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第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編
更に激怒する災害幼女
しおりを挟む「あ、あのね、あのね、蝶のお姉さんって、可愛い子たちを、か、囲ってるんだよね? 孤児院ってとこに」
フーナの提案はそんな質問から始まった。
小声で、妙にそわそわしている理由はわからないけど。
「? 可愛い子たちを……」
囲ってる?
ああ、確かに柵の中に囲っているね。
孤児院に20匹ほど飼っているよ。
ナジメが敷地内に大きな池を作ってくれて、その中に可愛い子たちがいるね。
「うん、孤児院で飼っているよ。20匹」
スイスイと池で泳いでいる、可愛いキューちゃんたちを思い浮かべて答える。
「飼っているっ!? しかも匹ってっ! 何人じゃなくてっ!?」
「うん、この前、ウトヤの森から連れてきたんだ。1匹はここに連れてきたから孤児院にいるのは19匹だけどね」
「も、森から連れて来たって、それって誘拐じゃ…… しかもここに連れて来たのは、あのメドに似た美少女だよね……」
マヤメたちのいるだろう方向を見て呟いたが、最後が小声で聞き取り辛い。
でも冒頭の話で勘違いしているのは確かだ。誘拐って言ってるし。
「ううん、違うよ。ちゃんと然るところで許可取ったから。でも食べるのはさすがに可哀そうに思う時もあるよ」
なので訂正と同時に、一応本音も伝えてみる。
「た、食べるっ!? やっぱりあの美少女も食べちゃったんだ…… ゴクリ」
「そりゃ食べるよ。せっかくのご馳走なんだから。昨日も食べたし」
あしばり帰る亭で食べたフルコースを思い浮かべる。
「や、やっぱりあの宿で、二人が一つに…… ジュル」
「まぁ、いくら愛玩動物でも、食用なんだから割り切るしかないよ」
そうじゃないと、情を持った生物なんて食べれないし。
そもそも生物自体は、何かを捕食して生きているんだし。
「えええっ!? みんなを動物扱いっ! しかも食用ってっ!?」
意味の不明なところで仰天するフーナ。
心なしか肩がフルフルと震えているように見える。
「だって仕方ないでしょ? 本人たちにそのつもりがなくても、実際は飼われて(湿原で)食用として生まれてきたんだから」
ここから離れた、一部の養殖地を眺めてハッキリと告げる。
フーナの気持ちもわかるけど、産業として既に成り立っている訳だし。
なんて、間違ったことは言ってないはずだけど……
「や、やっぱり、さっきの話は無しにするよっ! 可愛い子たちを誘拐してきたり、食用だなんて食い物にする奴は絶対に許さないもんっ! みんなが可哀そうだよっ!」
突然両手を挙げて、唐突に怒り狂うピンクの幼女。
目も血走り、歯を剥き出し激昂する。
なんだけど、
「いや、いや、あんただって遊び半分でみんなを狩ってたでしょっ!」
矛盾した答えに、すぐさま突っ込む。
私がここに来た理由がそもそもそれだ。
狩り禁止の区域で、ゲーム感覚でキューちゃんたちを狩っていた。
「はぁっ!? わたしは飼ってないもんっ! どっちかって言うと飼われてるもんっ! ずっとお小遣い制だし、お風呂だって別々だもんっ!」
「いや、余計なに言ってるか分からないからっ! 実際に狩ってるの見てるしっ! そもそも狩われてるってなんなの? お小遣いも意味不明だからっ!」
支離滅裂な内容に、フーナに釣られて大声で捲し立ててしまう。
「うるさ―――――いっ!! もう本当に頭きたからねっ! これからは本気で行くからねっ! パンプ〇・ピン〇ル・ト〇ポップンッ!――――」
「え? もしかして魔法の詠唱なの?」
ここにきて、魔法を唱え始めたフーナの行動に戸惑う。
今までは詠唱など無しで、大規模な魔法を放っていたのに何故と。
『どうするこの隙に仕掛ける? でも迂闊に手を出しにくいのも事実。この状況で時間のかかる魔法を使うってことは、何に影響が出るかわからないし』
フーナって子を例えるならば、びっくり箱みたいなもの。
行動も言動も魔法も、予測不能で何が出るかわからない。
それとサイズの合わないダボダボなローブと身長の2倍以上ある杖。
これも何の意味があって装備しているのかもわからない。
さっきの提案も、結局その意図はわからずじまいだった。
だから用心するに越したことはない。
不思議を通り越して、もはや得体の知れない存在だからだ。
そもそも私の戦い方が、相手を分析し、予測を立てて、後の先を取る戦い方。
敵の能力や癖を解析し、そこに活路を見出す戦略が主だ。
だからここで手を出すのは得策ではないと判断した。
『なんてのは建前で、フーナの本気が見たいってのが本音だよね。今まででも充分、驚異的な実力だったけど、更に上があるなら見たいのは、ゲーマーとしての性だよね』
詠唱とともに、キラキラした、何かに包まれ始めたフーナ。
自身の頭上に現れた魔法陣から降り注ぐ、淡い光を浴びている。
「さぁ、何が出る? ただの攻撃魔法なら透明壁スキルで相殺するんだけど…… でも違うっぽいね。自分に魔法をかけてるってことは、ステータス上昇系かな?」
鬼が出るか蛇が出るか。
胸躍る期待感と、相反する危機感が脳内を占める。
「――――ペ〇ッコ・ラブ〇ン・クル〇ル・〇ンクルッ! 〇〇になあれっ!」
そして、詠唱が終わると同時に、眩い光が弾け飛び、姿を現したのは――――
「ジャジャジャジャーンっ! この世全ての幼女は私の嫁っ! その嫁たちをいじめる奴らは許さないっ! 魔法少女フーナちゃん参上っ!」
それは、ダボダボだったローブを着こなしたフーナだった。
変身する前に比べて手足が伸び、見た目は10年ぐらい成長した姿だった。
「あ~」
ただし、胸だけは大人にならなかったようで、しぼんだままだったけど。
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