184 / 586
第9蝶 妹の想いと幼女の願い1
ガクブル少女
しおりを挟む
※この物語は作者の創作の世界になります。
他の作品の設定や、現実の倫理観とは
異なる場合がありますので予めご了承ください。
「中々起きないね?スミカお姉ちゃん……」
「う~~ん。そうだね……」
私とユーアは謎の男の子――――
だと思っていたら、実は女の子だった横たわる子供を眺めている。
Rポーションを使って無理やり目を覚まさせようと一瞬脳裏をよぎったが、その考えは実行には移さなかった。
これが大人ならまだしも、恐らく相手はユーアよりも幼い女の子だ。
そんな幼い子供を無理やり覚醒させたら、よからぬ影響が出る可能性もある。
目を覚ました時の行動も予想できない。
なので今は、女の子が自然に目覚めるのを待っている状況だ。
その女の子はお風呂場で軽く汚れを流して、着ていた冒険者風な服は洗濯を済ませ、そして今は体も服も綺麗になっている。ただ今はユーアのパジャマを着せて寝かせている。
さすがに外出で着用していた服装では寝ずらいだろうし。
『………………』
私はこの少女を見ながら、ユーアを襲った二人から聞きだした話を思い出す。
『…………この少女の依頼って話だったけど、結局ユーアを連れ帰る依頼ってだけしか聞き出せなかった』
あのチャラ男と執事服の男は、この少女の目的までは知らなかった。
ターゲットが抵抗したら、ある程度力ずくで連れて行くってだけで。
『まぁ、お金さえ貰えれば何でもってな話だったし、少女の目的や素性なんかは必要ないって言えばそうなんだよね?あの二人の仕事には』
あの二人はほぼ裏稼業に身を置いて仕事をしている。
依頼人の目的や素性なんか、特に闇的な内容が多いだろうから、それを知ったところで逆にマズい事もあるだろう。仕事内容によっては顔も合わさずに済ます事もあるだろうし。
それと、あの二人はユーアも私も傷付ける意思はあまりなかった。
それは依頼人からそういう契約だったのと、男たちの武器もそんな感じだった。
『あのチャラ男は全部先が丸いナイフだったし、執事服の男は最初ただの木の棒2本だったし』
それでもケガをしないって訳じゃないけど殺傷力は段違いに下がる。
それに執事服の男は、実体分身の私を攻撃した時、怒りと恐怖で我を忘れるぐらいでの状況でも体の固い背中だけに攻撃を集中させていた。
『そうは言っても、途中から二人とも私に本気で攻撃してた気もするけどね』
それはおそらく、命の危険を感じた時の防衛本能みたいなものだろう。
それでも過剰な気もするけど。
ただそれも、元は戦いを生業の一部としていた影響も大きかったんだろう。
と、先程のやり取りに思考を割いてるうちに、
「う、う~~ん…………」
「スミカお姉ちゃん。この子起きそうだよ?」
「えっ!?」
ユーアの私を呼ぶ声と、呻き声でふと我に返る。
「ねえ君大丈夫?ボクの事さっき――――」
「あ、あれ俺は一体……そしてここ――わっ!」
ゴロゴロゴロッ!!
目覚めた女の子はユーア、そして私を見て悲鳴とともにゴロゴロと床を転がる。
まるで、私を見て逃げるように距離を取ったような……
ゴンッ
「痛てぇっ!!」
とレストエリアの壁にぶつかり、今度は痛みに悲鳴を上げる。
「ちょ、あなた大丈夫っ?」
「お、お、お前はっ!――――きゃあああああっ!!!!」
「………………」
声を掛けた私を見て、また悲鳴を上げる謎の女の子。
両腕で、頭を抱えて蹲ってしまった。
『………………』
なんか地味に傷付くんだけど……
お化け屋敷でお化けに遭遇した女子みたいな反応で。
「あ、あのさぁ、私何も――――」
ってかなんでこの子はこんなに怯えてるの?
私まだ何もしてないよね?
「ひ、ひぃっ!俺の足を潰さないでくれぇっ!!殴らないでくれぇっ!」
「………………」
うん。納得した。
そう言えばこの子はチャラ男の両足を潰された時に気を失ったんだ。
まぁ、実際あれはスキルの上を叩いただけなんだけど。
それを思い出して私の事を怖がっているんだろう。
『う~~ん、恐怖を植え付けるのは、あのチャラ男と執事服の男の二人だけで充分だったのに。これは参ったね。話聞けるかな?』
私は「う~ん」と首を傾げながら怯える女の子を眺める。
するとそれを見ていたユーアが、
「あ、あの、君大丈夫?」
「っ!」
「ゴロゴロしてぶつかったよね?」
「~~~~っ」
「あ、君のお名前何て言うの?」
「………………」
俯く女の子に見かねて声を掛けるが、相変わらず膝を抱えて怯えている。
「あ、ボクはユーアだよ?君は?」
「………………知ってるよ」
「え、ボクの事なんで知ってるのっ?」
「………………」
やっと返答が帰って来た女の子の言葉に驚くユーア。
『………………』
それはそうだろう。
突発的にユーアをさらおうとしたなら別だが、この謎の女の子はあの二人を雇っていたんだ。ユーアの名前くらいはさすがに知っているだろう。
「あのさ、ちょっと聞きたい事があるんだけどいい?」
「………………いやだっ!」
「………………」
「………………」
と、私も声を掛けてみるが即座に拒絶された。
取り付く島もない。
「ど、何処か痛くない?」
「…………うん、大丈夫だ」
「あの、なんでボクの事知ってたの?」
「…………じいちゃんに聞いた」
「おじいちゃん?」
「そうだ」
『……………………』
この感じだとユーアにだけは心を開いたようだ。
私はきっと怖いお姉さんだと思われているんだろう。
元冒険者を軽くぶっ飛ばし、悲鳴を上げる男の両足を、
無残にも潰した冷酷非道なお姉さんと。
『うん。きっとそういう認識だよね……普通は』
そんな訳でこの女の子はユーアに任せて一先ず傍観する事にした。
私が口を挟むとまた怯えるだろうからね。
他の作品の設定や、現実の倫理観とは
異なる場合がありますので予めご了承ください。
「中々起きないね?スミカお姉ちゃん……」
「う~~ん。そうだね……」
私とユーアは謎の男の子――――
だと思っていたら、実は女の子だった横たわる子供を眺めている。
Rポーションを使って無理やり目を覚まさせようと一瞬脳裏をよぎったが、その考えは実行には移さなかった。
これが大人ならまだしも、恐らく相手はユーアよりも幼い女の子だ。
そんな幼い子供を無理やり覚醒させたら、よからぬ影響が出る可能性もある。
目を覚ました時の行動も予想できない。
なので今は、女の子が自然に目覚めるのを待っている状況だ。
その女の子はお風呂場で軽く汚れを流して、着ていた冒険者風な服は洗濯を済ませ、そして今は体も服も綺麗になっている。ただ今はユーアのパジャマを着せて寝かせている。
さすがに外出で着用していた服装では寝ずらいだろうし。
『………………』
私はこの少女を見ながら、ユーアを襲った二人から聞きだした話を思い出す。
『…………この少女の依頼って話だったけど、結局ユーアを連れ帰る依頼ってだけしか聞き出せなかった』
あのチャラ男と執事服の男は、この少女の目的までは知らなかった。
ターゲットが抵抗したら、ある程度力ずくで連れて行くってだけで。
『まぁ、お金さえ貰えれば何でもってな話だったし、少女の目的や素性なんかは必要ないって言えばそうなんだよね?あの二人の仕事には』
あの二人はほぼ裏稼業に身を置いて仕事をしている。
依頼人の目的や素性なんか、特に闇的な内容が多いだろうから、それを知ったところで逆にマズい事もあるだろう。仕事内容によっては顔も合わさずに済ます事もあるだろうし。
それと、あの二人はユーアも私も傷付ける意思はあまりなかった。
それは依頼人からそういう契約だったのと、男たちの武器もそんな感じだった。
『あのチャラ男は全部先が丸いナイフだったし、執事服の男は最初ただの木の棒2本だったし』
それでもケガをしないって訳じゃないけど殺傷力は段違いに下がる。
それに執事服の男は、実体分身の私を攻撃した時、怒りと恐怖で我を忘れるぐらいでの状況でも体の固い背中だけに攻撃を集中させていた。
『そうは言っても、途中から二人とも私に本気で攻撃してた気もするけどね』
それはおそらく、命の危険を感じた時の防衛本能みたいなものだろう。
それでも過剰な気もするけど。
ただそれも、元は戦いを生業の一部としていた影響も大きかったんだろう。
と、先程のやり取りに思考を割いてるうちに、
「う、う~~ん…………」
「スミカお姉ちゃん。この子起きそうだよ?」
「えっ!?」
ユーアの私を呼ぶ声と、呻き声でふと我に返る。
「ねえ君大丈夫?ボクの事さっき――――」
「あ、あれ俺は一体……そしてここ――わっ!」
ゴロゴロゴロッ!!
目覚めた女の子はユーア、そして私を見て悲鳴とともにゴロゴロと床を転がる。
まるで、私を見て逃げるように距離を取ったような……
ゴンッ
「痛てぇっ!!」
とレストエリアの壁にぶつかり、今度は痛みに悲鳴を上げる。
「ちょ、あなた大丈夫っ?」
「お、お、お前はっ!――――きゃあああああっ!!!!」
「………………」
声を掛けた私を見て、また悲鳴を上げる謎の女の子。
両腕で、頭を抱えて蹲ってしまった。
『………………』
なんか地味に傷付くんだけど……
お化け屋敷でお化けに遭遇した女子みたいな反応で。
「あ、あのさぁ、私何も――――」
ってかなんでこの子はこんなに怯えてるの?
私まだ何もしてないよね?
「ひ、ひぃっ!俺の足を潰さないでくれぇっ!!殴らないでくれぇっ!」
「………………」
うん。納得した。
そう言えばこの子はチャラ男の両足を潰された時に気を失ったんだ。
まぁ、実際あれはスキルの上を叩いただけなんだけど。
それを思い出して私の事を怖がっているんだろう。
『う~~ん、恐怖を植え付けるのは、あのチャラ男と執事服の男の二人だけで充分だったのに。これは参ったね。話聞けるかな?』
私は「う~ん」と首を傾げながら怯える女の子を眺める。
するとそれを見ていたユーアが、
「あ、あの、君大丈夫?」
「っ!」
「ゴロゴロしてぶつかったよね?」
「~~~~っ」
「あ、君のお名前何て言うの?」
「………………」
俯く女の子に見かねて声を掛けるが、相変わらず膝を抱えて怯えている。
「あ、ボクはユーアだよ?君は?」
「………………知ってるよ」
「え、ボクの事なんで知ってるのっ?」
「………………」
やっと返答が帰って来た女の子の言葉に驚くユーア。
『………………』
それはそうだろう。
突発的にユーアをさらおうとしたなら別だが、この謎の女の子はあの二人を雇っていたんだ。ユーアの名前くらいはさすがに知っているだろう。
「あのさ、ちょっと聞きたい事があるんだけどいい?」
「………………いやだっ!」
「………………」
「………………」
と、私も声を掛けてみるが即座に拒絶された。
取り付く島もない。
「ど、何処か痛くない?」
「…………うん、大丈夫だ」
「あの、なんでボクの事知ってたの?」
「…………じいちゃんに聞いた」
「おじいちゃん?」
「そうだ」
『……………………』
この感じだとユーアにだけは心を開いたようだ。
私はきっと怖いお姉さんだと思われているんだろう。
元冒険者を軽くぶっ飛ばし、悲鳴を上げる男の両足を、
無残にも潰した冷酷非道なお姉さんと。
『うん。きっとそういう認識だよね……普通は』
そんな訳でこの女の子はユーアに任せて一先ず傍観する事にした。
私が口を挟むとまた怯えるだろうからね。
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる