剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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SS バタフライシスターズの慰安旅行

レッツスライダー2(アダルト組編)

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「そ、それじゃ、私が一番前で」

 サササッ

 我先にと一番前に陣取り、サッと腰を下ろす。
 これなら『あれ』に挟まれる心配もないし、心の傷も広がる事もない。


 今、私たち(ナゴタとゴナタとナジメ)がいるのは、高さが50メートル、全長が500メートルもある、ループ型スライダーの頭頂部だ。

 これはナゴタたち、アダルト向けに作ったので、360度回転する縦型のコースに、螺旋状に落ちていくコースなど、ちょっと激しいものとなっている。それと小さなジャンプ台が数か所に設置してある。

 
「うぬ、ねぇねが一番前なのか?」
「あ、ナジメが前がいいなら、交換するよ」

 スッと前の順番を譲る。

 さっきのユーアみたいに、足の間に座らせれば問題ない。
 どのみちこの配置ならむしろ大歓迎だ。姉妹に挟撃される心配もないし。


「おや? ナジメは私と肩車ではなかったのですか?」

 私の前に座るナジメに、ナゴタが尋ねる。

「おお、そうじゃったっ! わしはナゴタの肩の上じゃったっ! ちょうど足の置き場もあるから居心地がいいんじゃっ!」

「肩車? 足の置き場?」

 ヒョイと立ち上がり、ナゴタの上に乗るナジメ。
 ニコニコと無邪気な笑顔で八重歯を見せている。

「ああ」
 
 前に高いところが好きって言ってたからか。
 それでわざわざ肩車なんだと納得した。

 それと、

 ぐにゅ ぐにゅ

「………………くっ」

 ついでにの意味も良く分かった。
 ナジメに踏まれて形を変える、あの憎き物量の塊を見て。


「で、それでどうやって滑るの?」

 なんか予想と違う流れだなと、思いながら聞いてみる。

「え? だってお姉ぇはワタシと一緒だぞ?」

 意外だとばかりに、ゴナタが傍に来る。

「そ、そうなの? みんな一緒じゃなくて?」

「違うぞ? 二人一組で滑る事にしたんだっ! だって4人だったら危ないからって、ナゴ姉ちゃんが心配してたからなっ!」

「ふ、ふ~ん」

 チラと、そう話してたであろうナゴタを見てみる。

「はい、その通りです。お姉さま。はゴナちゃんが滑る事に決めてあるんです」

 ニコと微笑み、教えてくれるナゴタ。

「うん、確かに危ないかもね。ナジメは能力があるからいいとしても、ナゴタとゴナタがケガでもしたら…… ん、最初って?」

 ふと気になって、話の途中で聞いてみる。
 最初って何? これで最後じゃないって事?

「はい、最初はゴナちゃんとお姉さまで、次がナジメ、で、最後に私とですね」

 さっきよりも表情を崩して、満面の笑みで答えるナゴタ。

「え? は、はぁっ!?」

 なに、私だけ3回も滑るの?
 最初はゴナタで、次にナジメとナゴタの順番でっ!?


「ど、どうしてそんな事に?」

 聞き方がちょっとあれだけど、思わずそう聞いてしまう。

 だって、ナジメはいいとしても、姉妹と二人きりで滑るだなんて……
 これ以上傷口が開いたらどうするの? 絶対にそうなるパターンだよね?


「どうしてと言われましても、私たちはお姉さまと滑りたいと思って、3人で話し合って決めてたんです。もしかしてご迷惑でしたか?」

 笑顔から一転、申し訳なさそうに視線を伏せるナゴタ。

「うう~」

「そうなんだっ! 別に一緒でもそんなに危なくはないけど、お姉ぇに何かあってもイヤだからなっ! それとワタシもお姉ぇと一緒に滑りたいんだっ!」

 腕を頭の後ろに回し、ニカと笑顔で話すゴナタ。

「うむ~」

「そうじゃぞ、ねぇね。せっかくねぇねがこの機会を用意してくれたのじゃ、じゃからそれぞれ楽しみたいのじゃっ! わしも楽しみたいのじゃっ!」
 
 最後にナゴタの上で、腕を振って無邪気な笑顔で答えるナジメ。

「むむむ~ …………」

 そんな3人を前にして腕を組み、小さく唸るが、答えは直ぐに出ていた。

 私はみんなを楽しませる為に、このイベントを企画したんだ。
 なら答えは最初から決まっている。


「よし、私もそれでいいよ。それでいこうっ!」

 腕を解いて、みんなを見渡し笑顔でそう告げた。

「はい、ありがとうございます、お姉さまっ!」
「それじゃ、最初はワタシだなっ!」
「わしはその次じゃっ!」

「うん」

 ただしそこに私が楽しめる、その理由があるかは不明だったけど。


――


「はぁ、はぁ、はぁ…………」

 あれは何だったんだろう?

「ふぅ、ふぅ、ふぅ…………」

 あれが俗に言う、桃源郷だったのだろうか?

「い、いや、あれはそんないい物じゃないって、私からしたら、あれは――――」


 宴だった。


「ううう」

 ガクガク

 それを思い出しただけで身震いし、立っているのも辛い。

 バシャ

 両肩を抱いて膝を付き、水面を眺める。

「はぁ~」

 そこに映る私の顔は真っ赤だった。
 頬だけではなく、耳の先まで赤に染まっていた。

 なのでそのショックで、今は顔を上げることが出来ない。


『あ、あんな事は二度と経験したくない…… だってあんなにいろんな角度から攻撃されたら、私だって防げないし、あんなに埋まったのも初めてだし、それに身動きも取れなかったから……』

 なんであんなものを作ってしまったのだろう。
 全てはあのなんちゃってスライダーが原因だ。

 調子に乗って作るんじゃなかった。何が最高傑作だ。


「はぁ~」
 
 心を落ち着かせようと、再度息を吐きだす。
 脳裏に焼き付いた光景を、何とか頭から追い出すために。

 私は一度のライドで経験してしまったのだ。

 それは宴などという生易しい物では決してない。
 そんなもので、私がここまでの心的外傷を負う事はない。

 いや、宴って言えばあながち間違ってはいないけど、

 そう、あれは――――


 酒池肉林と言う名の、ハレンチな宴だったのだ。


――


「それじゃ、ナゴ姉ちゃんとナジメは後から滑って来てくれよなっ!」

 ゴナタが私の後ろで、後発組に声を掛ける。

「え? ナゴタたちは上で待ってるんじゃないの?」

 不思議に思い聞いてみる。
 だって、戻ってきた私と滑る予定だよね?

「うん、それだと上で待ってるのが勿体ないからさっ! 降りたらまたお姉ぇと戻ってくるんだよっ! その方がたくさん滑れるだろ?」

「ああ、なるほどね。確かにそうだね」

 ゴナタの説明に頷く。

「それじゃいくぞっ! お姉ぇっ!」

 ギュッ
 ムギュギュッ

「う、うん」

 ゴナタの合図と同時に、背中にもの凄い物量の柔らかな何かを感じるが、

「ぐっ!」 ギリリ

 なんとか歯を食いしばって堪える。
 そしてそのまま出発する。

 シャ――――――


「うはぁっ! やっぱり二人のが早いんだなっ!」
「ははは、そ、そうだねっ!」

 私はなんとか気丈に振舞い、平気そうに答える。

 ってか、出だしのスロープがほぼ直角なんだけど。
 早いどころではない、殆ど落下しているのだから。

 これはこれから先のコースの為の、助走ゾーンになってるからだ。

 この先には、360℃の螺旋スロープと、その先には目玉の360℃の縦型×2がある。
 さらに先には、細かいカーブや、最後に特大のジャンプ台も待っている。


「うひゃ~っ! 目が回るよ、お姉ぇっ!」

 ムギュ

「ちょ、ゴナタあまりくっつかれるとっ!」
「うん? 何か言ったかいお姉ぇ?」
「な、何でもないよっ!」
「そうか? 次は逆さまになる奴だなっ!」
「う、うん」

 そんなこんなで螺旋スロープを抜け、次は目玉の360℃の縦型スロープだ。

「よ~し、行くぞっ!」
「う、うんっ!」 

 だがそこで事件が起きた。
 予想だにしなかった、あの悪夢の出来事が。


 (うひゃ~っ! 高いのじゃ、早いのじゃっ!)
 (ちょ、ナジメっ! 肩の上で暴れると危ないですよっ!)

「ん?」
「あれ、ナゴ姉ちゃんたち、もう追いついたのかな?」  

 一つ目の縦型スロープを抜け切った直線で、頭上から後発組の騒ぎ声が聞こえた。
 その内容から、ナジメがはしゃいでるのだとすぐさまわかった。

 なんて、思っていると…………

 (あひゃっ!)
 (えっ!?)

 ナジメの素っ頓狂な叫びと、驚くナゴタの声の後で、

「うわ~っ! ナゴ姉ちゃんたちがこっちに落ちてくるぞっ!」
「え? えええっ~!?」

 ゴナタが上を向いて、そんな事を言い出した。

「うわ~、危ないのじゃ~っ! どいてくれなのじゃっ!」
「お姉さまっ! どいて下さいっ!」
「いや、それは無理だからっ!」
「危ない~っ!」

 ド――――ンッ!

 そうして、私たち4人は合流したのだった。
 恐らくだけど、ナジメが暴れたのが原因で落ちてきたのだろう。


「いつつ、みんな大丈夫?」

 離れずに、絡まったみんなに声を掛ける。

「は、はいっ! 私は大丈夫です」
「ワタシもだっ!」
「ね、ねぇね、すまんのじゃっ!」

「そう、ケガ無くて安心したよ」

 私はみんなの顔を見てホッとする。

 が、そこからが大変だった。

 自信作のコースは、まだ残り2/3もあるのだから。

 ギュムッ

「うぷっ!」 

 もぎゅっ

「わぷっ!」

 ぽよん

「おふっ!」

 ペタン

「痛てっ!?」

 4人で絡まったまま滑る私に、この世の物とは思えない、柔らかな感触が全身のいたる所に触れ、擦り、潰し、滑り、圧迫してくる。

 顔や胸や手の平に、はたまたお尻やお腹や、更には上下左右から挟まれる。


「わぷっ! ちょっと柔らか苦しいっ!」

 グイッ!
 ぷにゅん

「ああっ! お、お姉さま、そこは私のっ!」
「お、お姉ぇっ! そんなところに手をっ!?」
「ねぇねっ! ちょっと痛いのじゃっ!」

「だ、だって、このままじゃ、私が―― って、今度は連続カーブっ!?」 

 ギュルン
 
 ぽにゅん

「むぐっ!」
「うぴゃっ! あまり手を動かすと水着がっ!? それにお姉さまのお胸がっ!」
「わむっ!」
「ぴゃっ! お姉ぇどこを噛んでいるんだっ! そこはワタシの乳k」
「痛っ!」
「ねぇねっ! さっきからなんか失礼なのじゃっ!」

――

「はぁ、はぁ、はぁ――――」

 そんなこんなで、くんずほぐれつのままスライダーを終えた私は、耳まで赤くなった、恥ずかしい顔を見られないように、下を向いて水面を見つめている。

 ただし、そんな状態は私だけではなく。

「ふぅ、ふぅ、ふぅ――――」
「うはぁ~」
「? みんなどうしたのじゃ?」

 一緒に滑ってきたナゴタたちも、息を荒げて茫然としている。
 あちこち水着が食い込んだ、官能的な状態で。

 ただし、一番の年長者の幼女を除いてだけど。


 こうして、私の宴は終わりを告げた。

 もう二度と調子に乗らないと心に決めた。

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