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第10蝶 初デートは護衛依頼
白黒スミカの正体とは?
しおりを挟む「それじゃ、そろそろいい時間だから、孤児院に戻ってエーイさんたちを連れてロアジムのところにいこうか? お昼は孤児院で済ませばいいしね」
話が一段落着いたところで、立ち上がりみんなを促す。
いつまでもここを占領してるのもあれだし、時間も迫ってるから。
「ちょっとスミカっ! さっきの偽物の話と、キチンと仲間を紹介してよね?」
「はい、それと黒いスミカさんの事をもう少し詳しく」
「黒いスミカさんの話聞きたいです」
すると、リブを筆頭にマハチとサワラから質問責めに合う。
「あの、お姉さま、あの白い少女もお姉さまだったんですよね? 私の胸を、そのぉ、揉んだり、羨ましく見てたりしてたのも……」
「え? ナゴ姉ちゃんはそんな事されたのかい? ワタシなんかお尻を打たれて気絶しただけだったのになぁっ! いいなぁっ!」
次いで、ナゴタとゴナタも『実態分身2.0(7大罪ver)』の事を聞いてくる。
「ま、先ずは、ナゴタとゴナタの事だけど……」
二人の証言にはあまり触れたくないので、先に姉妹の紹介をする事にする。
そもそもゴナタの、いいなぁの意味も知りたくないし。
リブたちには、ナゴタたちとの出会いと、亡くなった両親と、その要因となった冒険者の事。その影響で二人が変貌した理由。そしてその後に仲間になった事。
更に現在は冒険者の為の訓練を率先して行い、少しずつ認められてる事などを掻い摘んで話した。
「そうなんだ…… 最低な冒険者のせいで二人は荒れてたんだ…… 憧れの両親の活動を侮辱されて、そんな冒険者たちを信じられなくなってさ。で、それをスミカが救って仲間にしたんだ。いや、違うわね? スミカが二人を仲間にする事が、救うって事に繋がるんだ」
私の話を聞いて、つらつらと復唱し、どうやらリブなりに納得したようだ。
最後の言い回しの意味は良く分からないけど。
「リブさん、私たち姉妹の早とちりで、敵意を向け戦った事を謝罪します」
「マハチとサワラ、くん? も、ゴメンなっ! お姉ぇが馬鹿にされたと勘違いして」
ナゴタとゴナタは、二人の過去の話を聞いて沈鬱な面持ちのリブたちに頭を下げる。
「あ、いえ、わたしたちの方こそ、あの時に助けていただいたのに、今日はこんな事になってすいません……」
「恩を仇で返して、すいませんです……」
「………………」
それを聞いて、マハチとサワラが合わせて頭を下げる。
そんな二人の間にいるリブは、我関せずとばかりに口をとがらせて空を見ている。
「…………あれ? でも二人って元々はナゴタとゴナタに憧れたんでしょ? それでコスプレっていうか、女装をするほどまでの推しメンだったんでしょう? なのに何で戦ってたの?」
ふと、疑問に思い聞いてみる。
男の子らしく、好きの裏返しで、ナゴタたちをイジメてた訳じゃないよね?
「そ、それは、リブ姉さんが……」
「リブ姉から、巨乳は悪い奴だと教えられて……」
若干戸惑いながらも、リブをチラと見て、その理由を答える。
「………………」
ああ、そうか。
リブは男の娘から、自分好みの男の子に戻したくて洗脳中だったんだ。
「あのさ、リブ――――」
「却下よっ!」
「えっ!? まだ何も聞いてないんだけどっ!」
「も、黙秘権を行使するわっ!」
「………………」
一応、少しでも事情を聞いておきたかったけど、取り付く島もない。
リブはリブなりに傷付いてはいるんだろう。
マハチとサワラが、過去のナゴタたちの呪縛からもう少しで解放されそうだったのに、近くで面倒を見てきたリブを差し置いて、どこの馬の骨かもわからない、黒い女に盗られちゃうなんてさ。
『まぁ、その馬の骨と言うか、横からかっさらったのは、分身体の私なんだけどね…… 今度は私がリブに狙われたら嫌だなぁ? 二人を男の子に戻すために』
マハチとサワラの間に座るリブをこっそりみる。
「じ~~ …………」
『うっ』
そんなリブも私を見ていた。
不機嫌オーラを全身から噴出させ、口をへの字に曲げながら。
『うひっ~! こ、これは冗談では済まなさそうっ! 絶対私は憎まれてるよっ! この泥棒ネコって恨まれてるよっ! NTRたって思われてるよっ!』
腕を組み、薄目で睨むリブを見て背筋が凍り付く。
そうは言っても、実際は装備のおかげで快適だけど。
「それでは次に、あの白いお姉さまの説明をしてください、お姉さまっ!」
「うん、うんっ!」
待ってましたとばかりに、ナゴタとゴナタがズイと前に出る。
「そうよっ! あのおっかない黒いのは何だったのさっ! 殺されるかと思ったわよっ!」
「あの男らしくて可愛い、黒いスミカさんの事を聞かせてください」
「色々真っ黒のスミカさんの話を所望します」
更に続いて、リブたちも身を乗り出しながら聞いてくる。
正直に言って、みんなの目がマジ過ぎて怖い。
最後のサワラの言い方には少し引っかかるけど。
「あ、あれはね、実は私も扱い慣れてない魔法なんだよっ!」
そう、苦笑いをし、みんなを見渡しながら曖昧に答える。
そもそも使ったのも初めてだし。自分でも効果が良く分からないし。
「そ、そうなんですか? お姉さまでもそんな事があるのですね」
「へえ~、お姉ぇが使いこなせない魔法かぁ~ きっと凄い魔法なんだろうなぁ」
「うん、だから私も上手に説明できないんだよね。もっと練習しないと」
何故か、私の未完成の魔法の説明で感心する二人。
「それでは、あの白いお姉さまには暫く会えないんでしょうか?」
「うん、うんっ! ワタシはきちんと見て見たいなっ!」
「う~ん、元々は分身の魔法だから、見せることは出来るけど…… あ、やっぱり当分は先になるかな? まだ操作にも慣れてないから、もっと練習してからだね。だからリブたちにも説明は出来ないけど勘弁してね」
「は、はい、その時を楽しみにしていますっ!」
「ワタシも待ってるから頑張ってくれよなっ!」
「う、うん」
何でこの姉妹は、そんなに楽しみにしてるの?
「わたしたちは普通のスミカさんでもいいので、お気になさらずに」
「残念だけど、白黒のスミカさんで我慢します」
「まぁ、悪いけど、またいつかね」
こっちはマハチとサワラだけど、微妙に失礼だなと思う。
「そ、そう、それじゃあれは簡単に出没しないのねっ!」
「出没って…… そうだね、すぐには出ないかな?」
最後に、独りだけ嬉しそうなリブに答える。
『う~ん、でも私が思うに、あの実態分身はかなり強力な能力だと思う。制限時間なんて気にならないくらいに、使い道次第ではチートに近いくらいに。なんだけど…… 性質が厄介だよね』
一番の懸念材料なのは、能力を使った時の、あの性格。
副作用と割り切っても、正直危うい。
私はあの時、5人の戦いを目の当たりにして動揺し、ナゴタとゴナタには分身体での説得を、リブたちには本体での制止を試みようと、能力を使用した。
『んだけど、実際は違った……』
ナゴタたちには嫉妬の感情を露に。
リブたちには憤怒の感情を前面に出して迫った。
ナゴタの胸を鷲掴みしたのは、奥底にあった本音の部分。
リブを敵とみなしたのは、ナゴタたちに手を出した事への本音の部分。
ただ性格はあれにしても、本来の目的を失念しないで、行動出来てる事だけは確かだった。
『だと思うんだよね? だからあの実態分身を使うのは気が引けるかも…… 何せ本音と言うか、羨ましいとか、気にくわないとか、素の感情が表に出ちゃうんだもん』
なので、身内の前で軽々しくは使うのは自重しようと思う。
だって、ユーアの前で白スミカになったら、強欲か色欲になって嫌われちゃうかもだから。
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