剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第9蝶 妹の想いと幼女の願い1

双子姉妹の願いとお願い

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※前半スミカ視点。
 後半ナゴタ視点。になります。



「お、お姉さまお願いがありますっ!」
「うん、うんっ!!」

「へ?な、何お願いってっ?」

 突然声を荒げた姉妹の二人に驚きながら聞き返す。
 お祈りポーズでムギュと形を変える、大きな物体は気にしない。

 気にしないったら、気にしない。

「あ、あの私たち姉妹が勝ったら……」
「うん、お姉ぇワタシたちが勝ったら………………」

「うん…………」

 この流れって、何かして欲しいって事だよね?きっと。

 姉妹の二人もある意味、私に巻き込まれた形で、危険な戦いに身を投じる事になる。なら一つくらい何かをしてあげる事なんて些細な事。だから私は。

「うん、私にできる事だったらいいよ。それだけの事してもらうんだもん」

 と、姉妹の目を見て笑顔で答える。
 そんな姉妹の目は、若干潤んでる気がしないわけでもない。

「いえ、お姉さまに何かしてもらうって事ではなく……」
「違うの?ご褒美とかそういった事じゃなく?」

 へ?それじゃお願いっていう単語はどこから?
 何か言い間違った?それとも私の聞き違い?

「違うんだお姉ぇっ!ワタシたちはお姉ぇを……」
「う、うん」
「私たちはお姉さまを……」
「う、うん」

 と今度はゴナタもナゴタも同じように言葉尻を濁して口を開く。

『…………』 
 何となく二人とも顔が赤いような……

 そんな二人はすぅ~と息を吸い込んだと思ったら、


「お、お姉さまを抱かせてくださいっ!!」
「お、お姉ぇを抱かせてくれっ!!」

 なんて、とんでもない事を言いだした。


「はっ? え、えええええええっっっっ!!!!」

「抱くって抱っこの事?」
「はぁっ?ナゴ師匠たちはいきなり何言ってんのよっ!!」
「お、お主たち姉妹は、何を唐突にっ!!そ、そんな事をっ!」
「お、女同士でぇ~~~~~~っ!!」

 二人の突然の告白に、ユーアは首を傾げ、ラブナとナジメは顔を赤くして大慌て。ゴマチは頬を染めて俯いてしまった。

 そしな爆弾を投下した当の二人は「きゃぁっ言っちゃったっ!」みたいに、顔を両手で隠し座り込んでしまった。

『な、な、何で何がこうなったらっ!?』

 そんな二人を見て、何か良い言い訳がないか、やんわりと断る方法がないか、沸騰する頭で必死に考える――――が、


「おい、さっさと次の奴を出せ。どうせ姉妹だろうがな」

 と不機嫌を前面に出したアマジから声を掛けられる。

「ふへっ!?わ、わかったよっ!すぐ行くよっ!」
「ふん、だったら早くしろ。相変わらず忌々しい奴め」

 私たちを一瞥して仲間の元に戻って行く。

 それを聞いてナゴタとゴナタは、

「そ、それじゃ私たち言ってきますねっ!」
「お姉ぇっ!さっきの約束お願いだよっ!」

「あ、ちょ、ちょっとぉっ!」

 私はそんな二人を呼び止めようと手を伸ばすが、二人は「うふふ」「あはは」言いながら、そそくさと早足で広場に行ってしまった。

「スミカお姉ちゃんっ!」

 手を伸ばしたまま固まっている私にユーアが声を掛けて来る。

「な、なにっ?ユーアっ」

 私は動悸を抑えながらユーアに振り返る。

「良かったねっ!抱っこして貰えるよっ!」

 とにこにこしながら何故かユーアが喜んでいた。

「う、うん、そうだねユーア」

 私はユーアの頭に優しく手を置きながら上ずった声で答える。

「うんそうだよっ!スミカお姉ちゃんっ!」

『………………』

 ユーア、あなたが思っている事とはきっと違うんだよ?
 ユーアはまだ子供だから知らないと思うけどね……
 くんずほぐれつなんだよ?百合百合な展開かもよ?

 なんて純粋な目のユーアに言えるはずもなく……

「あはははっ、そうだね…………」
 私はただ乾いた笑いで返すのが精いっぱいだった。


 私、どうなるんだろぅ……



※※※※※ナゴタ視点


「あははっ!お姉ぇ驚いた顔してたなっ!」
「うふふ、そうね。でもそれぐらいしてあげたいからね。お姉さまには」
「うんっ!ワタシもそう思ってたんだっ!お姉ぇにもってなっ!」
「それなら、私たちもナジメみたく勝たないとね」
「うん、そうだなっ! 全ては――――」
「そうね、全ては――――」

「「お姉ぇさまのためにっ!!」


 私たち姉妹は模擬戦の武器をそれぞれ選んで、
 森の広場中央に歩みを進める。

 アマジたちが今日用意した数々の模擬専用の武器の中には、さすがに私たちと同じ武器はなかった。本来なら私が長尺の両剣。ゴナタは超重量のハンマー。

 なので、

 私は普通の長さの『槍』を
 ゴナタは通常の重量の『ハンマー』を

 それぞれ手にし、薄暗い森の中央に陣取り相手を待つ。

『相手は単独でBランク、二人でAランク相当の手練れ。それと私たちと同じ双子ですし、どのような戦いをするかちょっと楽しみですね。それでも負けるわけにはいかないですが』

 私は若干緊張しながらも、そこに愉悦を感じずにはいられなかった。
 自然と口元が緩んでいくのがわかる。
 体の奥底から熱が上がってくるのを感じる。

 早く――

 私は隣の最愛の妹ゴナタを見る。

 早くっ――

「楽しみだなっ!ナゴ姉ちゃんっ!!」

 ゴナタは分かりやすい笑顔を浮かべている。
 妹は色々と素直で純粋で正直だ。

 ――戦いたい。

「そうねっ」

 そして私たち二人は憧れのあの方に――もっと

 もっと近づきたい。
 もっと近くに感じたい。
 もっといろいろ知りたい
 もっと色々教えて欲しい。
 もっと頼って欲しい。
 もっとそばに来て欲しい。

 もっと私たちが受けた恩を返したい。

 その為に、私たち姉妹は存在している。
 私たちはあの方に出会って、そう生まれ変わった。

 だからもっと――――

 あの人の笑顔がみたいっ!

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