185 / 586
第9蝶 妹の想いと幼女の願い1
起きてから落ちる少女
しおりを挟む※この物語は作者の創作の世界になります。
他の作品の設定や、現実の倫理観とは
異なる場合がありますので予めご了承ください。
「ゴマチちゃんて11歳なんだねっ!?ボクより大きいからお姉ちゃんかなって思ってたのに、ボクがお姉ちゃんなんだねっ!」
「い、いや、1つ上でそんなに威張るなよなっ!」
ユーアはゴマチと呼ぶ女の子と随分と仲良くなっていた。
そして今はお互いの年齢の話になっている。
『ふふふ。まぁ、それは何となくわかってたけどね。この子は年下だって』
ユーアは年齢の割に一般的な12歳より小さい。
それは9歳のメルウちゃんが、ユーアとほぼ変わらない事からそう思っていた。
なので、ユーアより少し大きいゴマチはユーアより年下だろうと。
しかも一つ年上のラブナと比べても明らかだった。
色々なところの出っ張りが。ね。
『それにしても、随分と打ち解けてるね。さすがユーアだねっ!』
ユーアはゴマチと言う少女とも少しの会話で仲良くなっていた。
それはユーアの可愛らしい容姿もそうだが、屈託のない無垢な笑顔と、ころころと変わる無邪気な表情。それと全く含みを感じせない話し方。
そう言った要素が合わさった結果、ユーアは色んな人に好かれている。
身近だと、ラブナも然り、ナゴタとゴナタもナジメにも好かれている。
『その中に、もちろん私も入っているけどね。それと――――』
それとルーギルが面倒見ている、外に集落を作って暮らしている『スバ』達や、黒蝶姉妹商店のニスマジに、トロノ精肉店のログマさんカジカさん夫妻。あとはよく分からない謎の『おじちゃん』。
『ああ、そう言えばハラミもユーアの事を大好きだった。魔物にも好かれるって、もう一種の才能じゃない?』
それに冒険者たちや繁華街の人たちにも人気があり、時たま食べ物を貰って喜んでいる。私と違ってコミュ力が非常に高い妹だった。
敵とか味方とか、人間と魔物とか、一般人とか貴族とか、そう言った立場の違い何て、ユーアには些細な事だなって、
私は楽しそうに話すユーアを見てそう思った
『私には一生真似できないな……』
※※※
「は、はぁ?こ、こいつがお姉ちゃんっ!?」
「うん、ボクの自慢のお姉ちゃんなんだっ!」
「な、何で、背中に羽根生えてるんだっ!」
「きれいだよねっ!カッコイイよねっ?」
「………………」
何やら話が盛り上がっているようで二人の話題が私に移っていた。
特に口を出す内容でもないので、今まで通り私は黙って聞きに入る。
「カ、カッコいいかっ?これがっ!!」
「うん、ボクはそう思うよっ!」
「うっ、まぁそれはそれでいいよ。でも本当にお姉ちゃんなのか?」
「え、何で?」
「な、何でって全然似てないし、それにお姉ちゃんっぽくないだろっ?」
「どこが?」
「どこがって、そりゃあ――」
『………………』
いつの間にかゴマチは私への恐怖より、ユーアとの会話が楽しくなったみたいで、チラチラと私を見ている。悲鳴を上げてたさっきと違い随分と慣れてきたようだ。
『そうそう、その調子で私への誤解を解いてちょうだいね、ユーア』
なんて、他力本願でユーアに頼ってみる。
「あまりお前と背丈変わらないじゃんっ!」
「え、スミカお姉ちゃんの方が大きいよちょっとだけど。それに大人だし」
「へっ?大人って事はお前より3つは上だって事だぞっ!?」
「うん、そうだってスミカお姉ちゃん言ってたもん」
「う、嘘だろ……」
『………………』
私の事に話が移ったのはいいが、何やら嫌な流れになってる気がする……
「嘘じゃないよ?スミカお姉ちゃんは嘘ついたことないもんっ!」
「だ、だってさ、15歳だろ成人だろ?俺の知ってる姉ちゃんはもっと」
「もっと?」
「もっと背が大きかったぞっ!それにもっと」
「もっと?」
「色々大きかったっ!」
「色々って何?」
『………………』
色々って何?
「全体的にもそうだけど、あ、足とか、尻とかだよっ!」
「足とお尻?」
『………………』
ああ、それは仕方ないね。私アバターだし。本物じゃないし。
わざと小さくしてるし。ある理由で。
「ええ、別に大きくなくてもいいよぉ~っ! スミカお姉ちゃんはスミカお姉ちゃんだし、今のままが一番カッコイイしきれいだもんっ!」
「あ、でもそれ以外でも――――」
『………………♪』
おおっ!さすがユーア良い事いうねっ!
私はユーアにそう思われてたんだっ!
色々小さいなんて些細な事。
ユーアはそれを分かっている。
女は見た目じゃないって事を。
私は「うんうん」と内心で頷く。
さすが最愛の妹だ。
「でもな~、俺が成人してもあれだったら正直落ち込むぞっ!」
『…………っ!』
「でも、まだ4年あるから大丈夫かな少し出てきたからなっ!あ、そう言えば似てるとこあったぞっ!」
「え、どこなの?スミカお姉ちゃんと似てるとこって?」
『ピクッ』
「お前と同じで急斜面じゃんっ!断崖絶壁じゃんっ!」
「きゅうしゃめんとぜっぺきが同じなの?それは何なの?」
『ピキッ』
「それは、胸だな」
「へ、お胸なの?」
『プチッ』
「そうだ、そこだけは瓜二…………ガクッ」
「へ、ゴマチちゃんっ!?」
ゴマチは突然意識を失い前のめりに倒れ込む。
それをユーアが慌てて支えそっと横たえる。
ゴマチの倒れ方から、何者かに後方から攻撃を受けたようだ。
「っ!?」
だが、ゴマチの後ろの空間には誰もいないし、気配も感じない。
『も、もしかしたら新たな手練れが現れた?でも雇い主を攻撃するって事は、何かゴマチはヤバい事を言った可能性が?それで口封じに依頼人をっ?って事はそれを聞いた私たちもっ!?』
私はユーアと気を失ったゴマチを透明スキルで覆う。
一先ずはこれで二人とも安全だ。
『よし、後は何処にいるか見つけ出して――――』
「探さなくても大丈夫だよ?スミカおねえちゃん」
「っ!!!!」
「だって、ゴマチちゃんの後ろにいるもん?」
「………………」
「こっちは分身だよね?スミカお姉ちゃん」
「!!!!っ」
「ゴマチちゃんの後ろにいるのが本物だよね?スミカお姉ちゃん」
「~~~~~~っ」
と、ユーアの視線はゴマチの後ろの何もない空間に向いていた。
ユーアの前に立ち上がっている私を無視して。
『…………もしかして、また』
声に出してた?しかもユーアに見抜かれた?
『………………』
私はもう諦めて透明鱗粉を解除し、実体分身も一緒に消滅させる。
そこには――――
『うっ』
今まで見た事のない、まるで全ての表情を無くしたかのようなユーアがいた。
「ユ、ユーアちょっとお姉ちゃんの話を聞いてっ!」
「――――――――」
私はそんな能面のユーアに話を聞いてもらおうと、慌てて口を開く。
トトトトトッ
「んんんっ!、だ、誰か来たみたいだよユーアっ!」
「――――――――」
ガララッ
「ユーアただいまっ!少し子供達の世話してたら遅くなっちゃったっ!それとナジメと一緒に帰って来たわよっ!」
「うむ、わしもハラミに乗せて貰ったのじゃ。今晩もここに泊ってもいいじゃろうか?ねぇねとユーア」
と、勢いよく入って来たのはラブナとナジメだった。
その後ろにはハラミもいた。きちんと足裏は拭いてもらったようだ。
「あ、ラブナちゃんお帰りっ!!それとナジメちゃんもっ!ハラミもありがとうねっ!」
そんな二人と一匹にユーアは嬉しそうに返事を返す。
よし、中々のタイミングだっ!
これでユーアの機嫌が少しでも直るかも。
「うん。その子供はもしかして…………何でここにおるのじゃ?」
「え、ナジメこの子供の事知ってるの?」
ナジメはユーアの前に横たわるゴマチを見て神妙な顔をする。
「へ、ナジメちゃん、ゴマチちゃんとお知り合いなの?」
と、ユーアもちょっと驚いてナジメに聞き返す。
「知ってるも何も、この子供はわしの知り合いの孫じゃぞ?」
「へ、そうなの?」
「お孫さん?」
「うむ。わしの屋敷に女中を送ってくれたのがその祖父で、わしはその祖父とは昔から懇意にしておる。父親の方にはかなり疎まれてる感じじゃがな」
「………………」
うん? 女中ってお手伝いさんみたいなのだよね?
ナジメのお屋敷で孤児院の子たちの世話を手伝って貰っている。
その相手って、確か―――
「この街の貴族じゃぞ。何でその孫がここにおるんじゃ?」
と不思議そうな表情でそう話す。
「え、貴族さまっ?ゴマチちゃんって貴族さまのお孫さん?」
「………………」
これってどんな状況なの?
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる