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第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編
理想の魔法少女?
しおりを挟む「いや~、やっぱりキューちゃんたちは華やかで可愛かったなぁ~」
『ケロ』
さっきまで訪れていたシクロ湿原の光景を思い出し、一人その余韻に浸る。
広大な水面に咲き乱れる、色とりどりの花々。
近づくとその花がパッと開き、私たちと連れてきたキューちゃんを歓迎してくれた。
そして仲間を湿原に戻すと、喜びを表すかのように、更に華やかに咲いた。
桃ちゃんも頭から飛び降りて、その輪の中に入って行った。
もう帰って来ないのかと心配したけど、今はまた頭の上に戻ってきてくれた。
桃ちゃんはお別れをみんなに伝えたんだと思う。
そうは言っても、10日も滞在するからまた明日にでも来るんだけど。
「ん、澄香は相変わらずキュートード好き。なんで?」
次の目的地のノトリの街に向かう道中。
メヤが桃ちゃんを撫でながら、そんな当たり前の事を聞いてくる。
「可愛いから」
「ん」
「…………それだけ? もっと聞きたい事ないの? いくらでも出て来るよ?」
「ん、マヤも可愛いに同意。だから大丈夫」
「………………」
なんか会話が続かない。
別にギスギスしてるわけではないんだけど、弾まない。
「あ、そうだ。ちょっと聞きたい事あるんだけどいい?」
「ん、覚えてる事なら答える」
「あのさ、キュートードに美味しい日があるって知ってる?」
ルーギルの依頼にあった『味が乗ってて一番美味しい日』について聞いてみる。
「ん、ない」
「ない?」
「キュートードはいつでも美味しい」
「あれ? そうなんだ……」
あの情報はもしかしてデマなのかな?
なんかそんな気がする。
「ん、誰に聞いた?」
「コムケの街のギルド長に聞いたんだよ。今日から10日後にそんな日があるって」
「ん、マヤ知らない。でも一応街に着いたら聞く。その方が間違いないから」
「あ、そうだよね? その方が確実っぽいや」
マヤメの返答を聞いて、そうする事に決めた。
そもそもそんな日があったならば、料理人さんが知らないわけないし。
「ん、でも澄香。キュートード好きなのに食べるの平気なの?」
私と桃ちゃんを見比べて、またもや当然のことを聞いてくる。
「平気だよ。もの凄く美味しいし」
「ん、それも納得」
「…………それだけ? もっとないの? 愛玩動物を食べて残酷だとか」
「ん、だって可愛いけど魔物。だからおかしくない」
「………………」
まぁ、言ってる事は間違ってない。
けど、なんか感情が希薄って言うか全体的に反応が鈍い。
「あ、でも倒しちゃうのは嫌だよ? 目の前でされるのも一緒。鳥や動物も可愛いけど、さすがに愛嬌があるのは倒したくないなぁ? 調理済で食卓に出るのとはわけが違うしね?」
桃ちゃんを抱いて、マヤメにはそう説明する。
「ん? 澄香は変わってる…… まるでマスターみた――――」
「おっ! そろそろ街が見えて来たよ。ここから先は歩いていくから準備して」
「ん」
遠目に、キュートードの料理で有名なノトリの街が見えてきた。
一応ここがルーギルの依頼の目的地。
後は10日後に美味しくなるとされるキュートードのフルコースを買うだけだ。
マヤメと桃ちゃんと3人で、ノトリの街へ入る為に正門に並ぶ。
「うわ、結構人いるんだね?」
「ん」
私たちの前には20人ぐらいの人たちが並んでいた。
そこでは門兵らしき2人の男性が入街者をさばいていた。
「お、やっと中に入れるよ」
「ん」
『ケロロ~』
数十分後、ようやく順番が回ってきたけど、
「お? 旅の物か?…… って、なんで嬢ちゃんは頭にっ!」
「あっ! あんたはカエルの英雄さまっ!」
前回いなかった、若い男性は私の頭の上を見ながら驚き、
もう一人の中年男性は、指を差しおかしなことを叫んでいた。
その門兵さんは数回会っているいつもの人だった。
「いや、それはもういいから。私たちは街に入っていいんでしょ? 桃ちゃんは従魔の腕輪してるし、マヤメは冒険者だから。マヤメも見せて?」
「ん」
いつもの門兵さんじゃなくて、若い門兵さんに声を掛ける。
どうやら私の事知らないみたいだし。
もう一人の方に騒ぎ立てられて、また注目されるのも嫌だし。
「そ、そうでしたか、あなたが英雄さまなんですねっ! もちろん街へは無条件で入っていいですよっ! なんなら街の中までご一緒しますよっ!」
「いや、もう何回も来てるから気を使わなくていいよ。後ろも並んでいるし」
背後を気にしながら、門兵さんの好意をやんわりと断る。
まだ10数人は並んでいるし、あまり時間を掛けたくないから。
「なら街のみんなに伝えてきますねっ! カエルの英雄さまがその名の通りに、キュートードを連れて来訪して下さったってっ!」
「へ? ちょっと待っ――――」
「おうっ! ここは俺に任せておけっ!」
「はいっ! それじゃ先輩行ってきますっ!」
「いや、だから――――」
「みんな――――っ! この街の英雄さまの凱旋だっ! キュートードと俺たちを救ってくれた、カエルの英雄さまが来てくれたぞ――――っ!」
私の制止の言葉も聞かずに、若い門兵さんは叫びながら街の中へと消えて行ってしまった。
「く~っ! せっかく羽根休みも兼ねて来たのにっ! これじゃ台無しだよっ!」
「ん、蝶だけに羽根休み。クス」
「そこうるさいっ!」
そんなこんなで騒がしくも、依頼の目的地の街の中へと入って行った。
――――
ちょうどその頃。
街へ一足先に着いていた、フーナとその仲間のメドは……
「ん~、お腹も一杯になったし、そろそろ宿に帰ってお昼寝しようか? その後はわたしと一緒にお風呂に入ろうね? たまにはわたしが洗ってあげるからさ。 こう、お互いに泡を塗りあって、体と体を密着させて――――」
「ん、フーナさま。あそこ見て? 人だかりが出来てる」
ベンチの上でくねくねと泡々タイムの説明をしていると、メドが何かを見付けて指さす。
その方向には街の人たち、特にお店を経営している人たちが多かった。
私が並んだたくさんのお店の人たちも集まっている。
「え? 本当だ。誰か有名人でも来たのかな?」
「ん、そうかも」
よく見ると、誰かの周りに集まってワイワイと騒いでいる。
節々に、歓喜やお礼の言葉が漏れてきたからわかる。
「ん、何か気になる」
「あ、見に行くの?」
メドはベンチから立ち上がり、人だかりの後ろから宙に浮き、中を覗き込む。
私もその後に続き、下でメドが降りてくるのを待つ。
スタッ
「ん…………」
「で、どうだったの? やっぱり有名人でもいたの? わたし的には少女がいいんだけど。魔法少女の衣装が似合いそうな美少女だと嬉しいかも」
地面にゆっくりと降りてきたメドに尋ねる。
「ん、美少女に分類される少女が二人いた」
「え? マジっ!?」
「ん、まじ。でも――――」
「わたしも見るっ!」
メドの手を繋ぎ、フライの魔法で浮いて、二人で中を覗き込む。
「うわっ! 本当だっ! 二人とも美少女だっ! しかも一人はメドにそっくりの美少女だよっ! で、もう一人の黒のゴスロリ衣装の方は……」
最初に目に入ったのは、メドに似た美少女だった。
銀色の髪に白い肌、彫刻のような整った顔立ち。
まるで大人の年齢まで変身したメドを見ているみたいだ。
それともう一人の少女もヤバい。
長く黒い漆黒の髪と、少し切れ長な黒曜石のような瞳。
まるで処女雪のような触れるのも躊躇う真っ白の肌。
全体的に幼くも見えるが、どこか小悪魔的で妖艶な雰囲気を醸し出している。
間違いなくメドの言う通りの美少女だった。
しかも『超』が付く程の極上の少女たちであった。
夢にまで見た理想の魔法少女にぴったりだ。
これで衣装を着れば間違いなく最高の物になる。
黒の少女の方はある意味そのままでもいける。
「ん、フーナさま、よく見て。あの黒ドレスの方の背中」
「うへへ~、じゅるる。え? わ、わかった」
自然と流れ出た涎を拭き、メドの言う通りに見てみる。
そこには――――
「羽根生えてるっ! しかも…… 蝶の羽根じゃんっ!?」
人混みと黒髪に隠れて見えずらいが、時折ヒョコと黒い羽根が見える。
「ん、多分あの人が蝶の人。少女たちを仲間にして、小さい子たちを無理やり働かせてる悪い人間。フーナさまの嫌いな人種」
真摯な表情になり、幾分目つきが変わったメド。
ジト目でわかりずらいけど、ちょとだけ鋭く見える。
「マ、マジかっ!」
「ん、恐らくそう。あんな服装の人見た事ない。それと少女も連れている」
「よ、よしっ! ならわたしがコテンパンに――――」
「ん、今はダメ」
「なんでっ!」
腕まくりをし、早速退治に向かう私を止めるメド。
因みに萌え袖のせいで腕は見えない。
「あの人たち、街の人たちに慕われている。だから街の中はダメ」
「あ、わたしが悪者になるから?」
「ん、そう。だから街の外に出てからがいい」
「わ、わかった…… ちょっと色々と悔しいけど」
「ん」
こうして私とメドは、二人の少女が街の外に出るのを待つことにした。
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