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1章 ゲームから出られないバグは労災だよ!
1話 バグで処女喪失の危機!?
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「好きに生きてほしい、私はウツギが幸せならどう生きても嬉しいの、ただ側にいられないだけが心残り...ウツギ、愛してるわ。」
黒髪にキラキラと輝く金の髪が混ざる不思議な髪色をしており、瞳は赤だった。
広場に彼女のための特等席が建てられた。木の十字架、彼女は磔にされ、彼女を囲む群衆は野次を飛ばした。
俺は鎖で拘束され、処刑される彼女を見てることしかできなかった。
ーーー灰が降る。
「ーーー...リア!!」
パチリと目が開く。目が開くのと同時に数粒の涙が流れる。あくび...いや、あれは夢で、俺は悲しんでたのか?
胸がキュウッと締めつけられるような夢を見ていた気がする...が、なにも覚えてない。
「フィリア!いつまで寝てるの?」
「えっと、サーシャ?」
「まだ夢の中にいるのかしら?早く支度を済ませないと、ほんっとうに大変なことになるわよ!」
「いっ、今起きます!」
そうだ、今日は騎士王ハイドの帰還日で、城ではその祝いのパーティーが開かれる。
サーシャはお化粧道具が並べられた鏡台の前に座っており、既にお化粧は済んでおり、仕上げとして髪を整えていた。
俺はサーシャの目線に気をつけながら、まるで雑巾のような服からスベスベ肌触りのキトンに着替える。
「今夜は特別なパーティー!フィリアは誰かお相手候補はいるのかしら?」
「いないです...その、お役目もほとんどこなせてないですし。」
「たしかに、でもフィリアのその美貌があればみんなから声をかけられるわよ!」
「それなら良かっです。」
「えっと、サーシャは誰かいるんですか?」
サーシャは強い巻き髪にクシを通す。こちらにサーシャは背を向けているものの、鏡に映るサーシャは乙女の顔をしていた。
「あったりまえよ!今夜は特別!それならやっぱりハイド様と夜を過ごしたいわぁ!」
「えっ、いくら特別でもそれは無理なんじゃ...」
「挑戦してみないと分からないわ!ふふっ、フィリアも張り切りなさい!」
女の身支度が分からない俺は、とりあえず鏡台に置いてあるクシを手に取って、見様見真似で通してみる。
「フィリア...」
「え?」
「流石に顔くらい洗いなさいよ。いくら美人でも、顔は洗いましょう。」
「あ、うん。」
ーーー俺...というか、フィリアとサーシャはお城で住み込みの仕事をしている。
ただ同室というだけで、別室にも同業者はいる。仕事は夜のため、昼夜逆転の生活を送っている。
「さっ、早く私たちも行きましょ!」
ペタペタと裸足で2人は部屋を後にする。仕事の関係上、俺たちは裸足で、服も露出が高いものになっている。
王族、貴族、華やかな紳士淑女が集うパーティーで、なんて不釣り合いな格好をしている俺たち。
でもーーー
「なんて素敵な女たちなんだ。」
俺とサーシャの姿を見て、会場内の男たちは息を呑んだ。
会場内にチラチラと、俺たちと同じキトンを着た女性の姿が見える。どの女性たちも、俺の隣に立っているサーシャも、それぞれの美を持ち、顔が整った女性たちであった。
「フィリアは誰か会いたい人はいるの?」
「いない、かな。」
「私行っちゃうけどいい?」
「ハイド様はいいの?」
「ふふっ、無理に決まってるわ。だからとりあえず良い男に声をかけてくるわ。」
「分かった。」
「フィリアも、素敵な人を見かけたら声をかけるのよ。」
「もちろん。」
だって、俺たちは天使だから。
この服、キトンを着た女性は夜を売っており、毎晩、毎晩、このお城に出入りする者なら誰でも、騎士や王族、給仕の男たちと夜を共にする。女性たちに休みなどなく、拒否権もない。
それでも、今夜だけは自由。好きな男と共に過ごせる特別な日。とはいえ、その好きな男はお城に出入りする者限定になる。そのためサーシャや他の女性たちは、今まで過ごしてきたことのある人たちの中から誰かを選び、パーティーを楽しく過ごし、夜を迎え
る。
「君、見ない顔だね。今夜の相手はもう決まってるのかな?」
この服を着ている俺も例外なく、側から見ればヤれる女であることには変わりない。俺は俺ができる最高の微笑みを相手に向け、その場から離れた。
ただ、俺は誰かと夜を過ごしたことがない。……最初に失敗をして、それ以来はこの服を着ていながらも、男の肌を知らない。
「今夜は、……」
今夜は特別な日。普段なら拒否権がなく、有無を言わさずに応じなければいけないのだけど、今夜だけは無礼講。拒否することができる。何度誘われても応じず、……あいつの登場までの時間を稼いだ。
ずっと、こちらを見下ろすような大階段の先、その玉座に座っていた男ーーーレグルス国王が立ち上がり
「皆、騎士王に拍手を。」
その男の声ひとつで、この場の空気が硬直し、賑やかだった音も静かになる。
静かになったのも束の間、国王の言葉通り...シャンパングラスを片手に持ちながら拍手を送る誰かの姿、パチパチと両手で拍手をしたり、扇で顔を仰ぎながら...と、それぞれがそれぞれの態度で騎士王を出迎える。
ピコン
無機質な電子音が頭に響く、それは俺にしか聞こえない通知音。
【チャプター1(騎士王)】
王宮編、攻略キャラの1人である騎士王が中心となるチャプターが始まった。
うん、ここまでで大きなバグもないし、一度戻ってスキップを、……俺は右の耳たぶに触れる。触れた瞬間リザルト画面が映し出され、目線で「ゲーム終了」のボタンを押す。
プロローグをスキップしたから、あっという間……ん?
【こちらの項目は追加されておりません。】
はっ?……ポチポチと何度も押すが、押すたびにピコン、ピコン、と同じ文が表示された。上に上にと文が重なる。な、にが、起こってるんだ?こんなの、...出られーーーいやっ、おかしいだろ。なんで出られない!?
フルダイブゲームにおいてこの項目は最重要で、二重三重とチェックされるはずだ。……企業倒産レベルのバグじゃないか!?...バグや故障なんて扱いじゃない!労災じゃねぇか!
……だけど、俺は会社にある機体で入ってるから、時間はかかるだろうが、外から出してくれるはず。
「騎士王ハイド、今宵の報酬は何とする?」
まずいっー!!
リザルト画面が映し出されたままの視界で、俺は騎士王ハイドを視界に映した。彼の黒...明るい場所では青に見える、深い海の青の瞳が国王から、俺へと向けられた。周囲にいっぱい人が立っているのに、はっきりと、俺と騎士王ハイドの目線が重なっているのが分かる。
レグルス国王は、今回のパーティーの主役である騎士王ハイドに報酬を尋ねーーー
「あの者を私に。」
ーーー騎士王ハイドはフィリアの夜を選ぶ。
おいっー!!今すぐ出してくれっ!!!このままじゃ、マジで俺の処女が危ないっ!!
黒髪にキラキラと輝く金の髪が混ざる不思議な髪色をしており、瞳は赤だった。
広場に彼女のための特等席が建てられた。木の十字架、彼女は磔にされ、彼女を囲む群衆は野次を飛ばした。
俺は鎖で拘束され、処刑される彼女を見てることしかできなかった。
ーーー灰が降る。
「ーーー...リア!!」
パチリと目が開く。目が開くのと同時に数粒の涙が流れる。あくび...いや、あれは夢で、俺は悲しんでたのか?
胸がキュウッと締めつけられるような夢を見ていた気がする...が、なにも覚えてない。
「フィリア!いつまで寝てるの?」
「えっと、サーシャ?」
「まだ夢の中にいるのかしら?早く支度を済ませないと、ほんっとうに大変なことになるわよ!」
「いっ、今起きます!」
そうだ、今日は騎士王ハイドの帰還日で、城ではその祝いのパーティーが開かれる。
サーシャはお化粧道具が並べられた鏡台の前に座っており、既にお化粧は済んでおり、仕上げとして髪を整えていた。
俺はサーシャの目線に気をつけながら、まるで雑巾のような服からスベスベ肌触りのキトンに着替える。
「今夜は特別なパーティー!フィリアは誰かお相手候補はいるのかしら?」
「いないです...その、お役目もほとんどこなせてないですし。」
「たしかに、でもフィリアのその美貌があればみんなから声をかけられるわよ!」
「それなら良かっです。」
「えっと、サーシャは誰かいるんですか?」
サーシャは強い巻き髪にクシを通す。こちらにサーシャは背を向けているものの、鏡に映るサーシャは乙女の顔をしていた。
「あったりまえよ!今夜は特別!それならやっぱりハイド様と夜を過ごしたいわぁ!」
「えっ、いくら特別でもそれは無理なんじゃ...」
「挑戦してみないと分からないわ!ふふっ、フィリアも張り切りなさい!」
女の身支度が分からない俺は、とりあえず鏡台に置いてあるクシを手に取って、見様見真似で通してみる。
「フィリア...」
「え?」
「流石に顔くらい洗いなさいよ。いくら美人でも、顔は洗いましょう。」
「あ、うん。」
ーーー俺...というか、フィリアとサーシャはお城で住み込みの仕事をしている。
ただ同室というだけで、別室にも同業者はいる。仕事は夜のため、昼夜逆転の生活を送っている。
「さっ、早く私たちも行きましょ!」
ペタペタと裸足で2人は部屋を後にする。仕事の関係上、俺たちは裸足で、服も露出が高いものになっている。
王族、貴族、華やかな紳士淑女が集うパーティーで、なんて不釣り合いな格好をしている俺たち。
でもーーー
「なんて素敵な女たちなんだ。」
俺とサーシャの姿を見て、会場内の男たちは息を呑んだ。
会場内にチラチラと、俺たちと同じキトンを着た女性の姿が見える。どの女性たちも、俺の隣に立っているサーシャも、それぞれの美を持ち、顔が整った女性たちであった。
「フィリアは誰か会いたい人はいるの?」
「いない、かな。」
「私行っちゃうけどいい?」
「ハイド様はいいの?」
「ふふっ、無理に決まってるわ。だからとりあえず良い男に声をかけてくるわ。」
「分かった。」
「フィリアも、素敵な人を見かけたら声をかけるのよ。」
「もちろん。」
だって、俺たちは天使だから。
この服、キトンを着た女性は夜を売っており、毎晩、毎晩、このお城に出入りする者なら誰でも、騎士や王族、給仕の男たちと夜を共にする。女性たちに休みなどなく、拒否権もない。
それでも、今夜だけは自由。好きな男と共に過ごせる特別な日。とはいえ、その好きな男はお城に出入りする者限定になる。そのためサーシャや他の女性たちは、今まで過ごしてきたことのある人たちの中から誰かを選び、パーティーを楽しく過ごし、夜を迎え
る。
「君、見ない顔だね。今夜の相手はもう決まってるのかな?」
この服を着ている俺も例外なく、側から見ればヤれる女であることには変わりない。俺は俺ができる最高の微笑みを相手に向け、その場から離れた。
ただ、俺は誰かと夜を過ごしたことがない。……最初に失敗をして、それ以来はこの服を着ていながらも、男の肌を知らない。
「今夜は、……」
今夜は特別な日。普段なら拒否権がなく、有無を言わさずに応じなければいけないのだけど、今夜だけは無礼講。拒否することができる。何度誘われても応じず、……あいつの登場までの時間を稼いだ。
ずっと、こちらを見下ろすような大階段の先、その玉座に座っていた男ーーーレグルス国王が立ち上がり
「皆、騎士王に拍手を。」
その男の声ひとつで、この場の空気が硬直し、賑やかだった音も静かになる。
静かになったのも束の間、国王の言葉通り...シャンパングラスを片手に持ちながら拍手を送る誰かの姿、パチパチと両手で拍手をしたり、扇で顔を仰ぎながら...と、それぞれがそれぞれの態度で騎士王を出迎える。
ピコン
無機質な電子音が頭に響く、それは俺にしか聞こえない通知音。
【チャプター1(騎士王)】
王宮編、攻略キャラの1人である騎士王が中心となるチャプターが始まった。
うん、ここまでで大きなバグもないし、一度戻ってスキップを、……俺は右の耳たぶに触れる。触れた瞬間リザルト画面が映し出され、目線で「ゲーム終了」のボタンを押す。
プロローグをスキップしたから、あっという間……ん?
【こちらの項目は追加されておりません。】
はっ?……ポチポチと何度も押すが、押すたびにピコン、ピコン、と同じ文が表示された。上に上にと文が重なる。な、にが、起こってるんだ?こんなの、...出られーーーいやっ、おかしいだろ。なんで出られない!?
フルダイブゲームにおいてこの項目は最重要で、二重三重とチェックされるはずだ。……企業倒産レベルのバグじゃないか!?...バグや故障なんて扱いじゃない!労災じゃねぇか!
……だけど、俺は会社にある機体で入ってるから、時間はかかるだろうが、外から出してくれるはず。
「騎士王ハイド、今宵の報酬は何とする?」
まずいっー!!
リザルト画面が映し出されたままの視界で、俺は騎士王ハイドを視界に映した。彼の黒...明るい場所では青に見える、深い海の青の瞳が国王から、俺へと向けられた。周囲にいっぱい人が立っているのに、はっきりと、俺と騎士王ハイドの目線が重なっているのが分かる。
レグルス国王は、今回のパーティーの主役である騎士王ハイドに報酬を尋ねーーー
「あの者を私に。」
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