300 / 586
第9蝶 妹の想いと幼女の願い2
SS【剣も魔法も使える少女】は〇世界でも無双するっ!
しおりを挟む※このお話は人物以外本編とは関係ありません。
魔法や武器の名称も、ある人物の想像の物となっています。
300話記念のお話になります。
「『ストーンバレット』50連一斉掃射っ!」
ユーアを狙うゴブリン共を石の魔法で一掃する。
「ありがとうスミカお姉ちゃんっ!」
「こっちは『アイスアロー』乱れ打ちっ!」
ラブナを囲んでいるオーク共を氷の弓で穴だらけにする。
「スミ姉っナイスよっ! 助かったわっ!」
「まだまだ『ファイヤーストーム』『ウインドトルネード』っ! 私たちの前の数多の敵を焼きつくせっ!」
「お、お姉さまっ! す、素敵ですっ!」
「お姉ぇっ! カッコ強いぞっ!」
ナゴタとゴナタを襲っているトロール共が灰と化す。
「ね、ねぇね、こっちも頼むのじゃっ!」
「任せてっ! この聖なる蝶聖剣で一撃だよっ!『エクス、カ〇バァー』っ!!」
ナジメに飛び掛かってきたワイバーン共を一瞬で消滅させる。
そして聖剣から放たれた眩い光の奔流が、他の魔物を飲み込み、私たちの前に光の残留が残ったままの道を作りだす。
「早くっ! みんな私に付いてきてっ!」
私は後ろを振り向き大声で叫び、一番に光の道に走り出す。
「「「はいっ!」」」
その掛け声に反応して、シスターズのみんなも後に続く。
恐らくこれで暫くは時間が稼げるだろう。
※
「みんな大丈夫? 『エリアヒール』」
森の大木の陰に隠れながら、傷を負ったみんなに治癒魔法をかける。
「うん、ありがとうスミカお姉ちゃんっ」
ユーアが汚れた体を拭きながら笑顔で返答する。
「アタシも大丈夫よっ! スミ姉の魔法で助かったから」
水を口に含みながら話すラブナ。
「お姉さま、私たちも問題ありません」
「うんっ! うんっ!」
返事しながらも周囲に視線を這わすナゴタとゴナタ。
「それにしても、ねぇねがあんなに多種多様な魔法を使えるとは思わなかったのじゃ。わしもラブナもとうに追い抜かれておるのじゃ」
最後にそう話すのは、この大陸一番の土の魔法使いナジメ。
「うん、確かにそうだね。正直私もびっくりしたもん。装備を脱いだら魔法が自由自在に扱えるなんてね。もっと前から練習しとくんだったよ」
「それ以外でもお姉さまは、聖剣の所持者にも選ばれましたし、魔法も全属性扱えるしで、もう世界の大賢者を名乗ってもよさそうですね」
「う~ん、そうだね。でもそうなると色々と有名になるから嫌だなぁ。私はみんなの為にこの力を使いたいんだから」
ナゴタの提案に悩みもせずにそう返す。
私のこの力は世界だなんて、会った事もない人々や、知らない誰かを守るためではなく。もっと身近な大切な者を守るためにあるんだって思う。
おおよそチートとも呼ばれそうなこの力。
それは装備を脱いで魔法の真似事をしたら簡単にできたものだった。
無限の魔力と全ての属性を操れる魔法使い。
聖剣も、そしてあらゆる武器も難なく扱える戦士。
それが装備を脱いだ私に備わっていたらしい。
まるで元々の装備が、その強力な力を封印していたかのように――
だが、その力に目覚めると同時に街や大陸を大災害が襲った。
数百年に一度、各地に潜む魔物が一斉に大陸中の生物を捕食する行動。
『モンスターディザスター』
その災害が、私の力に共鳴するかのように起こってしまった。
そうして、みんなを守りながら辿り着いたのが、今いるビワの森だ。
偶然かどうかわからないが、ここはこの世界で私が初めに顕現した場所だ。
「そう言えばお腹減ったね。何か出すから待ってて、て、あれ?」
簡単に摘まめるものを出そうとしたが、アイテムボックスが開かなかった。
「あ、やっぱりスミカお姉ちゃんは、もう……」
ユーアがそれに気付き目を伏せる。
「うん、そうだったね、忘れてたよ。今までの癖だね、きっと」
そんなユーアを撫でながら思い出す。
魔法が使えると同時に、メニュー画面もアイテムボックスも喪失した事を。
「ん~、マジックバッグでも買っておくんだった。収納魔法の中身がまさか無くなるなんて思っても見なかったし、この力に目覚めたらさ」
「はい、どうぞお姉さま。味も食感も悪い物ですが」
空を見上げ、小さく愚痴る私にナゴタが黒いパンを差し出してくれる。
きっと保存がきく食材なんだろう。
「ありがとね、ナゴタ。あ、そうだっ!『リタイム』」
「え? お姉さま、何を?」
ナゴタの掌の上のパンに魔法をかけてみる。
これは癒しの魔法と言うよりは、物の時間を巻き戻す魔法。
すると――――
「あ、温かいです、お姉さまっ!」
ホワホワと湯気が出て、白い焼き立てのパンに変わった。
「よし、成功だねっ! それじゃみんなのパンも出来たてにしちゃうから持ってたら出してねっ! パン以外でも悪くなったものでもいいよっ!」
その魔法の出来栄えを見て、みんなにそう声を掛ける。
「うんっ! ボクはお肉をお願いしますっ!」
「アタシはスープでお願いするわっ! スミカ姉」
「私はパンで結構です、お姉さま」
「ワタシはこの串焼きお願いなっ! お姉ぇ」
「わしは前に捕まえた魚なんじゃが、ねぇねよ」
「うん、私に任せてっ!」
それぞれがマジックバッグから古くなった食材を取り出す。
それを私の万能魔法で出来立てに戻していく。
『剣や魔法が使えても、みんなの役に立てて嬉しいよ』
笑顔で口に運ぶみんなを見て、私も笑顔になった。
※
「ス、スミカお姉ちゃんっ! 起きてっ!」
「ねぇね、起きるのじゃっ!」
「何っ! また魔物が来たのっ!?」
すぐさまユーアとナジメの声に反応して目を覚まし、体を起こす。
二人の今の時間は見張りをしているからだ。
「お姉さまっ!」
「こら、ラブナっ! 早く起きろっ!」
「う~ん、ゴナ姉って、あっ! また来たのアイツらっ!?」
近くに寝ていたナゴタたちもすかさず起きだし、それぞれに武器を手に取る。
魔物の襲来は、一日に約10回ほどだ。
それを3日間、この薄暗い森の中で迎え撃っている。
そんな中で今回のように、見張りを立てて交代で仮眠を取っていた。
だがそれもそろそろ限界だ。
体力もそうだが、気力が持たない。
旅に慣れているナジメも姉妹の表情にも陰りが見られる。
冒険者になったばかりの、ユーアやラブナは恐らく限界が近い。
「う~、もういい加減頭に来たっ! 睡眠不足はユーアの成長にも悪いしっ! 乙女のお肌の天敵なんだよっ! だから私が殲滅させるっ!」
みんなの前に一歩踏み出し、数多の魔物に向かって咆哮し睨みつける。
「え? スミカお姉ちゃんっ?」
「今までは大陸のダメージを心配して魔法を抑えてたけど、もう手加減しないよっ! どうせ私の魔法で治してやるんだからっ! そしてゆっくり寝るんだからっ!」
正直もう我慢の限界だった。
だから全力で殲滅しようと決めた。
ユーアと私の睡眠を妨げる存在を。
だが既に、私たちの四方は魔物だらけだ。
空を飛ぶ数々の飛竜や、地を駆ける大量のウルフ。
草むらにはゴブリンや、離れた所には地竜やオークも見える。
見えるだけでも、その数は万を超えるだろう。
「いくよっ!」
私は空に向かい勢いよく両手を掲げる。
すると上空に、幾何学模様の魔方陣が浮かびあがる。
その大きさは、見える範囲の空を彼方まで覆いつくす程だ。
恐らくこの大陸全ての空を埋め尽くしている。
そして私は全力で魔法を放つ。
ユーアの成長とみんなのお肌を守るために。
「魔物なんて全部滅んじゃえっ!『エク〇プロ――ジョン』っ!!」
ドゴォォォォ――――ンッ!!
私が放った爆炎魔法は、視界に映るもの全てを燃やし尽くし消滅させた。
目の前の景色も空も森も、もちろん魔物も全て業火に包まれ火柱が上がる。
そうして、この大陸からは私たち以外の生物がいなくなった。
ただそれは一瞬の出来事で、この大陸も森もコムケの街の人々も
みんな元通りになった。
それは私のチート魔法で全てを元通りに戻したからだ。
だけど、それを見届けた後、
『あ、さすがにもうダメかも。全力出し切って疲れちゃったし……』
その後、とうとう力を使い果たし、私はゆっくりと眠りについた。
――――――
「ス、スミカお姉ちゃんっ! 起きてっ!」
「何っ! また魔物が来たのっ!?」
体を揺さぶられる感触と、私を呼ぶ声ですぐさま体を起こす。
見張りのユーアの声に危険を感じたからだ。
「へ? 魔物って何? スミカお姉ちゃん」
「え? あれ?」
身構える私とは打って変わって、ユーアはキョトンとしている。
「そうじゃなくて、もうみんな迎えに来てるよ? 今日はピクニックに行く日でしょう。ハラミもお外で待ってるよ」
「あ、ああ、そうだったね。みんな待ってたら寝ちゃったんだっけ」
ユーアの少しだけ怒った声に、我に返り思い出す。
今日は朝からシスターズ全員で息抜きのピクニックに行くんだっけ。
それぞれがご馳走を持ち寄って、湖に泳ぎに行こうって。
「う~~ん、あれ? 何か変な夢を見てたような――――」
何かおかしな夢を見たようなと、欠伸をしながらふと思い出す。
ただその内容は頭に浮かんでこなかった。
「スミカお姉ちゃ~~んっ! 早くぅっ!」
レストエリアの玄関ではユーアが大声で私を呼ぶ。
そんな中、待たせてしまった外のシスターズたちは、
「もう、スミ姉は、今日呼んどいて待たせないでよねっ!」
「ふふ、きっとお姉さまは疲れてるんですよ、ラブナ」
「そうだぞっ! お姉ぇはいつも誰かを救っちゃうんだからなっ!」
「ねぇねっ! 手洗いを貸してなのじゃっ! お腹が痛いのじゃっ!」
それぞれが笑顔でわちゃわちゃと騒いでいる。
お腹を押さえているナジメだけは涙目だけど。
「おっ待たせっ! それじゃレッツゴーっ!」
「「「はいっ!」」」
揃ったところで号令をかけ歩き出す。
そんな私にみんなも笑顔になる。
今日は天気も気温も風も心地いい。
絶好のピクニック日和だ。
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる