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第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編
初夏の空と桃ちゃんと
しおりを挟む「まずはウトヤの森だよね? そこでキューちゃんたち拾っていかないと」
『ケロ?』
街を出て、北西の空を見上げながら行き先を確認する。
その訳は、先日開かれたシスターズたちとの慰労会で、今から行くシクロ湿原に生息しているキュートードをウトヤの森の湖に連れてきちゃったので、元のお家に返すって理由がある。
で、そのついでにルーギルの依頼で、キュートードの料理で有名なノトリの街へ。
こっちはお仕事で、依頼内容はキュートードのフルコースをコムケに持ち帰る事。
本当に実在するかわからない、ルーギルのお嫁さんの記念日の為に。
私としてはキューちゃんに会えるのが楽しみだったりする。
あの色とりどりの花が咲き乱れる、本場のキューちゃんを見れる事にわくわくしている。
「あれ? どっちが目的かわからなくなりそうだなぁ」
ルーギルの依頼の事よりも、断然やる気が出るのはシクロ湿原に向かう事。
でも、優先順位的にはキューちゃんたちかな?
依頼の方は時間に10日程の余裕があるからね。
「てなわけで、先にウトヤの森を目指しますかっ! みんなに会えるのが楽しみだね? 桃ちゃん」
『ケロロ?』
頭の上に大人しくくっついている、桃色のキューちゃんに声を掛ける。
姿は見えないけど、きっと私と一緒で喜んでいるはずだ。
「じゃ、かなり余裕があるから、ゆっくり走っていくね? 危なかったらちゃんと教えてね? その時は抱っこするか、フードを作って中に入っていれば安全だから」
『ケロ』
「それではしゅっぱ――――つっ!」
『ケロロ――ッ!』
きれいに舗装された街道を、キューちゃんと一緒に駆けて行く。
シュタタタタ――――
肌を撫でる暖かい風と、遠くに見える緑の多い山々。
遥か先の地平線と混ざり合う、青く茂った草原を見ながら夏が近い事を感じる。
「ん~、やっぱりこの世界は気持ちいいね。お日さまの下がこんなにも心地いいとは思わなかったよ。数週間前の私からは想像できないよね?」
昼夜が逆転した、あの薄暗い部屋の中で、私は独りで生きていた。
話し相手はもちろん、友達と呼べる存在も、ましてや家族もいなかった。
ただ一人黙々と、そして目的も持たず漫然と過ごしてきた。
今の私から見ると、あの頃の自分が情けないし、叱ってやりたい。
あの世界で独りで生きてきた自分を正したい。
こんな世界もあるんだよ、ともっと早くに教えてあげたかった。
ユーアやみんなが精一杯に生きている、この世界の方が刺激的で攻略のし甲斐があるんだよって。
「そう出来てたら、今よりも楽しい世界が出来てたかもね? 5年間も自分の世界に引き籠ってたんだから勿体なかったよ。でもその時間も必要で大事だったんだけどね」
独りになって最初の2年間は死んでいた。
いや肉体的な話ではなくて、心の話。
全てを無くし、現実に意味がなくなり、逃げ込んだのがゲームの中。
ただその先でも逃げられない現実が私を襲った。
「あの時は辛かったなぁ、外も中も絶望しかなかったしねぇ…… 特にここに来る前の3年間が一番堪えたかも。でもその時間があったからこそ、全ての欠片を集められたし、そのお陰で立ち直る事も心の整理もついたんだよね」
家族を亡くした最初の2年間は、ひたすら宛てもなく彷徨っていた。
いるはずのない、妹の影を追い駆けて彷徨い続けた。
向かってくる相手は全て消滅させた。
敵味方関係なく、視界に映るもの全てを破壊した。
一人を守るために研鑽してきたこの力を、全部を壊す為に振るってきた。
なんでこの人たちは楽しそうなの?
どうしてみんなで笑っていられるの?
私なんて忘れちゃったよ。
笑顔の仕方も笑い方も、それを向ける相手も。
「でも今の私は独りじゃないし、頼られる相手も頼る仲間もいるしね。ユーアと出会って友達も仲間も増えて、そして守る力をまた大切な人の為に使える事が嬉しいよ。こうやって桃ちゃんとも友達になれたしね?」
『ケロロ?』
「ふふ、ありがとうね心配してくれて。でも今は楽しいし、みんながいるから大丈夫だよ。あ、そう言えば桃ちゃんにもあげようと思って忘れてたんだ」
一度立ち止まり、メニュー画面を出す。
「はい、これあげる」
『ケロ?』
地面に桃ちゃんを降ろして、あるアイテムを前足に巻く。
珍しそうに自分の手を覗き込んでいる
『フレキシブルSバンド』
巻き付けた対象の大きさを変えられる。
最小1/10 最大10倍に。
質量もそれに伴い変化するが、本来の物を超えることは出来ない。
因みにこれはハラミにあげた物と同じものだ。
「で、大きくなりたいか、小さくなりたいかイメージしてみて?」
しゃがみ込んで桃ちゃんに使い方を教える。
『ケロ?』
「って、なんで小さくなったのっ!? もう普通のカエルだよっ!」
『ケロロ』
「いや、だって、普通は大きくなりたいとか思うでしょう? 私なんか特にそう思うよ。元々は高身長なのに、このアバターのせいで子供に見られるし…… って、今度はデカ過ぎっ!?」
『ゲロロォ?』
最小から、いきなり最大にまで大きさを変えた桃ちゃんを見上げる。
5センチから一気に5メートルまで大きくなった。
「うりゃっ!」
ポフ
巨大化した桃ちゃんに、思わず飛び込む。
そこにキューちゃんのお腹があったらダイブするのは世の常だ。
『ゲコ』
「うひゃ~、すべすべしてて気持ちいいねっ! ちょっとひんやりもしてるし。これからの季節には最適だよ。お? 腕の綿毛もホワホワしててちょっと暖かいんだね? 夏と冬どっちも最高だねっ!」
『ゲココ?』
「でもそれじゃ運びにくいから、一度戻ってみて?」
『ケロ』
「よし、小さいのも大きいのも可愛いけど、やっぱりこのサイズが一番可愛いね。それじゃ残り半分、ウトヤの森目指して出発しようか」
もう一度頭の上に張り付いてもらい、目的地を目指して舵を取る。
こうして桃ちゃんと、私の旅が始まった。
ただ次の目的地で、もう一人加わる事になるとは思わなかったけど。
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