剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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SS バタフライシスターズの慰安旅行

お披露目。蝶の英雄の水着とは

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「ス、スミカお姉…… ちゃん? ここ、お外だよ? 知ってるよね?」
 
 おバカなお姉ちゃんだと言わんばかりに、白い目で私を見るユーア。


「お、お、お、お姉さまっ!?」
「う、うわっ! お姉ぇっ!?」

 顔を両手で覆いながらも、チラチラと隙間から覗き見している姉妹。
 何やら顔だけではなく、耳まで赤くなっている。


「ね、ねぇねやっ! ここは風呂ではないぞっ!」
「スミ姉っ! なんで素っ裸なのよっ! お、女同士でもおかしいじゃないっ!」

 最後にハッキリと、私の状況を説明してくれたのはナジメとラブナ。
 そんな二人は顔を赤くし、驚愕の表情で私を指差している。


「うう~~」

 その二人の言った通り、今の私は一糸まとわぬ生まれたままの姿になっている。
 なんとかで隠してはいるが、何も着ていないのは明白だ。


「来てっ! キューちゃんっ!」

 いや、正確には裸ではない。
 これでも一応、水着の部類なのだ。

 ピョン ピョン

『ケロロ?』『ケロロ?』

「あ、ありがとねっ! ちょっとここにくっついててっ!」

 ピト ピト

「よし、これなら可愛いぬいぐるみを抱いている少女だっ!」

 ドーンと胸を張って、着替えた事をアピールする。
 ただし、胸の部分と、お尻の部分にはキューちゃんがくっついているけど。

 なにせ最後に残っていた水着は、運営の悪ふざけなのか何なのか、ヌーディストビーチに着ていく水着という、意味の分からない代物なのだ。

 したがって、水着を着ている割には素っ裸だ。
 ただし、大事なところは『モザイク』になって見えなくはなっている。

 豊満なお胸の部分とか、お股とか、お尻とかには。

 逆にそれがイヤらしくも見えない事もないが、
 ハッキリと見えた方が、尚更、色々とマズいのだろう。

 それでも丸出しで泳ぐだなんて、さすがにハードルが高いので、キューちゃんに吸盤でくっついてもらって、大事なところは隠す事に成功した。

 これなら一安心だろう。

『ふぅ~』

 私はそっと胸を撫で下ろす。


「はぁっ!? それのどこが一安心なのよっ! スミ姉っ!」
「え? まさか、聞こえて?」

「スミカお姉ちゃん、それの方が恥ずかしいと思うの、ボクは」
「ユーア?」

「お、お姉さまっ!? キュートードの両手が、なだらかなお胸に?」
「はぁ! なだらかってっ!?」

「お、お姉ぇのはくっつきやすいのかな? ピッタリ張り付いてるなっ!」
「ちょ、それどういう意味なのっ!?」

「ね、ねぇねはサイズ的に全部隠れて羨ましいのじゃっ!」
「いや、いや、ナジメがそれ言うのっ! 盛大なブーメランだよっ!」

 各々が私の水着姿を見て、てんやわんやしていた。

 だって、仕方ないでしょっ! 
 これしかなかったし、ユーアが急かすんだからっ!





「はぁ~」
『ケロ?』

「きゃ~っ! 何これ、目が回るけど楽しすぎっ! ユーアも滑ってきなよっ!」
「うんっ! それじゃボクも滑るねっ! わ~、早い早いっ!」
『わう~っ!』

 ザブ――――ンッ!!

「ナ、ナジメ、あなたこんな高いところ怖くないのですか?」

「うむ、これぐらいどうってことないのじゃっ! わしは高いところが好きじゃからなっ! それ、滑るのじゃ~っ!」

 ドボ――――ンッ!!

「ワタシも行くぞっ! それ~っ! わぁ~高い高いっ!」
「ゴナちゃんが行くなら、私も行くわっ! きゃぁ~っ!」

 ボチャ――――ンッ!! ×2

 
「はぁ~」
『ケロ?』

 それぞれがなんちゃってスライダーに夢中になって遊んでいる。
 それをキューちゃんを胸にくっつけて、一人寂しく眺めている。

 みんなが遊んでいるのは、私が水着に着替える前に設置しておいたものだ。
 透明壁スキルで作ったなんちゃってスライダーだ。
 装備が無くても、操作が出来ないだけで問題ない。 


 ユーアとラブナが滑っているのは、白のチューブ型スライダー。
 全長が300メートルもあるノーマルタイプ。

 ところどころにトンネルと、そして小さなジャンプ台。
 後は、お決まりのヘアピンカーブが数か所に設置してある。

 次に、ナジメとナゴタとゴナタが滑っているのは、水色のループ型スライダー。
 縦向きや螺旋状に一回転するコースに、数々のジャンプ台が付いている。

 それと角度が急なので、かなりスピードが出る代物だった。
 だからどちらかと言うと、大人向けのスライダーでの意味合いで作った。
 全長が500メートルもある自信作だ。


 私は楽しんでいるみんなを、キューちゃんと一緒に見ている。

 頭に一匹、両手に三匹、肩に二匹に、背中に四匹。
 因みに、背中には吸盤でくっついているだけだ。


「さすがに、この格好じゃはしゃげないもんね?」

 今はキューちゃんに隠してもらっているが、その下の姿は即通報されるレベルだ。迂闊には外せない。


「まぁ、私はみんなが楽しんでくれればそれでいいよ。それに天気もいいし、風も暖かいし、ゆっくり紅茶でも飲んで待ってるとしようかな。ね? キューちゃん?」

『ケロロ?』『ケロロ?』『ケロロ?』
『ケロロ?』『ケロロ?』『ケロロ?』

 体一杯にキューちゃんを抱いて、湖畔からまたテーブルに戻る事にする。
 足だけは入れたし、雰囲気だけでも味わったからね。


 ハシッ ×5

「え? なに?」

 テーブルに向かう途中で何者かに、両手両足と腰を掴まれる。

『ケロ?』

 ピョ――ン ×10

 それに驚いて、私から離れていくキューちゃんたち。

「あ、あああっ――――!」

 私の可愛い衣装兼、癒しのキューちゃんたちがっ!


「よし、行くよっ! みんな」
「「「はいっ!」」」

 バシャバシャ

 なんて嘆いていると、体ごとヒョイと頭上に持ち上げられて湖に運ばれる。


「ちょっと、どこ行くの? みんなっ!」

 首を捻って、真下で担いでいるシスターズ全員に尋ねる。
 
「お姉さまも、私たちと一緒に楽しみましょっ!」
「そうだぞっ! お姉ぇもそんな格好気にしないで楽しもうなっ!」

 ポイッ

「わ~~っ!」

 バシャ――――ンッ!!

 そして水面に放り投げられて、盛大に水飛沫を上げる。

「がぼっ、ちょっといきなりびっくり…… って、今度はなに?」

 顔を上げたところで、両腕をユーアとラブナに掴まれる。
 その際に「ぷにゅ」としたものが肘に当るけど気にしない。

「え? なにするのっ!?」

「ナジメちゃ~んっ! お願いねっ!」
「一気にいっちゃってよ、ナジメっ!」

 驚く私を他所に、今度はナジメになにかを頼んでいる。

「うむ、それじゃいくのじゃっ! 『大噴水』」

 ドバッ!

「魔法っ? って、わわわっ! 浮き上がったっ!」
「きゃっ!」
「きゃあっ!」

 私に掴まっていたユーアとラブナも、ナジメの魔法によって宙に浮かされる。
 水中から出現した、大きな噴水の上に乗って、20メートルくらい上昇する。


「って、メチャクチャ怖いんだけどっ!」

 噴水の上はちょっとでも動けば、落下しそうなほど不安定だった。
 それに、今の私は透明壁スキルが使えない。だから余計に怖い。

「あ、ナジメちゃんっ! もうちょっと左だよっ!」
「ナジメ~っ! もう少し上よっ!」

「うむ、任せるのじゃ~っ!」

 一緒に浮かされた二人が、下にいるナジメに懸命に指示を出している。


「ん? あ、あれ? ここって…………」

 トン

「ふわ~、怖かったよぉ」
「ま、まぁ、なかなか楽しかったわっ!」

 私と一緒に、ユーアとラブナも魔法の噴水から降りてくる。
 ナジメの魔法の操作と、二人の指示のお陰で落ちる事なく無事に足が付いた。


「もしかして、私もこれを滑るの?」

 ここは私が作った、なんちゃってスライダーのチューブ型の上だ。
 もう何をしたいのかはわかるけど、一応聞いてみる。


「うん、そうだよっ! スミカお姉ちゃん」
「こ、ここまで来たんだから、アタシたちと一緒に滑りなさいよねっ!」

 ユーアは満面の笑みで、ラブナはそっぽを向きながらそう答えた。

「ふふっ、そうだねっ! それじゃ私も楽しんじゃおうかなっ! ありがとうね、ユーアもラブナもわざわざ連れ出してくれて」

 そんな二人に近寄り、キュッと抱きしめる。
 二人の心遣いが、私にも伝わってきたからだ。

 全裸(仮)でいじける私に、妹たちが気にしないでいいよと。


「はいっ!」
「わ、わっ! わかったらさっさと滑るわよっ!」

「うん」

 どうやらこれで、私も心から楽しむことが出来そうだ。
 見た目の姿は裸でも、心は二人が覆ってくれたから。

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