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3章 プロローグ・はじまりのガーデン
11話 母はどっちだ?
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一度戻って、別の細道に入ってみたがーーーここも間違いだった。
どうやら俺は方向音痴っぽいのか?本当に、彼女に再会するときは日が暮れてる可能性も出てきた。
とりあえずまたもど...戻ろうかと思ったが、細道にポツンと店が建っていた。
どこか暗い、不気味な雰囲気を漂わせる店に、俺の足はそちらへと運んでいた。
「なんだい、...あんた印持ちか。」
店に顔を出してみれば、椅子に腰かけローブを纏う女がいた。かなり歳をとっており、服から出ている足は骨と皮だけのガリで、顔もシワがよく目立つおばさんだ。この人の方が魔女っぽい。
「印持ちってなんですか?」
「印は印だよ、魔者が獲物を逃さないように施す魔法のことさ。」
「それが俺の体にあるんですか?」
「そうさ、それも見えないような魔法が施されてるが、腕にくっきりと魔法陣が見えるねぇ。」
腕にくっきり?白の長袖シャツを着てるが、袖の上はもちろん、袖をめくってみても印?そんなものはなかった。この人にしか見えないのか?
「それって誰がつけたとか、どんな効果があるとかって分かりますか?」
「そういうのが見えないような魔法も施されてるねぇ。」
なんだこの女は、なんか言いたい放題じゃないか?
「でも印があるっていうのは見えるんですね!」
「そうだよ。印は他の魔者にこれは自分の獲物だと教える牽制みたいなものだ。」
「魔者と魔女って違うんですか?」
「魔女は元人間で、人間が堕ちたことを魔女と呼ぶ。」
「でも女限定なんだろ?」
「私が知る限り、魔女に性別は関係ないねぇ。」
「は!?でも魔女は女って...」
「そうかい、ならその文献を信じたらいい。人には人の数だけ魔女の形があるからねぇ。」
そもそも、女だけが魔女になるっていうのがおかしな話なんだろう。男の魔法使いが魔に堕ちたらなんていうんだ?字に不自然さが残るものの、魔に堕ちた人間はみんな等しく魔女なんだ。
「魔者は人間じゃない、魔力が高く、魔界で生活できる種族のこと...狼の獣人、吸血鬼、悪魔、だったりを言うねぇ。そしてその印は魔者がつけるもの。」
それじゃあ、...一体だれがつけたんだ?周りと一緒にはなりたくないが、もし魔女がつけたものだとしたら、母さんがつけたんだって辻褄はあったかもしれない。
魔者かぁ、異世界ファンタジーだもんな、別種族の登場か。
「……あんた、おもしろい物をつけてるねぇ。」
「おもしろいもの?さっきの印じゃなくてか?」
おばさんは俺を指さす。正確には...俺の胸辺り?
「あ、あー、財布?のことか?」
「その財布は魔者が作り出した魔道具じゃないか?ちと見せておくれ。」
「それは...遠慮しておく。」
「そうかい。」
俺の中でなにかが導き出されそうで、咄嗟に断ってしまった。この物知りなおばさんに財布を見せてしまったら、なんだかとてもよくない気がした。
俺は話をすり替えるためにも
「魔道具は魔者が作ったものを言うんですか?」
それも知らないのか、とおばさんは無知な俺に魔道具について説明を始めた。
「魔道具といったら、基本は魔者や魔女が作った道具のことを指すねぇ。その強い魔力で作られた、魔法が込められた道具。それを手にすることで、魔力が極めて低い凡人でも魔道具によって魔法を使うことができる特別で高価な代物だよ。」
「そうはいっても、魔道具なんてどうやって手に入れるんですか?」
「裏、闇、そういった商人は独自のルートで魔女と繋がりを持つ、偽物が多いけど、たまぁにホンモノが混じってる時もあるかもねぇ。」
それじゃあこの財布も、彼女が闇ルートから手に入れたものかもしれない。
よし、聞きたいことはまぁ聞けたかな。これ以上の寄り道は本当にまずい。
「おばさん、貴重な話ありがとう。」
「いーえ、私に聞きたいことがあったら...また聞くといいよ。」
扉もない、その店の敷居を跨ぐ。
ーーーギュインッ!という不思議な感覚が体を襲い、振り返ってみれば...そこにあの店の姿がなかった。
「ウツギ!!」
俺の背中に腕を回し、体を抱きしめる母がいた。
あの細道に戻っていた、誰かの手によって。
「大丈夫?怪我はない?」
「だ、大丈夫。」
「そう...よかった。ウツギ?どうしたの?」
「え、俺ってどうやって戻ってきた?」
「なに言ってるの?自分で、歩いて戻ってきたのよ?他になにがあるって言うの?」
自分で歩いて戻ってきた?そんなわけない。じゃあ、でもどうやって?だって...さっきの感覚が本当だとしたら、俺は飛んできた?ことになる、だったら、俺が歩いてきたのを見てるわけがないんだ。
「もう、帰りましょう。」
「あ、あぁ。」
そっと、ブランと垂れていた荷物の取手を彼女は握った。一緒に持ち、2人は歩き出す。
「...あんなことがあったから、人目を避けて帰るんだよな?」
「もちろん、でもそんなこと気にする必要ない。」
歩き出すーーー一歩、二歩と、...そして、2人は白い光に包まれる。
「転移魔法」
ガンッと眉間を強く殴られたような、強い光で頭に痛みを覚える。
たった一瞬...
一瞬で2人は移動してしまった。街から離れ、森に囲まれた2人の家、ガーデンの元まで。
普通の人は使えない...転移魔法は禁忌の魔法のはず。
「中に入りましょう。」
「……。」
なにも言えないまま、彼女と一緒に門を通って家の中へと入る。
家の中には子どもがいた。小学校高学年から中学生辺りの子どもたち...みんなが彼女の登場に駆け寄ってくる。
「ママ~!!」
「ママおかえり!」
みんなの名前が分かる。俺と同じ、花の名前を持った子どもたち。
カトレア、ローズ、アゼリア、ロータス、アネモネ、クレマチス、コスモス、...
「ウツギもおかえり!」
「1ヶ月前に娘がいなくなったんです。その、本当に突然...食事をしていて、席を離れて戻ってきたらいなかったんです。離れてた時間は3分もないですよ!?本当に一瞬目を離した隙に...」
俺に声をかけてくれた子どもの名前も知ってる。チェリーだ。
「た、だいま...チェリー。」
「うん!街はどうだった?楽しかった?」
女が探してる娘、あの手の中にあった写真の娘と瓜二つの少女が目の前にいた。俺に微笑み声をかけた子ども、チェリーと写真の娘は同一人物?
俺は唾を飲み込む。
「魔者は人間じゃない、魔力が高く、魔界で生活できる種族のこと...狼の獣人、吸血鬼、悪魔、だったりを言うねぇ。そしてその印は魔者がつけるもの。」
あの財布は魔者が作ったもの...。
じゃあ...母さんは、...母さんの正体は、人間か、魔女か、魔者か。
どうやら俺は方向音痴っぽいのか?本当に、彼女に再会するときは日が暮れてる可能性も出てきた。
とりあえずまたもど...戻ろうかと思ったが、細道にポツンと店が建っていた。
どこか暗い、不気味な雰囲気を漂わせる店に、俺の足はそちらへと運んでいた。
「なんだい、...あんた印持ちか。」
店に顔を出してみれば、椅子に腰かけローブを纏う女がいた。かなり歳をとっており、服から出ている足は骨と皮だけのガリで、顔もシワがよく目立つおばさんだ。この人の方が魔女っぽい。
「印持ちってなんですか?」
「印は印だよ、魔者が獲物を逃さないように施す魔法のことさ。」
「それが俺の体にあるんですか?」
「そうさ、それも見えないような魔法が施されてるが、腕にくっきりと魔法陣が見えるねぇ。」
腕にくっきり?白の長袖シャツを着てるが、袖の上はもちろん、袖をめくってみても印?そんなものはなかった。この人にしか見えないのか?
「それって誰がつけたとか、どんな効果があるとかって分かりますか?」
「そういうのが見えないような魔法も施されてるねぇ。」
なんだこの女は、なんか言いたい放題じゃないか?
「でも印があるっていうのは見えるんですね!」
「そうだよ。印は他の魔者にこれは自分の獲物だと教える牽制みたいなものだ。」
「魔者と魔女って違うんですか?」
「魔女は元人間で、人間が堕ちたことを魔女と呼ぶ。」
「でも女限定なんだろ?」
「私が知る限り、魔女に性別は関係ないねぇ。」
「は!?でも魔女は女って...」
「そうかい、ならその文献を信じたらいい。人には人の数だけ魔女の形があるからねぇ。」
そもそも、女だけが魔女になるっていうのがおかしな話なんだろう。男の魔法使いが魔に堕ちたらなんていうんだ?字に不自然さが残るものの、魔に堕ちた人間はみんな等しく魔女なんだ。
「魔者は人間じゃない、魔力が高く、魔界で生活できる種族のこと...狼の獣人、吸血鬼、悪魔、だったりを言うねぇ。そしてその印は魔者がつけるもの。」
それじゃあ、...一体だれがつけたんだ?周りと一緒にはなりたくないが、もし魔女がつけたものだとしたら、母さんがつけたんだって辻褄はあったかもしれない。
魔者かぁ、異世界ファンタジーだもんな、別種族の登場か。
「……あんた、おもしろい物をつけてるねぇ。」
「おもしろいもの?さっきの印じゃなくてか?」
おばさんは俺を指さす。正確には...俺の胸辺り?
「あ、あー、財布?のことか?」
「その財布は魔者が作り出した魔道具じゃないか?ちと見せておくれ。」
「それは...遠慮しておく。」
「そうかい。」
俺の中でなにかが導き出されそうで、咄嗟に断ってしまった。この物知りなおばさんに財布を見せてしまったら、なんだかとてもよくない気がした。
俺は話をすり替えるためにも
「魔道具は魔者が作ったものを言うんですか?」
それも知らないのか、とおばさんは無知な俺に魔道具について説明を始めた。
「魔道具といったら、基本は魔者や魔女が作った道具のことを指すねぇ。その強い魔力で作られた、魔法が込められた道具。それを手にすることで、魔力が極めて低い凡人でも魔道具によって魔法を使うことができる特別で高価な代物だよ。」
「そうはいっても、魔道具なんてどうやって手に入れるんですか?」
「裏、闇、そういった商人は独自のルートで魔女と繋がりを持つ、偽物が多いけど、たまぁにホンモノが混じってる時もあるかもねぇ。」
それじゃあこの財布も、彼女が闇ルートから手に入れたものかもしれない。
よし、聞きたいことはまぁ聞けたかな。これ以上の寄り道は本当にまずい。
「おばさん、貴重な話ありがとう。」
「いーえ、私に聞きたいことがあったら...また聞くといいよ。」
扉もない、その店の敷居を跨ぐ。
ーーーギュインッ!という不思議な感覚が体を襲い、振り返ってみれば...そこにあの店の姿がなかった。
「ウツギ!!」
俺の背中に腕を回し、体を抱きしめる母がいた。
あの細道に戻っていた、誰かの手によって。
「大丈夫?怪我はない?」
「だ、大丈夫。」
「そう...よかった。ウツギ?どうしたの?」
「え、俺ってどうやって戻ってきた?」
「なに言ってるの?自分で、歩いて戻ってきたのよ?他になにがあるって言うの?」
自分で歩いて戻ってきた?そんなわけない。じゃあ、でもどうやって?だって...さっきの感覚が本当だとしたら、俺は飛んできた?ことになる、だったら、俺が歩いてきたのを見てるわけがないんだ。
「もう、帰りましょう。」
「あ、あぁ。」
そっと、ブランと垂れていた荷物の取手を彼女は握った。一緒に持ち、2人は歩き出す。
「...あんなことがあったから、人目を避けて帰るんだよな?」
「もちろん、でもそんなこと気にする必要ない。」
歩き出すーーー一歩、二歩と、...そして、2人は白い光に包まれる。
「転移魔法」
ガンッと眉間を強く殴られたような、強い光で頭に痛みを覚える。
たった一瞬...
一瞬で2人は移動してしまった。街から離れ、森に囲まれた2人の家、ガーデンの元まで。
普通の人は使えない...転移魔法は禁忌の魔法のはず。
「中に入りましょう。」
「……。」
なにも言えないまま、彼女と一緒に門を通って家の中へと入る。
家の中には子どもがいた。小学校高学年から中学生辺りの子どもたち...みんなが彼女の登場に駆け寄ってくる。
「ママ~!!」
「ママおかえり!」
みんなの名前が分かる。俺と同じ、花の名前を持った子どもたち。
カトレア、ローズ、アゼリア、ロータス、アネモネ、クレマチス、コスモス、...
「ウツギもおかえり!」
「1ヶ月前に娘がいなくなったんです。その、本当に突然...食事をしていて、席を離れて戻ってきたらいなかったんです。離れてた時間は3分もないですよ!?本当に一瞬目を離した隙に...」
俺に声をかけてくれた子どもの名前も知ってる。チェリーだ。
「た、だいま...チェリー。」
「うん!街はどうだった?楽しかった?」
女が探してる娘、あの手の中にあった写真の娘と瓜二つの少女が目の前にいた。俺に微笑み声をかけた子ども、チェリーと写真の娘は同一人物?
俺は唾を飲み込む。
「魔者は人間じゃない、魔力が高く、魔界で生活できる種族のこと...狼の獣人、吸血鬼、悪魔、だったりを言うねぇ。そしてその印は魔者がつけるもの。」
あの財布は魔者が作ったもの...。
じゃあ...母さんは、...母さんの正体は、人間か、魔女か、魔者か。
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