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第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編
災害幼女のコンプレックス?
しおりを挟む「――――パンプ〇・ピン〇ル・ト〇ポップンッに、ペ〇ッコ・ラブ〇ン・クル〇ル・〇ンクルッ! おとなにな~れっ!!」
どこかで耳にしたような謎の詠唱を終え、眩い光の中から現れたのは、大人になったフーナ、もとい――――
「この世全ての幼女は私のものっ! いじめる子は折檻しちゃうぞーっ!」
特殊な趣味を恥ずかしげもなく前面に出した、ただの変態だった。
「………………はぁ」
しかも決めポーズなのか、持っていた杖をライフルに見立てて『ドヒューンッ! これであなたもロックオーンッ!』とかノリノリで言ってるし。
なんかひと昔前のアニメの登場台詞みたいだ。
「さぁ、私が本来の姿になったからには―― ぶぎゃっ!」
まだ続く前口上を聞く必要もないので、背後に回り込み思いっきり蹴り飛ばす。
そんなフーナは水面と平行に数十メートル飛ばされる。
「痛たた~、ちょっとまだ私のセリフの途中なのにって、消えたっ!?」
体勢を難なく立て直し、今度は私の姿が見えない事に驚いている。
「こっちだよ」
ドガッ!
「え? ぼぎゃっ!」
キョロキョロしているフーナのお腹に、更に追撃として回し蹴りを打ち込む。
それでもダメージはないようで、数十メートル飛ばされたところで宙に留まり、険しい表情でキッと睨みつけてくる。
「もうっ! さっきから卑怯だよっ! 背中蹴ったり消えたりして攻撃してくるなんて、悪者にやることだよっ!」
プンプンと擬音が似合いそうなほど、両手を挙げて激おこのご様子。
「なんの魔法か知らないけど、体は大きくなっても中身は変わらないんだね?」
手足がスラリと伸び、顔つきも凛々しくなったフーナを見下ろす。
そんなフーナはダボダボだったローブをキチンと着こなす程に成長していた。
プランプランとしていた袖も、引きずっていた裾もジャストフィットしていた。
『もしかしてこれが本来の姿? 魔法で制限解除したって事?』
ちんまい幼女からスレンダーな高身長美少女に変貌したフーナ。
ただおつむが残念なのは変わっていないようだった。
「ねぇ、その姿って元々のなの?」
マヤメの説明によると、フーナは20年以上前から冒険者を続けている。
なら今の姿が本来の姿なのかと尋ねてみる。
「うん、そうだよ。なんで?」
「いや、随分と大人な姿になったなって感心しちゃってさ。しかも美人だし」
「そ、そうかな? でも蝶のお姉さんも素敵だよ? ロリカッコ可愛いし…… ポッ」
褒められたのが嬉しいのか、クネクネとしながら上目遣いで答える。
そして社交辞令なのか、私の事もお返しとばかりに褒めてくれる。
『何なの? ロリカッコ可愛いって、色々盛りすぎな気もするけど。それにしても……』
その涎と潤んだ瞳はなんなの?
まるで大好きなお肉を前に手を合わせるユーアみたいなんだけど。
「でも大人になり切れてない部分もあるね? 特にその平原はそのままなんだ」
身長が伸びたことにより、更に強調された平らな胸部装甲。
体型と同じでスラリとしている。
「う、うるさいなっ! ここは気に入ってるからいいんだもんっ! ひんぬーは至高で、ちっぱいは最高なんだからっ! 私の自慢なんだから~っ! むんっ!」
何故か自信ありげに胸を逸らし、その平坦な胸を強調する。
「はぁ~?」
いやいや、それは自慢するところでもないだろう。
胸を張る意味も良くわからないし。
「あ、それともう一つ気付いたことあるんだけど」
「え? こ、今度はなにっ!」
体を両腕でさっと隠し、怯えたような目でこっちを見てくる。
なんだかんだで気になってるじゃん。
「フーナってさ、自分の身長にコンプレックスあるでしょう?」
「………………えっ!?」
「だから小さい子に憧れるんでしょう? 変身前の姿も小さかったし、連れているメドって子も小さいし。幼女がどうとか言ってるのもそのせいだよね?」
「うえっ!?」
本来の姿? になったらしいフーナは元の世界の私よりも高身長だ。
ロンドウィッチーズのリーダのリブも背が高かったがそれ以上だ。
アバター前の元の私が160センチ後半。
リブは恐らく170を超えていた。
「え? べ、別に、コンプレックスなんかないよ?」
そしてそんなフーナは更に大きく『180センチ』を超えていた。
「そう? 私も小さいから大きいのに憧れるんだよね」
どこが? とかは敢えて言わない。
今の私はあれだけど、元の私は憧れの対象だったし。富士の山だったし。
「う、ううう~、そ、そうだよっ! 私は女性くせに背が大きくって、子供のころから馬鹿にされてたんだよっ! 電柱女とか女性版ガリバーとか関東平野とかっ!」
ブンブンと腕を振りながら、その悲惨な過去を涙目で絶叫する。
「そ、そう。それは可哀そうだったね?」
そこまで聞きたい訳じゃなかったけど、一応慰めを入れる。
でも電柱とかガリバーはわかるけど、最後のは身長に関係ないよね?
それと気になる単語も出てきたし。
『まぁ、そっちは大方予想してたけど、今の状況じゃ聞く耳持たないよね? 散々煽っておいていうのもあれなんだけど』
今のフーナは自分がどこにいるのかさえも、把握できないほど取り乱している。
そもそも敵だと認識して襲ってきたのだから、今の時点で話し合いは難しいだろう。
「そ、そうなんだよぉ…… 背が他の人より高いってだけで、女性に見られなかったりからかわれたりしたんだよ。だから小さい子に憧れて、それで魔法少女に興味を―――― はっ!? って、いまはそんな話している場合じゃなかったっ!」
同情した事により、ツラツラと黒歴史を語り始めたが、ふと慌てて我に返るフーナ。
「そうだね。確かにそんな話をしている場合じゃなかったね。でもそのおかげで場所も変えられたし、向こうの様子も把握できたから、こっちとしては大成功だよ」
「え? 場所って…… ああっ! いつの間にか水がないっ!?」
湿原より離れた、草原の上にいることに驚く。
「ああ、変身した直後から隙だらけだったから、こっちに誘導しながら攻撃してたからね。さすがにみんなが逃げたとはいっても、あなたの魔法は脅威だからね」
災害の異名を持つフーナの魔法は、その名の通りに痛烈無比な威力だ。
透明壁スキルで防げるといっても、範囲を超えたら保護できない。
「そ、そうなんだっ! まぁ、私もワザと誘導されてあげたんだけどね~っ! あの湿原を蒸発させちゃったらさすがに大目玉だしね~っ! あはは~っ!」
チラりとシクロ湿原を見やり、引き攣った笑いで答える。
誰が見てもその笑顔の方がワザとに見えるけど。
「まぁ、どっちでもいいけど、その隙だらけのせいで助かった事もあるから、こっちとしてはありがたいよ。あなたの不注意が功を奏したって感じでね。だからありがとう」
視界の遥か先に、薄っすらと確認できる影を見て頭を下げる。
「ありがとうって言っても、それって褒めてないよねっ!」
「うん? よくわかったね。姿と一緒で少し大人になった?」
「むっき~っ! 元々大人だもんっ! もう本当に頭にきたっ! ここからはさっきのようにいかないかんねっ! 魔法少女フーナちゃんが成敗しちゃうからねっ! あなたの魔法だってもうわかったしっ!」
私の軽口に分かり易い反応で答える大人版フーナ。
やっぱり何もわかってないじゃん。
ここまでに仕掛けた幾つもの罠(トラップ)に嵌まっていることも。
分身体の私といつの間にか入れ替わってたことも。
そして、ここを離れて何処かに行っていたことにも。
『こっちは何とかするから、そっちも頑張りなよ。その覚悟は私にじゃなくて、大切な人の為にとっておくものだからね』
ここから離れている、マヤメたちがいる方向を見て一人呟いた。
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