬼の赤い目。行動の自由を奪ってしまう魅力の能力、これが魅了...ギリギリと拳に力を込める。力は入っても振り上げることはできない。

「お前、...この味はなんだ?」

言ってる意味が分からない。ただでさえこんな痛いのに、...味って...なんで俺が血の味?について分かるんだよ。

「なに黙ってんだよ、答えろよ。」
「し、らないって。」
「...俺は何千と食ってきたが、こんな美味い血知らない。なぁ。」

その言い方...

「人間の血以外も吸ったことがあるのか?」
「俺は美食家だからな。」
「俺の血がなにに似てるっていうんだよ。」
「やっぱ自分の味に興味があんのか?そりゃあそうだよな...してんだからよ。」

伝わってくる。先ほど噛まれた首が、ゆっくりと傷が塞がっていくのを感じる。

だよ、それもお前ーーー俺がずっと探してるが混じってるぜ。」
「っ、がはっ!?」

吸血鬼はグッと俺の首を掴んできた。あとほんの少しの力で首を...折られてしまう!!

「まさか始祖の吸血鬼が人間になっちまったのか?なぁ?」
「ちがっ...ぅ」
「なに言ってんだよ、人間が傷を一瞬で治せるはずねぇだろ?1ヶ月はかかるんじゃねぇのかぁ?」

一ヶ月は馬鹿にしすぎだろ。

それよりも、...まじで言ってる意味がわからない。始祖?いや、なんだそれ。天野麗子なら始祖の吸血鬼について知ってたりするのか?

「お前の匂いもしてんなぁ。」

天野麗子と一緒にいた吸血鬼のことを言ってるのか?

試しに言ってみる価値ありか?

「お、まえっ、は、...はっ、どりひ、...?」

首を離され、俺はそのまま地面に落ちた。コンクリートに両膝を打ちつけ、涙が出て、口の端から漏れていた唾液を袖でサッと拭う。

「てめぇ、なんで俺の名前を...」

この吸血鬼の名前はハイドリヒだ。前にクロが俺の体から匂うっていってた吸血鬼。

ハイドリヒは短く「チッ」と舌打ちをする。

「...ミハイルが近くにいるな。」

吸血鬼は匂いに敏感だ。いつハイドリヒとミハイルに出会ったのか分からないが、クロードは俺を通して2人の名前を口にした。

それならハイドリヒの方は?

「始祖の吸血鬼ってなんだよ、俺が始祖の吸血鬼?そんな匂いがするっていうのか?」
「俺がお前に教えるわけないだろ。」

ハイドリヒの体が黒い霧に変わってしまう。

痛みはまだ覚えているのに、...首にその痕はない。

俺は雨に打たれながらーーークロがいる家へと歩く。
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