剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第9蝶 妹の想いと幼女の願い2

姉として

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「さて、カイたちは上手くやってるかな?」

「きっと大丈夫ですよ。真面目な方たちに見えましたから」
「そうだな、服装も身だしなみもきちんとしてたからな」


 ハラミの話題で道中盛り上がった私たちは、マズナさんのお店の『大豆屋工房サリュー』の前までやってくる。

 もうマズナさんとメルウちゃんとの顔合わせを終わっている頃だろう。
 時刻は既に、午後2時を過ぎているのだから。
 この時間だと、お店の方も少しは落ち着いているだろうし。

 なんて、思ってたんだけど


「って、もの凄く混んでるんだけど」
「そうですね」
「かなり人気だなっ!」

 店が見えるところまで来ると、多くの人たちが並んでいるのが目に入る。
 お昼時をとうに過ぎているのに、この状況は一体……。


「ありがとうございま~すっ! またお待ちしておりますっ!」
「「「ありがとうございました~っ!」」」

 そしてそんな人垣の向こうから活気のある声が聞こえる。
 
『…………なんか聞いたことある声なんだけど』


 私は人混みを抜けながらお店の前まで来る。
 ナゴタたちもすんなりと付いてくる。


「………………何やってんの?」

 大豆の商品を街の人に渡しているカイを見付け声を掛ける。
 
「あ、姐さんっ! 姐さんでもきちんと並んでくださらないと……」
「はっ?」

 いきなり注意される私。
 まぁ、やんわりとだけど。

 ってか、カイたちが心配で見に来たのに、この扱いは何だろう?
 親の心子知らずって感じ? まぁ、私の子供ではないけど。


「いやいやっ! 私は買い物に来たわけじゃないからっ! ってなんでカイたちはお店の手伝いしてんの?」

 目の前のカイも含めて、一緒に来た3名のスラムの人たちも、所狭しとセコセコと動き回っている。私が来た事も目に入らないぐらいに忙しそうだ。

「なぜか俺たちが来てから急に忙しくなって、それでマズナさんとメルウさんに―― あっ! ありがとうございましたっ! 姐さん今はこんな感じなので話は後でお願いしますっ!」 

「え?」

 カイはそう言って、忙しそうに次のお客さんの対応を始める。

 その後ろにも列が続いてるので、私は渋々姉妹を連れて店を離れる。
 なんで、私が邪魔者扱いなのだろうと、首を傾げながら。


 そんな折……

「あの新人の従業員の男たちの服装見たか?」
「ああ、なぜかその全員がこの街の守り神の、蝶のマークを付けていたぞ」

『ん? 守り神?』

「って事は、Bシスターズはマズナさんの店を応援してる?」
「きっとそうだわ、なら私たちも並びましょうっ!」

『え?』

「おいっ! 本人たちが来てるぞっ! やはりあのマークは本物だっ!」
「本当だっ! シスターズの3人がいるぞっ!」

 
「はっ? 私たちっ!?」
「お、お姉さま、皆さんがこっちに注目してますっ!」
「うわっ! いきなり見つかったよっ! 気配消してたのにっ!」

 人混みを抜けるところで、大勢の人たちに囲まれる。
 でも興奮したように驚いてるだけで、ちょっかいは出してこない。


 ただこれでわかったことがある。
 売れ時を過ぎたのに、大豆屋工房サリューが繁盛している訳が。


※※


「ごめんね二人とも、突然手伝ってもらって。しかもせっかくのお休みなのに」

 商品をお客さんに手渡しながら両隣の姉妹に謝る。

「気にしないでください。お姉さまと一緒にいられればそれでいいので」
「うん、たまにはこういった事も勉強になるしなっ!」

 そんな謝罪に優しく微笑みを返してくれるナゴタとゴナタ。
 そう言われても、申し訳なく思ってしまう。

 せっかくの休日に仕事をさせるなんてね。


 この大繫盛の理由は、カイたちが着ている服装が原因だった。
 もっと細かく言うと、その服装に付いてる蝶のマークのせいだ。


 ニスマジか、ナジメが頼んで入れたかわからないけど、そのマークのせいで街の人たちが勘違いして騒ぎ出していた。英雄さまとシスターズご用達のお店だと。

 それはカイたちがマズナさんのところを訪れた時から始まり、その勘違いのせいで、急遽カイたちも手伝いに駆り出されたって感じだ。

 そんな訳で、元凶になった私たちも手伝う羽目になり、今に至る。


『ってか、何だってここに来るたびに手伝いさせられるんだろう』

 都合これで3度目だ。
 そして接客の方は2回目。

 ここに立ち寄るたびに、ほぼ手伝っている事になる。
 私はここの従業員でも、雇われているでもないのに。

「はぁ、こんな事だったら、ナゴタとゴナタを透明にして、カイたち置いてこっそり帰っちゃえばよかったよ」

 ため息交じりに独り呟く。

 しかもここの店主は留守だし、一人娘のメルウちゃんは接客中だし。
 お陰で関係者に愚痴る事も出来ない。


「あれ? なんでナゴタとゴナタさんがここで働いているんだ?」
「おおっ! 本当だっ!」

 そんな中、ナゴタとゴナタの顔見知りらしい人が数名やってくる。

「こんにちは冒険者の方ですね、今日はたまたまお手伝いなんです」
「えっとぉ、この前一緒に訓練した人たちだなっ! たくさん買ってってよっ!」

「お手伝い? って事は、今日の訓練は休みなのか?」

「はい。今日の訓練は私たちの代わりに、お姉さまの知り合いの方が行って下さってます。だからお休みなのは私たち姉妹だけですね」
「そうなんだよ。また今度行くから、良かったら参加してくれよなっ!」

「わかった。今度は予定を開けて参加させてもらうよ。それじゃこれ会計な」
「それじゃ二人とも頑張ってなっ!」

「はいっ! ありがとうございました」
「ありがとうなっ! また来てくれよなっ!」

 笑顔で挨拶をしていった人たちは、どうやらナゴタとゴナタの訓練に参加した事がある冒険者だったようだ。

 ここの常連なのか、納豆や味噌などの癖のあるものを購入していった。 


「おっ? また冒険者が来たぞ、ナゴ姉ちゃんっ!」
「うん本当ね。今日は訓練組じゃなかった人たちかしらね」

 さっきの数名の冒険者を見送った後、
 また知り合いの冒険者を見付けて、顔を見合わせて話す二人。

 そんな二人の顔には、以前のような遠慮した様子は見られなかった。


「へぇ~、また知り合いの冒険者なんだ」

 さっきよりも、自然な表情の二人に声を掛ける。


「はいお姉さまっ! 中々見どころがある人たちなんですよ」 
「ワタシたちの方が若くても、文句も言わずに参加してくれるんだよなっ!」

「そう、それは良かったね、本当にさ」 

 嬉しそうに答える二人に、私も笑みを返す。
 以前なら冒険者たちを前に、こんな笑顔は見せなかっただろうから。


「は、はいっ! これもお姉さまのお陰ですっ!」
「うん、本当にありがとうなっ! お姉ぇっ!」

 そんな私の胸の内に気付いたのか、更に満面の笑みで答える二人。
 

『何だかんだで、もう私より人気あるんじゃないかな? これも過去から逃げず真摯に向き合って、今を努力した結果なんだろうね。本当に良かったよ』

 正直、さっきまでは面倒臭くて帰りたかった。ただ働きだし。
 けど、こんな二人が見れるんだったら、もう文句なんていえない。
 

『メンバーの成長や成功を見るのもリーダーとしての義務だかんね…… いいや、そんな堅苦しいもんじゃないよね? だって私は――――』

 そんな二人を自慢に思うし、これからも協力したいと思う。

 それはリーダーなんて、役職や立場の話ではなく、
 妹たちの努力が報われて、単純にお姉ちゃんとして嬉しかったから。


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