剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第9蝶 妹の想いと幼女の願い1

がっつくお父さん

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「何なんだお前らはイチイチ突っかかって来て。娘のゴマチが怯えるからそこをどけ。それとも全員叩きのめさないと理解できないのか? その実力差に」

「お、親父、もういいから行こうぜっ!用事も済んだんだし。それにコイツら馬鹿そうに見えてもCランクって噂だぜっ」 

「あ"あ"ックソガキィッ、オレたちが馬鹿だって?」
「あっ!ごめんっ!だって俺たち何もしてないじゃんっ!なのに」
「俺だと? 何だこのガキ、男だったのか? そんなヒラヒラした格好してよぉ」
「う、うるせえっ! 俺は女だっ!」
「がははっ! 尚更似合わねえなぁっ! お前みたいな男女によぉっ!」
「こ、これは親父が選んでくれたんだっ! 馬鹿にするなっ!」
「ゴマチ、もういい。俺がコイツらを黙らせる」

 冒険者ギルドに着いて、いきなりそんな光景を目の当たりにする。

 絡まれている親子はもちろん、アマジとその娘ゴマチ。
 そして体格のいい冒険者の男4人。

 どう見ても険悪な状況だった。
 アマジもゴマチも表情を固くしている。

 どうやら途中から、服装と見た目を馬鹿にされて
 二人とも頭に来ているらしい。

 確かに今日のゴマチは男たちが言う通りに、いつもの軽装な冒険者風の服装ではなく、薄い緑色のフレアスカートに近い服装をしていた。そしてアマジの肩の上から男たちを見下ろしている。ゴマチは気分よく肩車されていた。

 私が知っているアマジだったら、こんな挑発に乗る事はなかった筈。
 どちらか言うと一度噛み締めてから態度に出るそんな感じだった。

 だけど今は、自分の大切な物を貶されて沸点が低くなっているみたいだ。
 私で言う、ユーアを馬鹿にされたように。


「スミカお姉ちゃん、あの人たち見た覚えないですか?」
「うん? どれどれ」

 ユーアの言う、あの人たちとはアマジ親子に絡んでいる4人の男たちの事。

「そう言われれば見た事あるような……でも、どうでもいいか」

 私は一瞬だけ思い出そうと頑張ったけどすぐやめた。
 どうせ思い出しても碌な輩でないのは間違いないし。

「ユーアは一応ここでちょっと待ってて」
「はいっ!」

 私はユーアを置いてアマジ親子に近づいていく。

 その際に男たちが道を塞いでいたので透明鱗粉で……

『って、今は装備してないんだっけ』

 私はそう思いだし、男たちの間をする抜ける様に移動して、アマジと男たち4人の間に割って入る。

「「うおっ! な、何だお前っ!」」

「……スミカか」
「えっ?スミカ姉ちゃんっ!?」

「うん」

 4人の男たちとゴマチは突如現れた私に驚いた様子だったけど、アマジにはそんな様子は見られない。歩いてくるときには感知していたようだ。

「何やってるの? 

 私はにやにやしながらアマジを見上げる。
 なんか私に娘は甘やかさないとか言ってたよね?

 そんな視線に気付いたのだろう
 アマジはバツが悪そうにそっぽを向き話始める。

「それはお前も同じだろう? 何してるって部分は」
「どういう意味?」
「お前のその格好の話だ」

 そう言って、ジロジロと上から下まで視線を這わす。

「いいでしょう? ユーアとお揃いなんだ」

 私はそう伝えて、スカートを軽く摘まみ、見よう見真似でカーテシーで優雅にお辞儀をしてみる。

「はんっ。馬子にも衣裳っと言いたいが、中々サマになってるな」
「そう? 初めてやってみたんだけど。それにしても良く分かったね?」
「お前の気配と魔力を感じたからな。魔力は弱々しいが」

 ジロジロと俯瞰で私を見る様に目を細める。

「ちょ、ちょっといい加減に体ばっかりを見るのやめてよねっ!いくら奥さんがいないからって、がっつき過ぎだよっ! こんなか弱い乙女にっ!」

 私は両腕で体を抱いて、アマジから隠す。

「は、はぁっ!? か弱いだとっ? それにがっつくだとっ? お、お前は相変わらず俺を何だとおもっているんだっ!」
 
 アマジは焦り気味に口早にそう捲し立てる。
 いくら私が若くて魅力的だからって。
 こんなんじゃ、おちおちお洒落も出来ないよ。

「それでルーギルには会えたの?」

 私は最初の話に戻し確認をする。
 恐らくここにいるという事はそういう事だろうと。

「ああ。2階の書斎で会えた」
「そう。良かったね。何か言われた?」
「お前の事と、後はしつこく誘われたな」
「私の事? 誘われたってもしかして?」
「ああ、冒険者の話だ」
「いくら何でもそれは……ったく、あの脳筋ギルド長は」

 私はアマジの話と、ルーギルの顔を思い出して軽く愚痴を言う。

「そうだな。いくら過去の話が俺の勝手な誤解だからと言って、いきなり仲間にはなれんだろう。心の整理もあるし、俺自身がまだまとまってない。昔の事を。だがルーギルは――」

 ここまでアマジの話を聞いていた時に、何やら男たちが騒ぎ出す。

「い、いきなり出てきてお前は何、俺たちを無視してんだよっ!」
「ったく、ここの街のギルドにはムカつくガキばっかだぜっ!」
「お陰でアイツを思い出しちまったぜっ!」
「ああ、そうだなっ!あの頭のイカれた蝶の格好のなっ!」

 無視していた男たちが怒鳴り声をあげて、見て見てアピールしてくる。
 まぁ、それはそうだろう。ずっと相手にしてなかったし。

「あ、蝶だと? どうやらスミカの事――――」
「し、今思い出すからちょっと黙ってて」

 私は繁々と口煩くちうるさい男たちを見る。

 腰に下げてる武器は……

『う~ん、大剣が2人に、槍と斧。だよね? ああっ!』

 私はポンと手を叩くと同時に大きく頷く。
 何となく思い出したからだ。

 この男たちは冒険者ギルドにきた初日に私に絡んできた奴ら。
 ルーギルとも戦い、私とも4人で戦って素手で圧倒した。

 全員が冒険者ランクC。
 4人戦士系の武器。1人ナイフ。
 5人組。

 確かこんな感じの組み合わせだった。

『多分これで間違いないけど……』

 でも何か一人足りない。
 投げナイフの細い体躯の男が。
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