剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第10蝶 初デートは護衛依頼

決着と覚醒するラブナ

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「ス、スミカっ! この揺れは絶対地震なんかじゃないわっ! きっとまたアイツらが現れたのよっ! 揺れの規模からかなりの数よっ! …………って、それ何さっ!?」

 周囲に鋭く視線を這わせながら、リブが声高に叫ぶ。
 そして私に振り返り、違う意味での驚愕の声に変わる。

「ああ、これね――――」

 私はこの状況を予想済みなので、特に慌てる必要がない。
 なのでそれ用の透明壁スキルを展開し、待ち構える。


「――――これはこうやって使うんだよっ!」


 トンッ!

 ブフォンッ!!


 持っているスキルを、跳躍しながら全力でぶん投げる。
 ギュンと高速回転をしながら弧を描き、波紋の残る場所に向かって飛来する。

「もう一機っ!」

 ブフォンッ!!

 更に同じものを展開し、今度は左側方に投擲する。

 2機の巨大な物体が、波紋の立つ水面に向かって挟み撃ちするように飛んでいく。


「な、何なのよそれはっ!」
「あれはブーメランだよ。狩りとかに使ってなかった?」
「そうじゃないわっ! その大きさの話をしてるのよっ!」
「大きさ? ああ、それは相手に合わせたからだよ」
「相手?」

 水面を、激しく波立たせながら飛んでいくスキルを見てそう教える。


 ドガンッ!

『グガァッ――――!!!!』


「おおっ! 当たったっ! でもまだダメージが低いみたいっ! なら」

 鈍い音と奇声で命中したのは確認できた。
 でも白リザードマンのように姿を現さない。

 なので再度跳躍して、更に2機を左右から巻き込むように投擲する。
 今度は重さを10tずつ付与して、大きさは同じ全長20メートル。


『グオオォォォォッ!!!!』

 ドガンッ! ×2
 バジャンッ!

「はぁっ!? 直撃する前に撃墜された? あの大きさと超重量のスキルを?」

 突如、叩き落されたように、湿原に残るスキルを見て驚く。


「スミ姉っ! あそこに敵がいるのねっ! アタシも援護するわっ!」
「うん。ならなるべく広範囲でお願いっ!」
「私もっ!」

 近くのラブナに指示を出しながらスキルを回収する。
 その隣では、リブも詠唱の準備に入っていた。


「あ、でもそろそろエナジーチョーカーが切れるから、って、もう切れて――――」
「炎よ嵐よ岩よ氷よ、我が瞳に映る全てを切り裂く花となれっ!『百花乱舞』っ!」

 ラブナの唱えた魔法が、スキルが撃墜された付近に広範囲に顕現する。

「ラ、ラブナ、あなた四属性全ての魔法を使えるのっ!? それにその数は何さっ! まるで花びらの巨大竜巻じゃないっ!」

 現れた魔法を目の当たりにして、目を見開き驚愕するリブ。

 リブの説明通りに、色とりどりの花びらが巨大な渦を形成して竜巻に見える。
 しかも密度が濃く、向こう側が見えないがバチバチと内部で火花を上げている。
 四属性全てが高速で混じり合い、中で未知の反応が起きている。


『こ、これは凄いね………… ってか、エナジーチョーカーの効果が切れてるのに、ここまでの魔法が出来るなんて、ラブナの潜在能力って――――』


「………………」

 リブを見る。

 そのリブの首に巻かれているチョーカーは1/4ほどが白くなっている。
 あれ程の威力の魔法を連発した割には消費が少ない。
 これで、この世界の住人には、アイテムの効果が高いことがわかる。

 なので、黒の残り3/4が白く変われば効果が切れて、魔力の供給も止まる。

『はずなんだけど……』

 なのに、ラブナのチョーカーは全てが白く変わり、既に効力を失っているはず。

 だが目の前にあるラブナが唱えた魔法は、以前より格段に強く見える。


『これって、アイテムの効果で魔力を注ぎ過ぎて、無理やりに覚醒しちゃったって事? これがこの先の未来のラブナの力って事?』

 まだ幼い容姿を残しながらもながらも、険しい顔で魔法を操るラブナ。

「わ、私も負けてられないわっ! 炎よ敵を――――」

 
 ズガガガガガガ――――――ッ!!!!

『グギャオォ――――ッ!!!!』


 負けじとリブも魔法を唱えようとした瞬間、
 ラブナの放った魔法の中で咆哮が聞こえる。


「よ、よし、何とか捉えたわっ! スミ姉、あ、後はよろしく頼むわよ――――」

 魔力を使い切ったのか、ラブナがフラフラとしている。
 そして魔法を放った先に目を見やり、笑顔で近づいてくる。

 その視線の先には血まみれの巨大な白リザードマンの姿があった。
 その大きさは、6階建てくらいのアパートに匹敵する。
 もちろん、私の放ったブーメランより巨大なもの。

 ギュッ

「うん、ありがとうラブナ。後はこのお姉ちゃんに任せなさいっ!」
「うん、スミ姉…………」

 ラブナを抱きとめ、片手でスキルを展開する。
 姿が見えればここからは私の出番だ。


「それじゃ、妹が頑張ったから、お姉ちゃんもいいとこ見せないとねっ!」

 巨大白リザードマンを見て、今度は50メートルを超える大剣を展開する。
 その際に、手首の腕輪を見つけて意識を引き締める。


 天に伸びた巨大な大剣を片手で振り下ろす。その重さは30t。
 十分に両断できる大きさと重量だ。


『グオォッ!』

 ズダダッ――

 その大きさを目の当たりにし、避けるべく動き始める白リザードマン。

 ただし、その進路方向は――――


「――――私の敵を焼き尽くす柱となれっ!『炎上炎柱』」

 ――リブが放った巨大な炎の柱によって塞がれていた。


「ナイスだねっ! リブっ!」

 私はそれを確認して、躊躇いなく大剣を叩きつける。


 ズバン――――――ッ!!!!


『ギュ、エッ!?』

 バシャンッ! ×2

 スキルを叩きつけられた白リザードマンは脳天から分かれて左右に倒れ込む。
 そして水飛沫と風圧がこちらまで届く。


「スミ姉………… やっぱり凄いわ」
「スミカ、あなた本当に…………」

「うん、どうやら完全に倒せたね。ちょっと確認したい事があるから、ラブナにはこのアイテムを使ってあげて。それとここで待っててね」

 倒れた白リザードマンと私を見比べている二人にそう告げて歩き出す。
 その理由はもちろん、謎の腕輪の回収。

 それと――――


「ねえ? 近くにいるんでしょ? さっさと姿を現さないとここら一帯を更地にするから。それにあなたが巻き込まれても私は何とも思わないから」

 謎の腕輪を視界に収めながら小声で話す。
 その理由は巨大白リザードマンが現れると同時に、他の存在を感じたからだ。


『あの時、実はもう一つの水音が聞こえたんだよね。白リザードマンの立てた大きな水音と、それ以外の小さな水音が。だからいるとしたら恐らくこの腕輪を――――』

 狙ってくるはず。

 私はそこを狙えばいいだけだ。

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