187 / 586
第9蝶 妹の想いと幼女の願い1
誘拐犯は双子姉妹?
しおりを挟む※この物語は作者の創作の世界になります。
他の作品の設定や、現実の倫理観とは
異なる場合がありますので予めご了承ください。
※前半はスミカ視点
後半はゴナタ(初)視点 になっています。
せっかく来てもらったけど、メルウちゃんには帰って貰った。
安全で言えばレストエリア内が安全なのだが中に入れる訳にはいかない。
それだと何も知らないメルウちゃんを巻き込む事になる。
この場合は何も知らないのが一番なのだ。
そして私は一人外に出る。
メルウちゃんの情報の真偽を確かめる為に。
ユーア達には直ぐに戻ると声を掛けて。
『ん、さすがにもう真っ暗だね。時間的には晩ごはんを食べ終わった頃かな?』
私は透明鱗粉を纏いながらスキルを足場に空中を駆ける。
一般の住宅街を見下ろしながら。
「そう言えば、慌てて出てきちゃったけど、もっとメルウちゃんに話聞いておくんだった。偉そうなと怖そうな人ってしか特徴聞いてなかったよ」
人混みが少なくなった街の通りを探しながらふと気づく。
こんな情報だけで出てきても見つかるのに時間が掛かりそう。
「うん?あれは――――」
私は何処かで聞いた声に速度を落とし気配を消し、念のために少し上昇する。
そこには――――
※※※※
ワタシたち姉妹は、もう暗くなった住宅街の通りを歩いている。
お姉ぇたちの待っている家を目指して。
お姉ぇに紹介して貰ったお店『黒蝶姉妹商店』を出て、その後は冒険者ギルドに寄った帰り道だ。
紹介して貰ったお店の、店主のニスマジという人と働いてる人たちは、正直変な人たちだったけど、ワタシたちにも親切に説明してくれたり、シスターズと言うことで割引もしてくれたいいお店だった。
それに冒険者の人たちもちょっとぎこちなかったけど、ワタシとナゴ姉ちゃんに話しかけてくれたり、色々な事も聞かれた。
そして冒険者の人たちとは、訓練で少し汗を流してもっと仲良くなれた。
お姉ぇと、みんなには本当に感謝している。
ワタシとナゴ姉ちゃんを救ってくれた事を。
まぁ、途中からルーギルとクレハンが訓練に参加してたけど。
「また来ようなナゴ姉ちゃんっ!」
ワタシはマジックバッグから買い物の袋を出してナゴ姉ちゃんに話しかけた。
その袋の中には、ニスマジのお店で買った物が入っている。
「そうね、価格もそうだったけど品揃えも良かったし。ここの常連になってもいいかしらね。それに――――」
と、ナゴ姉ちゃんは買い物の袋の口を広げ、
「それにお姉さまの身に着けてる物もここなら多いでしょうからね?」
そう言ってナゴ姉ちゃんは、色とりどりの下着をそっと見せて仕舞った。
それは、白や黒や赤や縞々、はたまた何かの動物が縫い付けてある可愛いものや、少し高級そうな装飾があるものなど、たくさんの種類のパンツたちだった。
「そう言えば、ナゴ姉ちゃん、お姉ぇが買い物してるのずっと見てたもんなっ!」
「ふふ、バレちゃった?ゴナちゃん」
「うん、ワタシも気になって見てたからなっ」
「実は私もゴナちゃんが気にしてたの知ってたんだけどね」
そう、ナゴ姉ちゃんとワタシはお姉ぇがサイズの違うコーナーで手に取ってたのを覗いていた。真剣な表情のお姉ぇはそれぞれ2枚づつ買っていたのを。
『もう一枚はきっとユーアちゃんのなんだろうな。って事はユーアちゃんはいつもお姉ぇと一緒のを身につけてるって事かな?』
それはそれで色々羨ましいけど、お揃でといったらワタシたちも一緒だ。
色違いではあるけど。
それに、お姉ぇは下に履くものはたくさん買っていたけど、上に身に着ける下着は、今回一枚も買わなかった。
『だから、ワタシたちとお揃いなのはパンツだけなんだよなっ。今度お姉ぇと来たらよく見てみよう。うん、どうせなら上の下着もお揃いにしたいからなっ!』
ワタシはそんな事を考えながら、ふと足を止める。
「ナゴ姉ちゃん?」
「うん、分かってる。私たちに何か用みたいね」
声を掛けたナゴ姉ちゃんも頷き足を止める。
数人の足音がそれと一緒に消える。
どうやら追って来てたのは間違いなさそうだな。
ザザザッ
と、ワタシたち姉妹を4人の男たちが囲む。
どうやら道を尋ねたいとかそういった事ではないみたいだ。
「お前らナゴタゴナタ姉妹に聞きたいことがある」
「そうだけど。あなたたちは?」
「そうだぞ」
と、先頭の男が一番前に出てそう聞いてくる。
これだけ聞けば特に何も警戒はしない。
例えワタシたち姉妹の事を知っていても、過去の事や、昨日の模擬戦の件もあるからわざわざ驚くことでもない。
けれど、
「お前らみたいな冒険者がいるから、親父や娘が真似をするんだ」
「………………っ」
「………………?」
「教養も礼儀も何もなく、ただ野蛮に魔物を倒すだけしか能のないお前たち冒険者が、俺は嫌いなんだよ」
「はぁ?突然あなたは何を言って、礼儀で言ったらあなただって――――」
「ああ、すまんな。冒険者と聞くとイラつくあいつの顔がチラついてな。みんな同じに見えてくるんだよ俺には。碌に仕事も出来ないくせに地位だけを与えられやがって」
そう言ってその男と、数人の男たちは鋭い眼光をワタシたちに向ける。
「…………………」
「…………………」
元々険悪な雰囲気だったけど、その男の言葉で触発されたように、他の男たちの雰囲気が更に悪くなる。
ワタシの考えだと、どうやら――――
「お前たちは私たちが嫌いなんだなっ」
「そうね、私たちって言うより、冒険者そのものを嫌悪してますね」
「え、そうなのか?ナゴ姉ちゃん?」
「そうでしょ。どう見ても」
「さ、さすがはナゴ姉ちゃんだなっ!ワタシ勘違いしちゃったよっ」
と、ワタシはナゴ姉ちゃんの賢さに感心する。
お姉ぇと一緒で頭がいいなって。
「クククッ、やはり冒険者は頭が足らないようだな。頭を使うのは魔物を狩る時と、金勘定の時ぐらいか。まぁいい、これ以上お前たちと話をしてると俺の品が下がる。それよりも――」
ワタシたちのやり取りを聞いた男は口元を微かに歪める。
それはワタシたちを挑発している様にも見える。
「それよりもお前たちだろう?」
「何がですか?」
「何がだいっ?」
「俺の娘をさらったっていう、物好きな女冒険者は」
その男の言葉に反応して、ワタシたちを囲む男たちの輪が更に小さくなった。
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる