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第二章 異星人といっしょ……?
4.にぎやかな食卓
しおりを挟む宇都宮の実家を出る時、お母さんに大量の冷凍餃子を持たされた。
食べ切れるか不安だったけれど、それが早速役に立つなんて思わなかった。
お母さんに教わったやり方を思い出しながら、わたしは餃子を五十個焼いた。
その間に、坂田さんがインスタントの味噌汁を人数分買ってきてくれた。
買ったばかりの炊飯器を使って、ご飯も炊いた。
ほかほかご飯に味噌汁。
そして、焼きたての餃子。
狭いテーブルの上になんとか配膳して、異星人たちにフォークを渡しながら「めしあがれ」と促した。
すると、ハミルクとキズミちゃんは餃子をまじまじと見つめ、示し合わせたようにレイハルトさんに視線を送った。
初めて目にする餃子がどんな味なのか、まずはレイハルトさんに毒味してほしいようだ。
レイハルトさんは覚悟を決めたようにフォークで餃子を刺し、醤油だれに浸してから……パクン、と口に入れた。
狼のような口がもぐもぐと動く。
「本当に着ぐるみじゃないんだ……」とあらためて思いながら、その様を見つめていると、
「……うまい」
レイハルトさんが、低い声で呟いた。
それを聞いた途端、ハミルクとキズミちゃんもものすごい勢いで食べ始めた。
どうやら、かなりお腹が空いていたらしい。
五十個の餃子はあっという間になくなり、すぐに追加で二十個焼くことになった。
パリパリな羽根の部分に夢中なハミルクに、ラー油を恐る恐る垂らすキズミちゃん。そして、ただ黙々と食べ続けるレイハルトさん。
そんな三人を眺めながら、隣に座る坂田さんがくすりと笑い、
「異星人さんと一緒に餃子を食べるだなんて……なんとも不思議な体験ですね」
そう、楽しそうに言った。
たしかに、アニメやゲームの世界みたいに、不思議で愉快な状況だ。
この特別な体験を、もっと楽しむべきなのかもしれない。
けれど、わたしの頭の中は心配事でいっぱいだった。
まず、キズミちゃんがレーザー銃を撃ちまくったあのスタジオは大丈夫だっただろうか?
光線が当たって、機材などを壊していないといいけれど……
それから、集まってきた野次馬にバトルの様子を撮影されたことも心配だ。
「凶悪な宇宙人現る!」なんて触れ込みでSNSに拡散されていたらどうしよう。
なにより、明日この異星人たちを無事に宇宙へ帰せるか不安だった。
あの『赤い扉』が宇宙へのゲートになっているようだけれど、放送局に入るには受付の人の許可がいる。
こんな見た目の彼らについて、どう説明して受付を通してもらえばいいのか、考えるだけでお腹が痛くなりそうだ。
だからわたしは、坂田さんに小さく笑い返して、「そうですね」とだけ答えた。
そんなわたしの不安を読み取ったのか、坂田さんが柔らかに目を細め、
「大丈夫ですよ。彼らのことは私がうまくやりますから。紗音さんは安心して、番組の準備に専念してください」
そう言ってくれた。
わたしは、申し訳なく思う一方で、坂田さんの言葉に強い安心感を覚えていた。
元はと言えば、わたしが勝手にスタジオへ立ち入ったことが原因なのに……坂田さんは嫌な顔をするどころか、こうして励ましてくれる。
坂田さんがマネージャーさんで、本当によかった。
迷惑をかけた分、わたしは、わたしにできることを精一杯やらなきゃ。
そう自分に言い聞かせ、わたしはしっかり頷くと、
「はい……ありがとうございます。明日からまた頑張ります」
感謝を込めて、笑顔を返した。
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