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第12蝶 異世界最強魔法少女(幼女)との邂逅編
帰って来たっ! けど?
しおりを挟む「ここがスミカ姉の街かぁ~、人が多くて賑やかだし、みんなお洒落な服着てるなぁ。村と違って建物も変わってるし、何だか頑丈そうだし」
「うん、そうだね。でも私の街じゃないからね?」
「うん、人が多く活気があってもどこか安寧を感じるし、街並みも整然としている。さすがは蝶の英雄さまが統治している街だな」
「おいおい、だから違うって、ここの領主さまの街だから」
街に入ってすぐに、おかしな感想を述べる二人を訂正する。
聞く人が聞いていたら、危ない内容だからだ。
街に着いたラボとイナの親子は、初めて訪れた街の景色に感激している……
かと思ったら、どこか値踏みするように鋭い視線を辺りに振り撒いていた。
私的には初めての都会を目の当たりにして、無邪気にはしゃぐイナを想像して、またラボに子供扱いされる流れかと思ったんだけど、なんか予想とは違った。
最前列を歩きながら、物珍しそうにキョロキョロとしてるのはいいんだけど、ブツブツと二人で確認するように小声で話し合っている。
まるでこの街とここに住む人たちを分析するように。
『慎重なのはいいんだけど、なんか可愛くないなぁ。村でなにか言われたのかな?』
別れ際、特にイナは大人たちに囲まれて助言を受けていたようだった。
「うんうん」と大きく頷きながら、真剣に話を聞いていたのを見たし。
『まぁ、何を吹聴されたのかわからないけど、ほどほどに警戒するのは良い事だね』
街の中は外に比べて確かに安全だけど、人が集まるところにはトラブルも付きまとう。
それは人が多ければ多い程、その指数は跳ね上がる。
そう言った意味では二人の行動は正解かもしれない。
初の街に有頂天になり過ぎず、適度に身構えていた方が。
ただあまり無神経に、警戒をバラ撒くと、
「なんだこの子供。さっきからジロジロと見やがってよぉっ! ひっく」
「ああん、隣のおっさんの目付きも気に入らねぇなぁっ! うぇ~」
こういった勘違いしたテンプレチンピラに絡まれる事もある。
人口密度が高ければ高い程、それは顕著になるからね。
「ア、アタイは別に、ただ珍しくて眺めてただけだから…… だから――」
「イナ。俺の後ろに隠れていろ。俺が説明するから」
難癖をつけてきた男たちから、娘を庇うように前に出るラボ。
その二人からは酒の臭いが漂っていた。
見た目普通の身なりだから、ただの酔っ払いだろう。
冒険者だったらボコしてルーギルのところに持って行くんだけど。
「あのさ、その二人は私の連れなんだけど、文句があるなら私に言って」
酒臭いのを我慢して、スッとラボとその二人の間に割り込む。
「うわっ! って、なんだこの変な格好の子供はっ!」
「ああっ!! こ、この子供はっ!」
「子供じゃないよ、見てわかるでしょ? それよりも文句があるなら私が聞くから。二人を注意していなかった私にも非があると思うし。なんなら一緒に謝るから」
ここは穏便に済ませようと、驚く二人を他所にそう提案する。
イナたちがこれから住む街だから、なるべく問題を起こさないようにっと。
「スミカちゃん、なんならわしが一喝して追い出すか? この街に住めないようにな」
「スミカお姉ちゃん、ハラミがお腹減ったみたい」
『きゃふっ!』
仲裁に入った私を見かねて、ロアジムとユーアが加わってくる。
ただもの凄く平和的にはいかなさそうだけど。
そもそもユーアの目が怖いし、言ってる事が恐ろしいし。
「いいよ。私がこの街に二人を連れて来たんだから。だからここは私に――――」
「す、すいませんでした―――――っ!!」
「お、お前、なんだいきなりっ!?」
助け舟に入ってくれた二人の説明の最中で、片方の男がいきなり土下座をする。
その相方の突然の行動に驚愕するもう一人の酔っ払い。
「お、お前も頭を下げろよっ! じゃないとひん剥かれるぞっ!」
「ひん剝かれるっ!?」
「それか、棒切れでボコられて、壁に挟まれて尻が2倍になるまで殴打されるぞっ!」
「し、尻が2倍だとっ!? なんだそれはっ! この蝶の子供はなんなんだっ!」
「ここまで言ってもお前、この方は知らないのか?」
「あ、ああ、俺は最近出稼ぎから帰ってきたんだ、だから何も……」
「なら、教えてやる。このお方は、この街を魔物の脅威から救ってくれた方だ。で、」
「お、おおっ!」
「……………………」
なんなの? この茶番。
最後まで付き合わなければならないの?
どうやら土下座している男は私の事を知ってるみたいだけど、話している内容はナゴタたちとナジメと戦った模擬戦の事を言ってるよね?
でもこの説明って、英雄って言うか、まるで――――
「で、街を救った後に、若い女冒険者を大観衆の前でひん剥き――」
「ひ、ひん剥くっ!? 街のみんなの前でかっ! ゴ、ゴクッ」
「更にその次の戦いでは、小さな子供を何度も殴りつけ――」
「ぼ、冒険者だけではなく、幼児にも手を出したのかっ!?」
「そうだっ! しかも仕置きとばかりに身動きを取れなくして、幼児の尻をこれでもかと叩きあげたんだっ! 泣き叫ぶぐらいになっ! しかもその子供はここの領主さまだったんだぞっ!」
「冒険者だけではなく、領主にも容赦ないとは、なんて極悪非―――― ぐふっ!」
「そうだっ! 英雄とは名ばかりの残虐非―――― がはっ!」
酔っ払いの話が終結する前に、二人はガクと頭を垂れてそのまま地面に倒れ込む。
きっと興奮しすぎて酔いが一気に回ったんだろう。
「ど、どうやらこの人たちは、飲み過ぎて寝ちゃったみたいだから私たちは帰ろっか? ラボとイナは今日は遅いから孤児院に泊るといいよ。子供たちも喜ぶだろうしねっ! ユーアもロアジムもそれでいいよね?」
事の成り行きを見ていた、親子と妹と依頼人に、倒れ込んだ男たちを体で隠しながらそう提案する。酔っ払いなんて見てたって時間の無駄だし、本人たちもそれを望んでないだろうし。
「い、いや、わしには酔い潰れた様には見えなんだが……」
「うん。だって痛そうな声聞こえたもん…… ね? ハラミ」
『きゃうっ!』
「うっ」
「ス、スミカ姉って、本当に英雄なのか? 女性をひん剥いて街中の晒し者にする英雄なんて、アタイ聞いた事ないんだけど……」
「し、しかも領主の子供なのかよくわからないが、小さな子が泣き叫ぶまで叩くなんて…… しかも何度も手を挙げたようだしな……」
「うううっ」
それぞれに意味合いは違うだろうけど、何故か全員に白い目で見られる。
ユーアとロアジムは隠した男たちと私を見比べながら。
ラボ親子は蔑む様な表情に変わり、私から一歩距離を取っていた。
『くっ! これは私が悪いって認めるけど、情状酌量の余地はあるよねっ! だって私は誹謗中傷されそうになったんだよ? これって逆に名誉棄損に当てはまるよねっ!』
この異世界に、元の世界と同じ刑法があるかは知らないけど、説明に悪意を感じたし、そもそもクローズアップする内容もおかしいんだよ。
なんでナゴタたちを脱がしたところがだけが注目されてんの?
なんで子供を一方的に泣かした事になってんの? あれ元Aランクだよ?
かなり納得がいかない。
着いて早々、単に絡まれただけなのに。被害者は私なのに。
まぁ、酔い潰れたんではなく、気絶させたのは私だけど……
「うお――――いっ! スミカ嬢っ!」
なんて落ち込んでいると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。
「ん?」
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