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3章 プロローグ・はじまりのガーデン

12話 疑心の追求は、自らの追放。

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花の名前を持った子どもたち、孤児院ガーデン。唯一の大人、みんなのお母さんエンゼ。

ここでもう一つの唯一は、俺ウツギだけが男であった。

食卓には十数人の子どもたちが席についた。

「ウツギは男の子だからいっぱい食べるよね?私のお野菜も分けてあげる!」
「あ、あぁ。」
「チェリー、あなたもいっぱい食べないと大きくなれないわよ?それに、ちゃんとウツギがお腹いっぱいになれるように分けてあるから、ふふっ、大丈夫よ。」
「えぇー...。」

チェリー。

あの女が持っていた写真の娘と瓜二つの少女。

チェリー...いや、チェリーだけじゃない、このガーデンにいる子どもはみんな誘拐されてきた? 
もしかして、...俺も?ここにくるまでの記憶がないのは俺も同じだ。俺も、どこからか連れてこられた?

食事が済み、みんなそれぞれの部屋に入っていく。大体4.5人部屋になっているようだが、俺は1人部屋だった。

壁に触れながら廊下を歩いていく。

記憶がどんどん戻っている、そんな感覚。この家の中を歩けば歩くほど、頭の奥底に眠っていた記憶が浮かび上がってくる。

コンコン、と扉をノックする。だからこの部屋の場所も迷わずにやってこれた。

「こんばんは、ウツギ。」
「...こんばんは。」
「今日は、なんだかウツギがここを訪ねるかもって、そんな予感がしていたわ。」

ガチャリと俺の背中で扉が閉まる。

窓側の机と向かい合っていた母さんだったが、今度は机に背を向け、俺と体を合わせるようにして椅子に座り直す。

「今日は荷物持ち、ありがとね。」
「別に、ほとんどなんもしてないよ。母さんが転移魔法を使ったしね。」
「……。」
「転移魔法は禁忌魔法で普通の人は使えないんじゃないのか?母さんは魔女?魔者?」
「どちらでもない。ただーーー人間でもない。」

人間じゃない。じゃあ一体なんだっていうんだ?

「それで、...ウツギはどうしたいの?」
「どうって...」

このプロローグが終わった先は、性別を偽って天使生活だ。でも今それをやりたいっていうのは脈略がない。そもそも、まだ天使といった職業?が出ていない。
くそっ、なにも考えずに気になったことを聞いちまったよ。

「明日、好きに動いてみて。」
「それって、どういう?」
「教会の神父様にウツギのことを紹介するわ。」
「なんで...」
「人間じゃない私と一緒に生活するのは難しいでしょ?だってもう気づいてるのよね...その記憶が偽者だって。」

母からの拒絶に、ドンッと心臓を鷲掴みにされ、胸が苦しい。  

「そんなつもりなくて、俺はただ...気になったから。」
「うん、ありがとう。ウツギ、私から話してもウツギは多分疑っちゃうと思うわ。だから自分の目で、耳で、私のことを調べてほしい。それでまた私のことをお母さんって呼んで。」
「か、あさん。」
「私はたしかに人間じゃない。でもウツギ、あなたも、ガーデンの子どもたちはみんな等しく私が愛し、守る子どもたちよ。」

ーーー大人になるための社会勉強という名目で、俺はガーデンを離れることになった。

「「ウツギ、いってらっしゃい!!」」

子どもたちが手をいっぱいに振る。

ガーデンの子どもたちに見送られる。母さんと手を繋ぎ、門を通り抜ける。

「これからウツギがお世話になるのはルクス教会、神様や天使様を信仰する教会で神父様はドゥーケさんよ。」
「...母さんは魔女だって虐げられてるんだよな?それなのにルクス教会と関わりがあるのか?」
「えぇ、とても良くしてくれるわ。」

それじゃあ母さんの正体は、そっち関係?

「ウツギと同い年の少年もいるみたいだから、きっと生活するのに苦はないはず。」

同い年?

「俺って今何歳なんだ?」

自分の歳も今の俺には分からない。

「18歳。私が記憶を奪ってしまったけど、ウツギはもう立派な大人なのよ。」
「そうなんだ。」
「……。」
「それじゃあ、母さんが守りたい子どもの中に俺は入ってないんじゃないのか?」
「そんなことない。ウツギ、年齢なんて関係無い、どんなに大きくなっても、ウツギ、ガーデンにいる限りずっと私が守りたい子どもたちなの。」

よく、分からない。守るって...守るって何から守るんだ?
そういう敵から守るって意味なのか?それとも、何でもないプロポーズで使うような意味なのか?

「……転移魔法を使うわね。」
「あ、」
「?」
「母さんも一緒に来るのか?」
「えぇ、連絡は飛ばしたけど、ちゃんと顔を合わして挨拶した方がいいでしょう?」
「いや、転移魔法を使うとしても、母さんは街に行かない方がいいよ。そのルクス教会は街の人だって来るんだろ?」
「そ、そうだけど...そんなよく分からない人と会って不安じゃないの?」
「でも、これから生活する人だろ?」
「それじゃあ、ウツギだけを飛ばすわね。」

ーーー母さんは口にする。

「「転移魔法ワープ」」
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