剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第9蝶 妹の想いと幼女の願い2

救出とレベルアップ

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『なるほど、これはびっくりするよね。でもちょうど使える能力で助かるよ。これが偶然なのか、仕様なのかわからないけど、さすが最新最強防具って感じ』

 大きくなった背中の羽根は、私の体よりはみ出ていた。今までは正面から見え隠れする程度だったのが、今はどの角度でも目立ってしまう。

 さすがに、本物の蝶のように体と羽根の比率が全く違う訳ではない。
 それでも正面から見ると、4枚の羽根が肩口や腰からかなり覗いて見える。
 せいぜい、本物の黒アゲハ蝶の比率の半分の大きさだ。


『ただ、大きさを変えられるのは良かったよ。これ以上目立つのは嫌だしね』

 普通サイズから、最大まで自由に縮小と拡大が可能。
 なので小さくすれば初期状態の大きさにまで戻せる。


「よし、ちょうどいいから早速使ってみよう。まさにこのタイミングで使う場面だしね。これって実は進化だったりしない?」

 羽根を最大限に広げて試してみる。
 すると羽根の全体から光が溢れ出し、薄暗い洞窟内の全体を照らす。


 今回追加された羽根の効果。


 【発光】

 使用することで発光できる。
 輝度を任意で変えられる。
 羽根の一部、全体、表裏と光の位置も変更可能。
 鱗粉を対象に散布することで、対象も発光できる。
 閃光の様に目くらましとしても使える。


―――――――


「うわっ! む、虫が光りだしたぞっ!」
「に、逃げろぉっ! また見た事もない魔物だぞっ!」
「で、出口はどっちだっ!?」
「あ、あの得体のしれない虫の後ろだぁっ!」


「………………」

 羽根を発光させた瞬間に、また叫びだす街の人々。
 逃げ場所を探してパニックになっている。


「………………あの、私が助けに来たんだけど」

 発光を消して、キャラライトの灯りだけにして声を掛ける。


「う、うわっ! 今度は言葉を話したっ!」
「に、逃げろぉっ! 人語を話す魔物だぞっ!」
「で、出口はどっちだっ!?」
「あ、あの得体のしれない虫の後ろだぁっ!」


「………………」

 話しかけただけなのに、余計に混乱して騒ぎ出す。
 さっきと殆ど似たような事言ってるし。


 バシュッ


「う、うわっ! 目が、眩しいっ!!」
「に、逃げられないっ! め、目がぁっ!」
「で、出口が見えないっ! 目が痛くてぇっ!」
「あ、あの得体のしれない虫が爆発したぞぉっ!?」


「………………」

 今度は閃光を使ってみたけど、反応はあまり変わらなかった。
 何気にこの人たち語彙力が低すぎだよね。


「もう一度言うけど、私はボウって少女に頼まれて助けに来た冒険者だから。虫の魔物は全て片付けたし、あとはここから逃げるだけなんだけどどうする?」

 未だに慌てふためく街の人に声を掛ける。
 どうするも何も、連れて帰るのは決定事項なんだけど。
 せっかく見つけて、治療もしたんだから。


「ボ、ボウだと?」
「そう。妹がホウって言う、双子姉妹の姉の方」


 ボウの名前を出したところで、やっと違う反応を見せる。
 知り合いの名前を聞いて、少し落ち着いたみたいだ。

「それと、ビエ婆さんと、ニカさんってお姉さんも知ってる」
「な、それは本当かっ? それと全て倒したって?」
「うん、本当だよ。ボウって少女が助けを呼びに冒険者ギルドまで来たんだよ。それで私が来たって訳。コムケの街の方にも被害が出る恐れがあったから。それと――――」

 ここで一旦話を止めて、アイテムボックスより、

「これがここを根城にしてた、ボスのハサミ部分。頭は爆散しちゃったからないけど、胴体はきれいに残ってるよ。はい」

 ここに入る前に討伐した、ラスボスの破片を並べる。
 倒した証拠としては、これ以上証明できるものはないだろう。


「「「っ!!!!!!」」」


 目の前に出された魔物の巨大な破片を見て、一瞬で場の空気が固まり、見る見るうちにみんなの顔が恐怖に歪んでいく。


「ふぅ、もう大丈夫だって。キレイに見えて嘘みたいだけど、死んでるんだよ?これで。だから安心していいよ」

 私の身長を軽く超える、ラスボスの破片を視覚化したスキルで叩く。

「ほら? ここまでバラバラにすれば生きていないでしょ?」

 「どう?」てな感じでみんなを見渡す。


「「「………………」」」

 すると次第に視線が破片から離れ始め「コンコン」と叩く私に集まる。


「………………なに?」

 さっきとは違う雰囲気が気になって声を掛ける。


「「「お、お前は一体なにものだぁ――――っ!!」


「い、いや、それはさっき説明したでしょっ、冒険者だって」

 恐怖の表情から一転、一斉に叫びだすみんなに説明する。
 少しだけ言い淀んでしまったのは、異様な剣幕に押されたからだ。


「ち、違うっ! そういう事じゃないぞっ!」

「はぁ、もういいから、さっさとここを離れようよ。上のみんなも心配してるし、ここもいつまで安全かわからないからね」

 発光で、洞窟全体を照らしてそう説明する。
 いい加減説明するのも疲れるし。

 それを聞いたみんなは少しだけ表情を崩す。


「それじゃ、帰りながら説明するからそれでいいよね?」
「あ、ああ、今はそれでいい。あなたの言う通りだから」
「そう、良かったよ。それと私の名前は透水澄香だから。澄香って呼んでいいよ」
「あ、スミカだな? 今度からはそう呼ぶ。で、俺は――――」
「自己紹介も帰りながら話そうよ。移動しながらでも」
「ああ、しかし、ここは地中だろ? 覚えているがかなり深かったぞ」
「それは心配しないで。私が運ぶから」
「運ぶ? スミカがか?」

 私は透明壁スキルを展開して、そのままみんなを乗せる。


「わ、足元から白い板がっ!?」


 大きさは、幅3メートルの円形にする。それを15機。
 それぞれ1機につき3人を乗せて洞窟内地面より浮かす。


「それじゃ、足場はちょっと狭いけど、そこから落ちないでね。ここはまだいいけど、この先の通路はずっと昇りだから」

「あ、ああっ…………」

「「「………………っ」」」

 驚き、まだ何かを言いたそうなみんなを他所に、洞窟内を進んでいく。
 さすがに15機を動かすのは神経を使うので、慎重に進んでいく。

 暫く進むと、真上に昇る縦穴に到着する。
 穴の幅は5メートルを超えるので、暴れなければ問題ない。

 縦穴も羽根の発光で照らして、ゆっくりと昇っていく。


『羽根の効果もそうだけど、スキルレベルが上がったのも良かったよ。展開数が増えなかったら、また戻って来なきゃだったしね』

 慎重に進みながら装備画面を見てニンマリする。


 『これだけでも、ここに来た甲斐があったってものだよっ!』

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