剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
上 下
470 / 586
第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編

更に激怒する災害幼女

しおりを挟む



「あ、あのね、あのね、蝶のお姉さんって、可愛い子たちを、か、囲ってるんだよね? 孤児院ってとこに」

 フーナの提案はそんな質問から始まった。
 小声で、妙にそわそわしている理由はわからないけど。

「? 可愛い子たちを……」

 囲ってる?
 ああ、確かに柵の中に囲っているね。
 
 孤児院に20匹ほど飼っているよ。
 ナジメが敷地内に大きな池を作ってくれて、その中に可愛い子たちがいるね。


「うん、孤児院で飼っているよ。20匹」

 スイスイと池で泳いでいる、可愛いキューちゃんたちを思い浮かべて答える。

「飼っているっ!? しかも匹ってっ! 何人じゃなくてっ!?」

「うん、この前、ウトヤの森から連れてきたんだ。1匹はここに連れてきたから孤児院にいるのは19匹だけどね」

「も、森から連れて来たって、それって誘拐じゃ…… しかもここに連れて来たのは、あのメドに似た美少女だよね……」

 マヤメたちのいるだろう方向を見て呟いたが、最後が小声で聞き取り辛い。
 でも冒頭の話で勘違いしているのは確かだ。誘拐って言ってるし。


「ううん、違うよ。ちゃんと然るところで許可取ったから。でも食べるのはさすがに可哀そうに思う時もあるよ」

 なので訂正と同時に、一応本音も伝えてみる。

「た、食べるっ!? やっぱりあの美少女も食べちゃったんだ…… ゴクリ」

「そりゃ食べるよ。せっかくのご馳走なんだから。昨日も食べたし」

 あしばり帰る亭で食べたフルコースを思い浮かべる。

「や、やっぱりあの宿で、二人が一つに…… ジュル」

「まぁ、いくら愛玩動物でも、食用なんだから割り切るしかないよ」

 そうじゃないと、情を持った生物なんて食べれないし。
 そもそも生物自体は、何かを捕食して生きているんだし。


「えええっ!? みんなを動物扱いっ! しかも食用ってっ!?」

 意味の不明なところで仰天するフーナ。
 心なしか肩がフルフルと震えているように見える。


「だって仕方ないでしょ? 本人たちにそのつもりがなくても、実際は飼われて(湿原で)食用として生まれてきたんだから」

 ここから離れた、一部の養殖地を眺めてハッキリと告げる。
 フーナの気持ちもわかるけど、産業として既に成り立っている訳だし。
 
 なんて、間違ったことは言ってないはずだけど……

 
「や、やっぱり、さっきの話は無しにするよっ! 可愛い子たちを誘拐してきたり、食用だなんて食い物にする奴は絶対に許さないもんっ! みんなが可哀そうだよっ!」

 突然両手を挙げて、唐突に怒り狂うピンクの幼女。
 目も血走り、歯を剥き出し激昂する。

 なんだけど、

「いや、いや、あんただって遊び半分でみんなを狩ってたでしょっ!」

 矛盾した答えに、すぐさま突っ込む。

 私がここに来た理由がそもそもそれだ。
 狩り禁止の区域で、ゲーム感覚でキューちゃんたちを狩っていた。


「はぁっ!? わたしは飼ってないもんっ! どっちかって言うと飼われてるもんっ! ずっとお小遣い制だし、お風呂だって別々だもんっ!」

「いや、余計なに言ってるか分からないからっ! 実際に狩ってるの見てるしっ! そもそも狩われてるってなんなの? お小遣いも意味不明だからっ!」

 支離滅裂な内容に、フーナに釣られて大声で捲し立ててしまう。

 
「うるさ―――――いっ!! もう本当に頭きたからねっ! これからは本気で行くからねっ! パンプ〇・ピン〇ル・ト〇ポップンッ!――――」

「え? もしかして魔法の詠唱なの?」 

 ここにきて、魔法を唱え始めたフーナの行動に戸惑う。
 今までは詠唱など無しで、大規模な魔法を放っていたのに何故と。


『どうするこの隙に仕掛ける? でも迂闊に手を出しにくいのも事実。この状況で時間のかかる魔法を使うってことは、何に影響が出るかわからないし』

 フーナって子を例えるならば、びっくり箱みたいなもの。
 行動も言動も魔法も、予測不能で何が出るかわからない。

 それとサイズの合わないダボダボなローブと身長の2倍以上ある杖。
 これも何の意味があって装備しているのかもわからない。
 さっきの提案も、結局その意図はわからずじまいだった。

 だから用心するに越したことはない。
 不思議を通り越して、もはや得体の知れない存在だからだ。

 そもそも私の戦い方が、相手を分析し、予測を立てて、後の先を取る戦い方。
 敵の能力や癖を解析し、そこに活路を見出す戦略が主だ。

 だからここで手を出すのは得策ではないと判断した。

『なんてのは建前で、フーナの本気が見たいってのが本音だよね。今まででも充分、驚異的な実力だったけど、更に上があるなら見たいのは、ゲーマーとしてのサガだよね』

 詠唱とともに、キラキラした、何かに包まれ始めたフーナ。
 自身の頭上に現れた魔法陣から降り注ぐ、淡い光を浴びている。 


「さぁ、何が出る? ただの攻撃魔法なら透明壁スキルで相殺するんだけど…… でも違うっぽいね。自分に魔法をかけてるってことは、ステータス上昇系かな?」

 鬼が出るか蛇が出るか。
 胸躍る期待感と、相反する危機感が脳内を占める。

「――――ペ〇ッコ・ラブ〇ン・クル〇ル・〇ンクルッ! 〇〇になあれっ!」

 そして、詠唱が終わると同時に、眩い光が弾け飛び、姿を現したのは――――


「ジャジャジャジャーンっ! この世全ての幼女は私の嫁っ! その嫁たちをいじめる奴らは許さないっ! 魔法少女フーナちゃん参上っ!」

 それは、ダボダボだったローブを着こなしたフーナだった。
 変身する前に比べて手足が伸び、見た目は10年ぐらい成長した姿だった。

「あ~」

 ただし、胸だけは大人にならなかったようで、しぼんだままだったけど。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

処理中です...