剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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SS バタフライシスターズの慰安旅行

キャンプ地を後に

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 随分と長話になったようで、照りつける日差しが強くなってきた。
 メニュー画面を見ると、時刻は10時過ぎだった。

 朝食を摂ったのが8時前後なので、ミーティングは2時間近くかかっていた。
 

 ミーティングが終わったみんなは、それぞれに緊張の色が見えた。
 気持ちが逸ってしまうのか、アイテムを出して、練習を始めてしまうほどに。

 そんな中、

「ナジメちゃん、まだキャンプは終わってないよ? だからもっと遊ぼうよっ!」

「そうよっ! ユーアの言う通りだわっ! ナゴ師匠たちも水着に着替えてよっ!」

 ユーアとラブナの年少組は違っていた。

 二人とも水着に着替えて、手を振り、ナジメ達に催促する。
 もっと遊ぼうと、まだキャンプは続いているんだよ、と。訴えるように。


「う、むぅ、すまんのじゃ。ユーアとラブナの言う通りなのじゃ」
「そうですね、まだお姉さまが企画した慰労会は続いてますものね」
「うん、なんか焦っちゃったけど、ワタシももっと遊びたいなっ!」

 それを聞き、ナジメ達も着替えて、笑顔で湖の二人に混ざって行った。


「さすがはユーアだね。私の気持ちを代弁してくれて」

 私はそんなやり取りを見て、感心すると共に感動した。

「あんな話をした私が言うのもあれだけど、ユーアとラブナの言う通り、ここへは訓練に来たわけじゃないからね。楽しんでもらおうと企画したんだからね」

 ユーアがみんなをまとめてくれた事に嬉しくなった。
 だって私が言っても、腕輪の件で煽ちゃったみたいで説得力がないから。

 ただ、ラブナは単純にユーアと遊びたかったんだと思う。
 何気にここ一番の笑顔だし、さり気なくユーアに抱きついてるし。


「それでもラブナがいたから、ユーアも言えたんだと思う。きっとみんなもそれはわかっている。だからこそ今は訓練をやめて、年少組の気持ちを汲んであげたんだと思う。なら私だけ傍観者はおかしいね」

 私は装備の『変態』を使いビキニタイプに変化させる。
 ついでに、大型スライダーをスキルで作成し、みんなの元に駆けて行く。

 タタタ――――

「お~いっ! みんな~っ! 私も混ぜてよ~~っ!」

 だって今日はまだ、みんなと楽しむための一日だもん。
 せっかくユーアたちが作ってくれた、みんなと遊ぶための時間だもん。


 そんな幸福な時間を堪能しようと、みんなのところに行ったんだけど、

「スミカお姉ちゃんも水着じゃないと、ダメだよ?」
「スミ姉っ! それはルール違反だわっ!」
「そ、そうですよ、お姉さまっ! 早く着替えてくださいっ!」
「うわぁ~、お姉ぇって空気が読めないんだなっ!」
「ねぇねだけ水着じゃないのはズルいのじゃっ! 着替えるのじゃっ!」 

「へ? ええええ――――――っ!!」

 なぜかみんなにダメ出しをくらってしまう私だった。 

 なので昨日の水着に着替えて、再度湖に戻る事となった。
 ただし今回は、装備の上から着たのは内緒だけど。


 その後はお昼まで泳ぎ、キューちゃんも混ざって楽しく遊んだ。

 ランチは、みんなが持ち寄った料理に舌鼓を打ちつつ、二日間を振り返っての話で盛り上がった。

 水着が装備の上からでも着れる事を思い出し、それぞれに交換をして、発表会みたくなったのはご愛敬だ。

 それと双子姉妹には、サイズ調整機能が働かない事も再確認できた……


 こうして私たちの慰労会という名のキャンプは終わりを告げた。
 日帰りでもいいから、また来たいねと、みんなと話しながら。


――


「スミ姉、キュートードはあのままで良かったの?」

 帰りも空の旅を満喫していると、ナゴタと話している私に声を掛けるラブナ。

「うん? あのままじゃないよ。少しだけ連れてきたんだ」
「そうなの? でもどこにもいないじゃない?」

 不思議そうに周囲を見渡し、その後で私の顔を見る。

「ああ、そうか、保護色だから見えないんだけど、今はほら」

 答えながら上空を指差す。

「ほら、保護色を解いたから見えるでしょ? 太陽光が反射して」
「へ?………… あああっ! って、……まじっ?」

 指した空を見て叫んだ後で、ジト目で私を睨むラブナ。

 そこには全長50メートルを超える巨大な水槽が浮かんでいた。 
 もちろん、透明壁スキルで作ったものだ。

 今は『追尾』の能力で私たちの上を着いてきている。


「お、ラブナもマジを使いこなしてきたね。連れて来たのは10匹で、今日から孤児院裏の池にいてもらうんだ。ナジメにもさっき許可取ったし、池も作ってもらったからね」

 ユーアと一緒にハラミをブラッシングしているナジメを見る。

「うむ。ねぇねに頼まれて作った池が、まさかキュートードの住処になるとは予想外じゃった。わしは子供たちの遊び場だと思っておったからのぉ。さすがねぇねというべきじゃな、うんうん」

 何に感心しているかわからないけど、今、話した通りに、ナジメが孤児院の工事に参加するという事で、前もって頼んでおいた。
 他のメンバーが食材確保に行ったその日に。


「それじゃ、キューちゃんたちは孤児院で飼うのっ!」

 バッと顔を上げ、すかさず反応するユーア。
 その目はキラキラと上空を見上げている。

 見間違いじゃなければ、口端に光るものが……


「う、うん、10匹だけど飼う事にしたんだ。あんまり池も広くないからね。後は明日、ウトヤに来て、残りはそのまま送り届ける予定。シクロ湿原方面を通る許可が出たら」

 ちょっとだけ、ユーアの視線を気にしながらそう答える。
 池に放流したその日に、全滅なんかしないよね?


「お姉ぇは明日どっかに行くのかい?」
「そうですね、今の話だと街を出るみたいに聞こえましたし」

 ナゴタとゴナタが今の話に反応する。

「うん、明日はロアジムと南西の村に出かける予定なんだよ。その時に少し遠回りだけど、キューちゃんを連れて行こうと思ってね」

「え? そうなの? またスミカお姉ちゃん出掛けちゃうの?」

 キューちゃんから目を離し、衣装の袖を軽く摘まむユーア。
 その表情はちょっとだけ寂しそうに見える。 


「うん、そうなんだけど、ユーアも一緒だからね。ロアジムにも言ってあるし、ハラミも大丈夫だよ。だから明日は、朝から私とお出かけね」

 ホワホワとした頭を撫でながら微笑んで返す。

「そ、そうなの、ボクもハラミ一緒なのっ! やった―っ!」
『がうっ!』

 私の話を聞いたユーアは、嬉しそうにハラミにダイブする。
 また毛並みが乱れちゃったけど。


「あ、それとロアジムの話が出たからついでに話すけど、私たちバタフライシスターズは、ロアジム直属の冒険者になったから」

「「「………………はあっ!?」」」 

 それを聞いてユーア以外のみんなが、目を丸くして私に注目する。
 気のせいか、なんか怒っているような……


「ごめん、キャンプの準備もあって、話すのを忘れてたんだよ」
 
 なので顔の前で手を合わせ、ごめんなさいする。

 何となく不穏な空気を感じたけど、気のせいだと信じたい。
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