剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
上 下
383 / 586
SS バタフライシスターズの慰安旅行

再会、そして前準備

しおりを挟む



「うふふっ!」

『ケロ?』

「むふふっ!」

『ケロロっ!』

「くふふっ!」

『ケロロっ!?』『ケロロっ!?』『ケロロっ!?』

 帰ってきた。

「うはははははっ! ――――」


 私の可愛い、キューちゃんたちがっ!


『『『ケロロ―――――っ!!!!』』』

 歓喜の雄叫びを上げる私に答える様に、囲んで合唱してくれるキューちゃんたち。
 きっとみんなも私の事を歓迎してくれているんだろう。


「どう? こっちは向こうに比べて狭いけど居心地いい?」
『ケロ?』
「そう、それは良かったよ」
『ケロロ?』
「あっちは20数キロの広さだけど、こっちはその1/5だから心配してたんだよ」
『ケロ?』
「え? それでも深さがあるから楽しいって? まぁ、そこも気になってたけど、楽しく泳げて嬉しいなら連れて来たかいがあったよ」
『ケロロ?』

 満足げなみんなの反応に、私も嬉しくなる。
 本当に無事で良かったよ。

「うふふふっ」 


「…………ねぇねは魔物相手に何をやっておるのじゃ? 何やら話しかけておる様じゃが……」

「スミ姉のあれはもう病気みたいなものよっ! シクロ湿原でもおかしくなったし」
「でもなんか嬉しそうだね、スミカお姉ちゃん! キューちゃんも可愛いし」
「あああ、お姉さまが、あんなに楽しそうにっ!」
「あはは、なんか良く分からないけど、お姉ぇが喜んでるならいいやっ!」

 ナジメ、ラブナ、ユーア、ナゴタとゴナタがキューちゃんとの再会を果たし、幸福で胸いっぱいの私を笑顔で見守ってくれた。

 やっぱり持つべきものは仲間だよね。


―――


「さ、それじゃ、心配事も無くなったし、お昼にはまだ早いけど準備を始めようか。ちょうどそれぐらいでみんなもお腹が空くだろうし」

 キューちゃんを愛でるのに、少し満足した私はそう宣言する。

「「「………………」」」

 そんなみんなの視線が、少しだけ厳しく見えたのは、きっとキューちゃんを独り占めした私に嫉妬してるんだろう。ちょっと反省。


「はぁっ? もうとっくにお昼過ぎてると思うんだけど、スミ姉っ!」
「うむ、ねぇねはなぜあんなに、あの魔物に執着するのじゃ。かれこれ2時間経っておるのじゃ」

「え? あ、本当だ。あのメヤって子と話し過ぎたせいだね、ゴメンね」

 メニュー画面の時刻を見て、驚きながらみんなに謝る。
 随分と、あの子とも長話しちゃってたんだと。
 きっとみんなもキューちゃんと遊びたかったはずなのに。


「いいえ、お姉さま。お姉さまがキュートードと仲良くしてた時間が、2時間だったんです。メヤって子とは半刻ほどしか話していませんでした」

「うわ、マジで? それならちょっと急ごうか。私は会場を用意するから、みんなは持って来た食材の下処理し始めてね」

「「「………………」」」

 ナゴタの説明を聞いて、すぐさま辺りを見渡し、最適な場所を探す。
 会場となりそうな、広くて平らな地面を。

 そしてキューちゃんと湖を見渡せる絶好の場所を。


「あ、あそこが広いけど、なにかをするにはちょっとデコボコだなぁ。ん~」

 メヤが森に入って行った、森と湖との境界を見る。
 場所的にも日差し的にもいいんだけど、細かい雑草やら小石が散乱していた。


「なら、わしが整地するから大丈夫じゃっ!」 

 なんて悩んでいると、ナジメが出てきて魔法で地面を平らにならしてくれた。

「うわっ! さすがはナジメだねっ! 一瞬できれいになっちゃったよ」

 ナジメの魔法と、その出来栄えに感心する。
 手を挙げ何かを呟いたら、地面が波打ち、瞬く間に平らな地面が出来上がった。


「うむ、こんなものじゃろ。ちょっとだけ細かい小石が残ってしまったが。危ないという大きさでもないし、これで大丈夫じゃろ。ううむ」

 そんな本人は、笑顔ながらもちょっとだけ不満気だ。
 腕を組み、何やら唸っている。

 いや、いや、十分凄いからね。
 小石って言っても、それ砂利だからね。


 その後は、私が持って来たかなり大き目なシートを敷いて、その上に数脚の調理用のテーブルや、ソファーやら、大型鉄板やらを出していく。ついでに食器や調理器具、調味料も並べていく。


「よし、こんなもんかな? なにか足りないのがあったら言ってね?」

 こっちの準備が終わったので、待ってるみんなに声を掛ける。

「うわぁ~、相変わらずお姉ぇは色んなの持ってるなっ!」

 アイテムボックスより出した、数々の物に関心しているゴナタ。

「まあね、でもこれでも買い足したんだけどね? 調理用の頑丈で大きなテーブルは持ってなかったから。包丁とかも自分たちの物しか持ってなかったし」

「そうですよね、私たちも用意してくれば良かったです。お姉さまばかりに負担をかけさせてしまって、申し訳ございません」

「え? それは別にいいよ、ナゴタ。そもそも私が発案したんだし、急に決めちゃったのも私なんだから、だからそこら辺は気にしないでいいから」

 興味津々なゴナタとは違って、気遣ってくれるナゴタにそう話す。
 今説明したとおりに、急な開催になったのも私のせいだし。


「ですが、それは私たちを思いやっての事ですよね? なのでやはり、本来は――――」

「ま、本当に気にしないでいいよ。好きでやってる事だし。それに持ってたら持ってたで、今日以降もみんなでピクニック出来るじゃん。それとも今日これっきりにするの?」

 どうしても引かないナゴタに「ニコ」と微笑み返す。


「ふふふ、それは嫌ですね、これっきりって言うのは。なので今回はお姉さまに甘える事にします。 ですが次回からは私もお手伝いいたしますね、お姉さまっ」

 私の言いたい事を分かってくれたようで、ナゴタも微笑みながら答えてくれた。

 まだピクニック自体は序盤だけど、次の話をしても別にいいよね?
 次いつやるのって悩むより、次回、なにをやるかって考えてた方が楽しいし。
 

――


 シスターズのみんなは、各々の持参してきた材料を出して調理を始める。

 私はそれを楽しみにしてるので、なるべく見ないようにして会場を離れる。


「う~むぅ…………」
「で、ナジメは何やってるの? 湖なんか見つめて」

 湖畔に佇み、湖面を見つめる幼女。

 その出で立ちは、黄色のメトロ帽子と、紺色のプリーツスカート。
 この風景にはあまりにもミスマッチだなと思いながら声を掛けた。

 そんなナジメは腕を組み、何やら唸っていた。

「お、ねぇねか」
「うん、で、どうしたの? 何か心配事?」
「うむ、食材をどうしようか、少し悩んでおるのじゃ」
「え、悩むって? ナジメは現地調達って言ってなかった? 食材の件は」

 みんながどこ行くかで、盛り上がって中。
 ナジメはそんな事を言っていた。


「うむ、そうだったのじゃが、みんなが良い物を持ってきてそうなので、わしも負けてはいられぬと考え直したのじゃ。元々はここの魚を捕まえようと思っておったのでな」

「あ~、そうなんだ。でもナジメはお仕事してたから仕方ないんじゃない? それに魚だって立派な食材だよ? キューちゃんたちも喜ぶし」

 ナジメを撫でながら、そんな話をする。

「うむ、確かにねぇねの言う通りじゃな。じゃが、わしはもっとみんなが驚くものを用意したいのじゃ。魚も立派な食材だとしても、やはり………… む? 魚?」

 私の話を聞いて、ピタと湖面を見つめたまま固まるナジメ。

「ナジメ?」
「そうじゃ、魚じゃっ! ねぇね、魚じゃぁ~っ!」
「い、いや、魚はわかったけど、それがどうしたの?」

 突然、私を見上げて魚を連呼する幼女。
 何だろう? 急にお魚さんになりたくなったのかな?


ぬしじゃっ!」
「主?」
「この湖にいる、主の魚じゃっ! 大物のっ!」
「あ、ああ、ゴナタが説明してくれた奴?」

 そして、その話を聞いてキューちゃんが心配で急いで駆け付けたんだっけ。


「もしかして、ナジメ、それを?」
「そうじゃ、それをわしが捕まえるのじゃっ! これでわしが一番じゃっ!」

 勝ち誇ったかのように、両手を上げて咆哮する幼女。
 そもそも別に競争してるわけでもないんだけど。

 どうやら、今日ものんびりとは出来なさそうだ。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

処理中です...