剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第9蝶 妹の想いと幼女の願い2

真っ赤なお顔と真っ赤な中身??

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「しっかし、どんどん便利になる装備だよね。最初ゲットした時はハズレ装備かと思ったよ。半径2メートルしか展開できなくて、最大数も1機。しかも他の武器防具も装備不可。これで銃撃戦を戦えってんだから、無茶を通り越して、馬鹿にしてるんだと思ったもん」


 40人以上をぞろぞろと連れて、縦穴になっている洞窟を垂直に上昇していく。

 円形の台座のようなスキルに大人が3人1組で乗っている。
 私に一番近い真下の青年は、訳あって今は一人乗りだけど。


 降りる時は急いでたので分からなかったが、ラスボスが掘ったであろう洞窟内は、殆ど緩やかなストレートな道で、怪我しそうな突起もなく比較的安全だった。

 そんな訳で、先頭でスキルを操りながら装備メニューを見てニヤニヤしている。
 ラスボスの魔物との戦いで、レベルの上がった詳細を見て。


「それでも、そこで燃えるのが私なんだよね。優勝賞品の最新防具がハズレなわけないってのもあったんだけど、縛りプレイっぽくてかなり本気出してレベル上げしてたっけ」

 「うんうん」と一人頷き、過去の思い出に浸る。

「ただ、防具のデザインだけは最初はドン引きしてたな、周りのプレイヤーも私も。 だってSFな世界観なのに違和感あり過ぎだし、実年齢的にも恥ずかしかったからね。アバターを小さくしといて良かったと思ったもん」

 「じゃなきゃ、装備しなかったかも」なんて思ってしまう。
 30過ぎの女性に、ゴスロリチックな蝶のコスプレなんて罰ゲーム過ぎるし。


「あ、あのぉ、姐さん?」

 真下の青年から、おずおずと言った様子で声がかけられる。

「ん、何? どこかぶつけた? それとも傷が痛むとか?」

 青年の様子を見て、心配してそう答える。
 私が振り向くと、青年は顔が赤いまま下を向いてしまったからだ。

「い、いや、あのぉ、そのぉ、真っ赤とは……」

 何かブツブツ言って、直ぐさま顔を伏せてしまうのは『カイ』という青年。

 実はこのカイという、見た目10代半ばの青年は、地下に避難していたビエ婆さんの息子だった。顔見知りの息子という事で、ずっと私の後ろに付いてもらっている。

 それは知り合いの、身内の人がいたから色々聞きやすかったからだ。
 決して私がコミュ障なわけではない。この世界で、ある程度克服したし。

 ただ気になるのが、ビエ婆さんの孫娘のニカさんの方が、絶対に年上な事。

『息子より孫娘が年上って、普通に考えたらおかしいよ。ビエ婆さんはいったい何歳の時にカイを生んだの? かなりの高齢での出産だよね?』


 それと、カイが私への呼び方が変なのは、ここに来るまでに変わっていた。
 カイも含めみんなには、簡単に私の事を説明してから。

 私が冒険者で、コムケの街の英雄って話や、ここに来るまでの経緯。
 そしてみんなのケガを一通り治したことを。

 なのでその青年、カイの態度から、もしかして傷が完治していないのかと思った。

 今回、回復アイテムは一人一個ではなく、無駄が無いように数人で一個を使ってしまったので、効果が足りなかった可能性があったからだ。


「え、何が真っ赤なの? もしかして血が出てるのっ!」


 危機感を煽る言葉に、私は座り込み、真下のカイをまじまじと見る。
 見た感じはどこも血が出ているようにも見えないし、痛がってもない。
 真っ赤だと言う箇所も見当たらない、顔以外は。


「わ、わわわっ! あ、姐さんっ! いい加減気付いてくださいよっ!」

「え、気付くって何? どこも怪我してないように見えるけど、もしかして中身が真っ赤なの? 体の中身が治ってないって事?」

 私は両手をついて、更に真下にいるカイをよく見てみる。
 そうは言っても、さすがに体の中身は見えないけど。


「そ、そうですよ、その中身が真っ赤なんですっ!」

 そう言って、目を片手で覆いながら、もう片方で指差しをする。

「え?」

 その指を差す方向を、追っていくと…………


「ま、ま、まさか…… あ、あ、あああっ!!!!」

 それは私のスカートの中だった。
 カイの指先はまごう事なく、中に装備している、小さな布切れを差していた。


「って、このぉっ!」

 バシュッ

「うわっ! 目が、目がぁっ!」

 私はすぐさま発光を閃光に変える。
 すると目を抑えて叫びながら蹲るカイ。

『も、もう最悪だよっ! だって今の私の態勢って――――』

 カイの真上で座り込み、両手をついて覗き込んで丸出しなのだ。
 しかも今日はユーアとお揃いの、派手な色を着用していた。赤色の。

 それを真下にいるカイは必死に教えてくれていた。
 ずっと私のパンツが見えてる事を。

 ただし、そのタイミングが――――


「ちょ、もう少し早く言ってよねっ! ここまで来るのにずっと会話してたよねっ? なんでもう少しで着きそうなタイミングで言うのよっ! カイが満喫したからって今更言うのは卑怯だよっ!」

「い、いや、それは姐さんが足場を途中で透明にしたからじゃないですかっ! 顔が見えないと上と下で話がしずらいからってっ!」 

「あ」

 そう言えばそうだった。

 結構込み入った話になると思い、白から透明に戻したんだった。
 お互いに顔が見えないと、話もしずらいなと思ったから。


「ぐ、そ、それにしたって、もっと言い方があるでしょっ! 何で色でって、わざわざ報告するのよっ! だなんて紛らわしいんだよっ! だったら無言で指さすとかして欲しかったよっ!」

 本当に、何でこの街の人たちはわざわざ色で報告するのっ! 
 前にも2回ほどあったよね? ワナイ警備兵から怒られた事。


「い、いや、まさか姐さんみたいな子供の容姿で、そんな派手なの履いてる事に驚いてしまって、英雄さまの中身が真っ赤だなんて……」

「……………………」

 しどろもどろになりながら、そう言い訳するカイ。
 
 何? 少女が赤いの履いて背伸びしちゃダメなの?
 今日は妹の幼女だって同じの履いてるよ?


「そ、それと色で言わないと、下のみんなが気付いちゃうと思ったんですよっ! 見えてるって事実に。でもそれももう手遅れですけどね、姐さんが色々と暴露しちゃいましたから」

 何やら気まずそうに視線を逸らすカイ。

「へ?」

 暴露したって何?

「だってさっき姐さん言ってましたよ『何で色でパンツが見えてるって報告するのっ!』とか『真っ赤だなんて紛らわしいっ!』とか、大声で叫んでましたよ」

「あ」

 つい、恥ずかしさと、頭にきて言ってたような気がする。
 いや、確実に口に出している。


 そして地上に戻り、ボウたちが待つ地下室へと急いだ。
 特にこれ以上は何の問題もなく。

 私の二つ名が『蝶の真っ赤な英雄』に変わったこと以外は。

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