剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
上 下
324 / 586
第9蝶 妹の想いと幼女の願い2

裏ボスユーアと新しい家族と

しおりを挟む



「そうかそうか、お主がスミカの妹じゃったか」

「は、はい、そうですっ!」
「そしてアタシもよっ!」

「それにしては、随分と似ておらぬようじゃが。いや、見た目の話ではなく。雰囲気というか、物腰というか」

「そ、そうですか?」
「そ、そう?」

「うむ。お主の姉のスミカは、物怖じしない性格だしのぅ。言いたい事はハッキリと言うし、やりたい事は周りを巻き込んででも行う。いや、こっちは悪い意味ではないのじゃがな」

 ビエ婆さんはここまで話して、ユーアを見る。
 その表情はボウとホウを見る目に似ていた。



 道中、ユーアと合流した私たちは、ビエ婆さんたちを孤児院に案内して、今はみんなで用意した昼食を食べている。

 ただ、カイたち大豆組は、私たちと別れてマズナさんのお店に行っている。
 早く自分たちが関わる仕事を見たかったのと、昼食もそちらで食べてみたいからという理由だった。


 そんな訳で、今は孤児院組のビエ婆さんとニカ姉さん、そしてボウとホウ姉妹で、食卓を囲みながら談笑しているところだ。

 もちろん、これからお世話されるであろう、孤児院の子供たちも一緒だ。


「はいっ! スミカお姉ちゃんには色々と好きな事をして欲しいんですっ!」

 ビエ婆さんの話に戻ってユーアが答える。

「そうねっ! スミ姉は基本放置でいいわよねっ! 正しい事するからっ!」
「確かに、お姉さまはご自身の思うがままに行動する方がいいですね」
「そうだなっ! お姉ぇはそれでみんなを幸せにするからなっ!」

 ユーアに続き、ちょくちょく反応していたラブナが答える。
 その後に、負けじと参加するナゴタとゴナタ。

『う~ん、これって褒められてるの? もしかして厄介払いされてないよね? 関わると面倒だから好きにさせるとか……』

 パーティーのリーダーのはずなのに、単独行動を推奨されるって……


「ふふ、スミカは見た目はあれじゃが、しっかりとみなに姉として認められてる様じゃな。ボウとホウもよく懐いてる様じゃし」

「そうね、スミカちゃんがいない時は、ずっと二人はスミカちゃんの話ばかりしてるわね。何だか長く暮らしている、私より懐かれてちょっと悔しいけど」

 独り疎外感を感じていると、ビエ婆さんとニカ姉さんがこちらに笑顔を向けている。
 どうやら私とボウとホウの姉妹の話題になっているようだ。
  
 そんな姉妹は、私を挟んで夢中に食事をしていたが顔を上げる。
 自分たちに話が移ったのを聞いていたのだろう。

「もぐ、だってスミカ姉ちゃんカッコイイんだもんっ! もぐもぐ」
「そうですね、わたしとボウお姉ちゃんをあっという間に助けてくれたし。 もぐもぐ」

「だから、誰も取らないからお行儀よく食べなよ」

 口に頬張りながら、話す姉妹に注意する。
 褒めてくれるのは嬉しいけど、他の子も真似するからね。


「それで、お主もスミカの妹なのじゃな? ラブナとやら」
「うん、そうよっ! アタシは4番目だけど」
「それで、お主がここの年長のシーラじゃな?」
「は、はいっ! お姉さまたちには今でもお世話になってますっ!」

 ビエ婆さんは今度はラブナとシーラに声を掛ける。
 そんな二人はユーアを挟んで座っている。

 
「そうか、今まではお主らも子供たちの面倒を見ていたのじゃな」

「まあねっ! アタシは最近までここにいたからその延長みたいな感じっ! 何だかんだ良い子ばっかだから手が掛からないしっ!」
「わ、わたしはお姉さま方に憧れて引き継いでいます。みんなも良い子ですし」

「なるほど、確かにみんな行儀よく、礼儀正しいのぅ」

 ビエ婆さんはそう言って、笑顔で食事についている子供たちを見渡す。

 そんな子供たちは、小さな子には大きな子が付き、面倒を見ている。
 フォークやナイフの持ち方や使い方。口元の汚れを拭いてあげたりもしていた。

 それはテーブルマナーの教育と言った、堅苦しい食事ではなく、どっちかっていうと兄や姉が、弟や妹に優しく教えている、そんな暖かい食卓に見えた。

 これがユーアやラブナ、今はシーナが引継ぎ、築いてきたものだ。


「お主らみんなも聞いておろうが、わしたちスラムの人間が近々ここで働かせてもらう。なのでこれからはわしたちと一緒に、子供たちを、そして孤児院を守って行こうぞ」

 子供たちを見渡し、そう公言するビエ婆さん。 
 口調こそ厳しめだけど、柔らかい笑みを浮かべていた。

「はいっ! よろしくお願いいたしますっ! ビエ婆ちゃんとニカお姉さんっ!」
「まぁ、何かあったらアタシに頼りなさいよねっ! 一応一番のお姉さんだから」
「は、はいっ わたしたち共々よろしくお願いいたします」

「「「よろしくお願いいたしま~すっ!!!」」」

 そんなビエ婆さんの発言に、ユーア、ラブナ、シーラ、
 そして子供たちが元気に返事を返す。


「どう? ボウとホウもみんなと仲良くやっていけそう?」

 それを見ながら、両脇の姉妹に聞いてみる。

「え? え~と、うん、大丈夫。多分……」
「わ、わたしも大丈夫です…… きっと……」

 みんなの元気な雰囲気に飲まれたのか、自信なさげなボウとホウ。
 私を挟んで、お互いの顔を見合わせている。

 それはそうだろう。
 まだ会って数時間だし、全員と話したわけでもないし。


「ボウとホウなら、みんなと一緒で良い子だから大丈夫だよ。それに私の妹もいるから、何かあったら頼りなよ。実質、裏でみんなを仕切ってるのはユーアだから」

 両脇の姉妹を撫でながらそう話す。

「そ、そうなのか? だってわたしたちと同じくらいだよなっ!」
「え? ユーアちゃんってラブナさんやシーラさんより年下ですよね?」

 そんなユーアの、裏ボス的存在を聞いて驚く姉妹。
 まぁ、見た目的にはそう思われても仕方ないけど。小っちゃくて可愛いし。


「もう何言ってんの? ユーアはこれでも立派な冒険者だよ」

「へ?」
「あっ!」

「この街を救った時だって、ユーアの活躍があったからだからね? それに従魔のハラミの主人でもあるし。ラブナより1つ下で、シーラよりはお姉さんだからね?」

 ボウとホウの、両方の顔を交互に見ながら追加で説明をする。
 そして以前の話を思い出したかのように固まる姉妹。


「だから何も心配しないでいいからね? ここには二人の今までの生活を責める人もいないから。それとさっきも言ったけどユーアもいるからさ。だからこれからは楽しんで生きていこうよ。その方がビエ婆さんもニカ姉さんも、カイも喜ぶだろうからさ」
 
「うんっ! わかった、スミカ姉ちゃんっ!」
「はい、そうしますっ! スミカお姉さんっ!」

 そう返事をして、食事も途中で子供たちに駆け寄る姉妹。
 さすが子供は行動が早い。


「ボウちゃんと、ホウちゃん、これからよろしくねっ!」
「ボウとホウねっ! 何かあったらアタシを頼りなさいよねっ!」
「あ、あのぉ、わたしにも何でも話してくださいね」

 その姉妹を笑顔で迎え入れる、ユーアと子供たち。


 そしてその場には、一瞬でみんなの笑顔の花が咲く。
 向日葵のような、満面の笑顔が咲き乱れる。


『うん、やっぱり大丈夫だね、ユーアとラブナが面倒見た子供たちだしね』

 ワイワイと笑顔で談笑する子供たちを見て安堵する。
 さすがはユーアたちを慕っている子供たちだと。 


 これでボウとホウも、孤児院の子供たちときっと家族のようになれるだろう。




あとがき

妹のユーアを信用している姉のお話でした。
あ、それとまた澄香の呼び方が増えたので記載しておきます。(女性版)

ユーア=スミカお姉ちゃん
ラブナ=スミ姉
ナゴタ=お姉さま
ゴナタ=お姉ぇ
ナジメ=ねぇね
ボウ=スミカお姉ちゃん
ホウ=スミカお姉さん
ビエ婆さん=スミカ
ニカ姉さん=スミカちゃん

もう種類が限界です。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...