剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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SS バタフライシスターズの慰安旅行

自重していなかったスミカ

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 それぞれに渡したアイテムを前に、ソワソワとしているみんな。

「「「………………っ」」」

 それはまるで、エサを前に「待て」を言いつけられた飼い犬みたいだ。


 その理由は、

「今日はもう暗いし、寝るのも遅くなるから、アイテムを試すのは明日にしようね? 午前中なら時間あるからその時にでも、ね?」

「うなっ!?」
「ええっ!?」
「そ、そうですか……」
「うん、わかったお姉ぇ……」

 私の言いつけを守っての事だった。
 そんなこんなで、新しいアイテムを前に大人しくしている。

 ただし、そんな状況でも、

「うわ~、ハラミが小っちゃくて可愛いよぉ~っ! くすぐったいよぉ~っ!」
『ペロペロ』

 ユーアとハラミだけは違っていた。
 既に、アイテムを使っちゃったから。

 フレキシブルSバンドで小さくなったハラミが、ユーアの膝の上で立ち上がり、首筋を舐めてじゃれていた。何とも微笑ましい光景だった。

 そんな光景を、使用許可がおりていないみんなは恨めしそうに見ていた。


「スミカお姉ちゃん、ありがとうっ! ハラミにもこんな凄いアイテム用意してくれてっ! ハラミも喜んでるよっ!」

『きゃうっ!』

 小さくなったハラミを抱きあげて、満面の笑みの我が妹。

「うん。ハラミもBシスターズ一員だからね。当然だよ」

 私も笑顔で答えて、ハラミを軽く撫でる。
 こんなに喜んでくれる姿を見ると、あげた甲斐があったってものだ。

 まぁ、ハラミの分は忘れてたって事は絶対に言えないけど。


「それでお姉さま、なぜこんな価値も図り知れない、高価なマジックアイテムを、私たちに下さったのですか?」

 ハラミとじゃれるユーアを横目に、ナゴタが聞いてくる。

「ああ、そっか、出所も含めてきちんと話してなかったね。それじゃちょっと長くなるから、簡単に飲み物と甘いもの出すね」

 そう言えばそうだった。
 ユーアの件で説明するのを忘れていた。


「でしたら飲み物は私が用意します」
「あ、ボクも手伝います、ナゴタさん」

 二人が新しく紅茶を淹れ直し、私はスティックタイプレーションをお皿に並べる。

「それで、このマジックアイテムは何なのじゃ? こんなものわしでも見た事ないぞ?」

 ナジメの出だしの一言で、それぞれがアイテムを手に取る。

「う~ん、実はずっと言い出せなかったんだけど、それは元々持っていたものなんだ。私の故郷にあるストレージボックスの中に」

「すとれーじぼっくす? じゃと」 

「うん。分かりやすく言うと、マジックバッグの設置型。その中のものなんだ」

「じゃが、それはねぇねの故郷にあるのじゃろ? なぜ今ここにあるのじゃ?」

 ナジメが質問役なのか、他のみんなは頷いて聞きに入っている。

「あのさ、私って、収納魔法が使えるでしょ。その魔法が最近、故郷のストレージボックスに繋がるようになったんだ。で、そのアイテムたちは私が長年集めた物で、それをみんなにあげたんだよ」

「あ、あのぉ、確かお姉さまの出身地は、フリアカ大陸ってユーアちゃんに聞いたことがあるんですが、そんな海を越えて遠方の故郷にも魔法で繋がっているんですか?」

 ナゴタが手を小さく上げ、おずおずといった様子で会話に入ってくる。

「正確に言うと、繋がったのは最近で、今までは出せなかった。多分だけど、かなりの強敵を相手に戦ってきたから、魔法も強くなったんじゃないかな? はっきりとした理由はわからないけど」

 ナゴタも含め、みんなを見渡してそう話す。

 さすがに装備の『カウントダウン』の件は話せないし、
 ゲーム内の事ももちろん口には出せない。


「で、次にどこで入手したか、なんだけど――――」

「はいっ! それは言わなくてもいいんだ、お姉ぇ」

 手を挙げて発言したゴナタに、出だしから止められる。

「そうなの? どうして?」
「うん、それは聞いても意味ないって言うか、今更って言うか?」
「意味ない? 今更って?」

 予想とは反した答えのゴナタに聞き返す。

「え~と、だってお姉は、今までも見た事もないものばかりくれてるんだ。そのお皿に乗ってる甘いお菓子のれーしょん?もそうだけど、ユーアちゃんが持ってる短弓もそうだし――――」

「あ、後は私たちに貸し出してくれた『快適お家』や孤児院もそうですよね?」

「そうだわっ! 前にアタシに使った回復薬もそうじゃない? それとスミ姉とリブさんとで行った、シクロ湿原でも変なチョーカーくれたじゃない」

「うむ、そう言えば、ゴマチの背中の古傷を治したのも、ねぇねの薬じゃったな」

 ゴナタから始まり、ナゴタ、ラブナ、ナジメの順で、今までひけらかした数々のアイテムを暴露していく。この世界では存在しない、チート級のゲーム内のアイテムを。


「ああ、そうだね、確かに、うん」

 みんなの話を聞いて、カタコトで返事してしまう。

 だってゴナタの言う通り、それは今更ってなるよね?
 散々みんなの前で使ってきたんだから。
 元々隠すつもりもなかったし。


「そうだよ、お姉ぇ。だから今更気にしても意味ないって事なんだっ! それにワタシたちはお姉ぇが何者でもいいって前にも言ったし、それにやる事には必ず意味があるって事も知ってるしなっ! このアイテムの事も」 

 私とアイテムを交互に見て、ニカと微笑むゴナタ。
 その意味深な笑顔からすると、ゴナタにはお見通しらしい。

 姉のナゴタの様に聡明ではないが、ゴナタにはゴナタでいいところがある。
 理詰めで小難しい思考ではなく、物事の本質を直感的に捉える事に長けている。


『そんなところはユーアに似てるよね? 無邪気で真っすぐな故に雑念が無いって言うか、素直って言うか、たまに鋭いとこを突いてくるもんね。なら――――』

 話すべきタイミングかもしれない。
 ここまでお膳立てされたなら、今がその時だと思う。


「それじゃ、ゴナタの言うアイテムを配った意味ってのを話すけど。ここから先の話は、別に強要するつもりもないし、無理に協力してとも言わないから、それだけは頭に入れておいて」

 幾分、表情が固くなったみんなの前に、私はあるアイテムを置いた。

「で、これを見て欲しいんだけど――――」

 ゴト

 それは、この世界では異常種の、あの魔物が着けていた5つの腕輪だ。

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