剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第9蝶 妹の想いと幼女の願い2

「美少女魔法使いのスカイツアーズ」へようこそ

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「ふわ~」

 欠伸をしながら待つこと、更に30分。
 しかも5機のスキルは宙に浮いたままだったりする。


 おじ様たちと一緒に空の旅に案内したみんなは、せわしなく動き回り、
 あれは何処?あそこは何?あっちは? などなど。
 年齢も身分も関係なく談笑している。


『それはいいんだけど、何で私は放置されてるの?』


 それは下を見れば明らかだった。
 私は面倒で実態分身に寝たふりさせているからだ。

 なので寝ている私に気遣って誰も声を掛けてこない。

 それでも、たまに「チラ」と見る人もいるし、私の体にはタオルケットが一枚掛けられている。何やら気を使わせているようだった。

 その中でもユーアだけは、時折上空を見上げて
 「にこぉ」と微笑んではくれるけど。


『ん~、これって、もしかして商売に出来ないかな?』


 下界の景色を楽しむみんなの顔を見てそう思った。


――――


 『美少女豊乳魔法使いのスカイツアーズ(仮)』

 1時間5,000円ポッキリ。
 延長は10分につき1,000円。

 案内の女の子をご指名ならば+2,000円。
 みなさまのニーズにお答えできるよう、色々と個性的な女の子をご用意いたしております。

 『AAランク』一番人気のユー〇。
「ボ、ボクを指名してくれてありがとうっ。一生懸命頑張るねっ!」

 『Cランク』毒舌ツンデレ少女ラ〇ナ。
「アタシを指名出来るのは本当はユーアだけだわ! でも今日は特別だからねっ!」

 『Gランク』神速の冷笑ナゴ〇。
「ふふふ。一体どこを見て指名されたのですか? 教えてください」

 『Gランク』剛力の嘲笑ゴ〇タ。
「指名してくれてありがとなっ! 上手にできないけどよろしくなっ!」

 『AAAランク』のじゃロリフラット幼女ナジ〇。
「わしも一緒に楽しむのじゃっ! 指名してくれてありがとなのじゃっ!」

 『???ランク』ペロペロ魔獣ハ〇ミ。
『わうっ!』


 ※ただしおさわりはNGです。
  違反した場合は、即バンジーで強制的に退場していただきます。

 その他軽食もご用意できます。
 持ち込みもOKです。




 みたいな感じで。


――――


「……何て現実逃避はやめよう。いい加減止めないと目的忘れそうだから」


 実態分身が起き上がり「う~ん」と伸びをする。
 それにいち早く気付き、こちらを見るおじ様たち。

 どうやら私の動き次第で、見物の終了する頃合いを見ていたようだった。


「ふわ~、待たせちゃってごめんね。それで景色は堪能できた?」

 私が起きた事により、弛緩した空気が少しだけ引き締まる。
 武器を持つ手に力が入ったのがわかる。

「おうっ! スミカ嬢のお陰で世界への見識が広がった気がするぞっ!」

「昔見た大陸が見えて嬉しかったぞっ!」
「鳥よりも上空を歩いてるなんて初めてじゃっ!」
「街を上から見たのも新鮮で良かったぞっ!」
「わしゃが逝く時も、空を飛ぶんだろうかぁ?」 

 ムツアカに始まって、他の4人のおじ様も感想を述べている。
 最後の杖のおじ様は、何か不吉な事を言っていたけど。

『それにしても、このおじ様たちは寝込みを攻撃する事なかったな』

 それはやろうと思えば出来たはず。
 特に休戦しようとか提案した訳ではないし。

『私だったら迷わなかった。きっとその隙を逃さなかったけどな』

 過去に、どういった戦闘や戦場を経験してきたかは分からない。
 それでも、絶好の機会を見逃すのは悪手だと思う。

 もし、仮に寝込みを襲われたとしても、私は文句を言わない。
 恐らくそれが正しいとわかっているから。

『まぁ、元々ゲームみたいなものって思ってるからなんだけどね。それでも勝負である以上は勝ちにこだわって欲しかったなぁ』

 それぞれに、スキルと相対し始めたおじ様たちを見てそう思う。
 そしてそれを見て、少しだけいたずら心が芽生えてしまう。

「何なら少しだけ刺激を与えといた方が良いかな? 特に杖のおじさんは、いつボケてもおかしくないからね?」

 私はそっとスキルを操作する。


 スゥ――

「な、何だ? 気のせいか回転していないか?」

 無手のおじ様が違和感に気付き、周りを見渡す。

「ま、回ってるぞっ! こ、これは一体どうした事だっ?」

 キョロキョロと上下左右を見渡して、叫ぶ小剣のおじ様。

「うわっ! しかも少しづつ速くなってないか?」
「わ、僅かだが景色の流れが速いぞっ!」

 そして他のおじ様たちも騒ぎ出す。


「スミカ嬢っ! 今度は何をしてるんだっ!」

 それを見て、慌てて声を掛けてくるムツアカ。

「何って、そのまま回転させてるんだよ」
「それはわかるっ! そうではなくて、このままだとどうなるのだっ?」
「回転数を上げてるから遠心力が加わっていって――」
「う、うむ」
「落ちるけど」
「お、落ちる? だとっ!」
「そう。だから早く私に到達してね。じゃないと――」
「じゃ、じゃないと?」
「落ちるから」
「さっきと何も変わらないではないかっ!」
「それはそうだよ。だってそれしか言えないもん」

 呆れた表情のムツアカにウインクしながらそう告げる。
 この新しいゲームの意味を知ってもらう為に。

「う、うむ。わかったのだっ! だったらワシたちは全力を尽くそうっ! みんなを守るために戦ってやろうっ! そして平和を取り戻すのだっ!」

 そう広場に叫び、気合を入れ直すムツアカ。
 それを聞き、他の面々はさっきよりも締まった表情になる。

「それじゃ、今度はこっちからも仕掛けるからもっと頑張ってねっ! 昔みたいにガムシャラに戦って見なよっ!」

 私もムツアカに続いて、おじ様たちに声援を送る。

「「「おおっ――――っ!!!!」」」

 ガギィ ガギィ バキッ ポコ

 それを雄叫びと、力いっぱいスキルに攻撃することで答えるおじ様たち。
 徐々に重さもスピードもキレを増してきている。
 

『ふむふむ。私はキツクなったけど、まだまだおじ様たちは行けそうだね』

 一心不乱に武器を振り上げるおじ様たちを見てそう思った。

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