214 / 586
第9蝶 妹の想いと幼女の願い1
真似っ娘少女スミカ
しおりを挟む『なるほどね、あらゆる武器を扱えるって訳ね――』
私はそれを聞いてちょっとだけワクワクした。
だって面白そうでしょ?
そんな戦い方出来る人物に会うなんて。
一瞬、アイテムポーチから無数の武器を出すのは反則じゃない?なんて思ったけど、そもそも私の装備だって似たようなもの。
ある意味無限に武器を生成出来る。
もちろん形を変えて自由自在に作成できるし、
重さも大きさも範囲内なら自在に変えられる。
そして武器、防具、トラップや足場にも使えるし
更に範囲内ならどこでも展開できる。
こんなチート装備でアマジを乏しめる事なんてできない。
元々ルールでもそんなこと決めてなかったから実際は反則でもないだろうし。
なんて思ってもみたり。
「それは俺の武器を真似て魔法で作った物か。かなりみすぼらしいが」
アマジは私のスキル武器を見てそう感想を漏らす。
確かに私の真似た双剣は何の凹凸もましてや装飾など一切ない。
ただ単にちょっと薄く変形させた三角柱を繋いでるだけの物。
「これもさっき言ったでしょ?私は魔法に関しては未熟だって。どっちかっていうと魔法よりも近接戦闘が得意な肉体派だからね」
そう言って私は「むんっ」と両腕を上げて握りこぶしを作る。
知らず知らずに口元にも力が入ってしまう。
「どうだ。これが私の――――」
私は更にポーズを変えて見せつけて行く。
さぁ慄くがいいっ!
私の素晴らしい肉体美を目の当たりにしてっ!!
フロント・ダブル・バイセップス
「ふんっ」
ラットスプレッド・フロント
「どりゃっ」
サイドチェスト
「ぬふっ」
モスト・マスキュラー
「最後っ!」
と威嚇するように様に次々とポージングを決めていく。
これで少しでも委縮してくれれば私の勝ち。
「はぁ………………色々残念だな、お前は」
それを見て一言だけアマジは感想を漏らす。
『………………イラッ』
何だよ色々残念ってっ!
それとどこ見て溜息付いてるの!?
まぁそれでも――――
「スミカお姉ちゃんっ!なんか強そうだよっ!!」
「お姉さま可愛いですぅっ!その踊りっ!」
「お姉ぇっ!ワタシにも後で教えてくれよその構えっ!」
一部の妹達には好評だった。
まぁ姉妹が言う踊りでも構えでもないけどね。
それとユーアは多分雰囲気で言っているっぽい。
なんかって言ってるし。
私は黄色い声を上げるユーアたちからアマジに視線を戻して、
「じゃ、どちらが武器を使いこなせてるかハッキリさせようか?言うほど私も得意じゃないけど、あなたよりはきっとマシだからね」
私はポージングを止めて前面で双剣を構える。
アマジが何か呆れた雰囲気を醸し出してるけど気にしない。
「ふん、お前のその若さで俺より武器を扱えるとは到底思えんがな。まぁお前のその自信を俺が打ち砕いてや――」
「よし、次はこっちからいくよっ」
私はアマジが言い終わる前に口を挟む。
「ぬっ!」
そして私は重心を下げて地面を滑るように疾走する。
「よっ!」
ブンッ ×2
「ふんっ」
同時に左右から振り下ろした双剣のスキルを、
アマジは同じように左右の双剣で受け止め防ぐ。
私は両手に衝撃を感じた瞬間にスッと力を後ろに逃がす。
「ッ!?」
それにより体は前のめりにバランスを崩すが、アマジはその態勢を利用して咄嗟に前蹴りを私に放つ。うん、いい判断だ。
ブンッ!
「っと」
私はそれを体に掠らせながらグルンっとアマジの懐の中で回転し、その遠心力で肘鉄を脇腹に打ち込む。
「ぐぅっ!」
アマジは避けきれずに短い唸り声をあげて後方に跳躍する。
でも私の攻撃の半分以上は威力を消されてしまったようだ。
その手応えから、後ろに跳躍して散らされてしまっていたとわかる。
「まだまだいくよっ」
「はっ!」
私は今度は2メートル程上に跳躍し、双剣のスキルをギュンと回転しながらアマジに打ち込む。
ガギィンッ!
が、それもやすやすとアマジに受け止められる。
『まぁ、防御させるように誘ったんだけどね』
私はアマジに空中で受け止められながらも更に体ごと縦に回転をし、そしてもう1本のスキルを叩きつける。
ブウンッ
ガギンッ!
「くっ!」
更にもう1回転
ギュルンッ!
ガギンッ!
「ぐっ!!」
アマジはそれでも双剣を盾に被弾を防ぐ。
それでも私は構わず体の全身を捻り回転を上げていく。
「んんんんっ!!」
ギュルルルルンッ―――――!
ガガガガが、ギギギギギィ―ンッ!
「ぬ、ぐぐぐっ!」
「そぉれっ!」
私は掛け声とともに2本同時に振り上げ、
アマジの双剣に遠心力と体重も乗せて思いっきり叩きつける。
ブォンッ!!
ガガギィンッ!!
「ぐぐっ!」
アマジはそれをも受け止めるが衝撃を逃しきれずに片膝をつく。
私はスキルを叩きつけた衝撃を利用してそのまま後方に跳躍する。
そして今度はアマジの両足目掛けてスキルを振るう。
「んっ」
シュッ
「ちっ!」
ガゴォッ
とアマジは私の接近に気付き、振り返ると同時に防御する。
手にしていたのはさっきまでの双剣ではなかった。
『ふ~ん、今度はそうきたか』
アマジは右手は大剣で、左手には大盾を持っていた。
またアイテムポーチで装備の変更をしたのだろう。
「なら、私も真似しないとね」
私は双剣モドキを消してアマジと同じようにスキルを装備する。
右手には
細長い四角柱+短い四角柱。
で、大剣もどき。
左手には
私を隠すほどの薄広い四角柱。
で、大盾もどきに。
「どう今度は中々上手くできたでしょう?」
私はブンブンと大剣と大盾を振り上げアマジの反応を見る。
上手くとは言ってもブロックを継ぎ足したような武骨なものだけど。
「ち、くだらない。それでもまだ真似たつもりなのか?」
と相変わらず苦虫を嚙み潰したような顔で返答する。
「そうだけど。外見以外はほとんど一緒でしょ?武器の特性だけ見れば」
「はん、特性云々より魔力が切れれば消滅するんだろ?その武器は。ならそんなものは武器とは言えん。だから俺が破壊して消してやる」
アマジはそう言い武器を構え若干低く姿勢を落とす。
『うん?いきなり雰囲気が変わった』
その目は一挙手一投足を見逃さないように油断なく私を視界に捉えている。
それはまるでネコ科の動物が獲物を狙うかのようなそんなイメージ。
一歩でも動けば即座に襲い掛かってくるような身の危険を感じる程の。
『……う~ん、なんか向こうから仕掛けるつもりがないみたい。ならまた私から仕掛けてみるか。睨み合っててもキリないしね』
私はそう決めて盾を前面に出しグッと後ろ脚に力を溜める。
そして――
タッ!
私は力を開放して一足飛びでアマジとの距離を一瞬で詰める。
そしてそのままシールドバッシュの要領で大盾をアマジに叩きつける。
ガインッ!!
ギュン――――
「えっ?」
盾同士が衝突すると同時に、私は森に向けて大きく弾き飛ばされていた。
スキルを持つ手にはビリビリと強い痺れが残っていた。
『え、弾かれた!?』
まさか今の全力で打ち負けるとは正直予想外だった。
「っ!?」
そしてアマジの姿も消えていた。
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる