剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
上 下
172 / 586
第9蝶 妹の想いと幼女の願い1

SS 澄香のゲームオーバー その3.5

しおりを挟む

簡単なあらすじ

今回のお話は、ゲーム時代の澄香のお話です。
大切な何かを失った直後と、失う前が混在します。
澄香の強さの原点ともなったそんなお話です。

※不定期に差し込んで行きますが何卒宜しくお願い致します。




「お姉ちゃん後ろっ! と、上っ!!」

「わかったよ清美っ! クッ、一体何体倒せばっ!」


 清美の叫んだ場所の空間が揺らぎ始め、次々と黒い人型の機械兵が現われる。

 顕現される前に叩きたかったが間に合わなかった。
 流石に数が多すぎる。

 何故なら、


 私と清美はさっきまで1万程の黒い兵士に囲まれていたからだ。


 ただ助かるのは一度に襲って来る数が決まっているらしいこと。
 その数は凡そ200体ずつ。

 だから私は清美を守りながら戦えている。

 これが2倍3倍の数が押し寄せてきたら守り切れなかった。


「――もう5.000体近く倒してるんじゃないの!一体ここのクリア条件ってもしかして全滅っ?だったらあと半分っ!!」

 清美に言われた後方の敵には、デトネイトブーツで蹴りを当て爆殺し、真上には大型のバタフライソードを振り上げ二等分する。


「ふぅ、これで200体。ようやく小休止できるね」


 黒い機械兵の数は驚異的だったが、200体を倒すと囲んでいる動きが停止する。
 そのインターバルが1分間。

 なぜプレイヤーにそんな有利な時間が設定されてるかは謎だった。

 私はその時間を回復と、装備の確認の時間に充てていた。


『――う~~ん。回復関係はまだまだ余裕がある。けど、爆発系と実弾系。それとエネルギー系が心許ないんだよね。前半で飛ばし過ぎちゃったから』


 なので殲滅スピードは落ちるけど、私は途中から物理武器中心で戦っている。
 最後の最後で必要になる恐れがあるから。


 『バタフライソード』

 これはその名前から想像できる通り、バタフライナイフの大型版。
 その全長は私の2倍くらいあるけど、伸ばしたら更に長い。

 これをヌンチャクのように柄で殴ってもいいし、ソードの部分で切り裂く事も出来る。伸ばして振り回してもOKだ。


 『デトネイトブーツ』

 蹴った相手を爆発させる事が出来るブーツ。
 その威力は蹴った強弱で変化する。

 今相手している人型の機械兵なら当てるだけで爆殺できる。
 蹴りの威力を上げれば、他を巻き込んで爆散させる事も可能だ。


 私はドリンクレーションを口に含みながらそう確認を終える。


「澄香お姉ちゃぁ――んっ!」
「おっと」

 清美がタタタッと駆けてきて、私にダイブしてきたのでそれを受け止める。

「お姉ちゃん大丈夫?ボクあまり役に立てなくてゴメンね…………」

 そう言って私の胸に埋めた顔を上げ、悲し気に言う。

「ううん、清美が敵の現れる位置を教えてくれたり、動きを止めてくれるから随分と楽になってると思うよ?だからそんな顔しないで」

 私はそんな妹の清美を撫でながら慰める。

「そ、そうなの?ボクお姉ちゃんのお役に立ってるの?」
「うん、断然助かってるよ。だからもっとガンガン撃っていいからね」
「うんわかったっ!ボクもっと頑張るよっ!」
「そうそう、その調子でクリアしちゃおうよっ!」
「うんっ!」

 私の言葉が少しは清美に自信を与えたようで良かった。

『実際に、清美の先読みにも似た鋭い洞察力があったからこそ先んじて攻撃も出来たし、囲まれることも少なかった。それにスタンボーガンでの腕前も上がってたしで、本当に助かっているよ』

 笑顔が戻った清美を見てそう思う。

「それにしても何で一気に襲ってこないんだろね? わざわざワープしてくる意味がわからないよぉ……」
「うーん、それは私にもわからないなぁ。今回初めて受けたクエストだから」

 と、清美の言葉に意識を戻し問いかけに返事はするが、その質問の答えを私は持ち合わせていなかった。清美に話した通りに初のクエストだからだ。


■■■■


「清美。このクエスト受けてみない?」


 私は泊まりに来ていた清美に声を掛ける。
 今はちょうどお風呂から上がってきたところだ。

 入るときは姉妹一緒だったけど、私はシャワーオンリーなので、清美より先に上がって待っていた。清美はしっかりとお風呂に浸かって100まで数えていたけど。

「うん、いいよ」

 清美は調べているPCの画面も見ずに返事をする。

「あのさ、このアクセサリーなんだけど、効果が清美の武器と相性がいいと思うんだよね?クエストは私も手伝うからさ」

「そうなの?ならそれでいいよお姉ちゃん」

 と、相変わらず画面を見ている気配のない背後の清美に声を掛ける。

「って、ちゃんとクエスト内容とか、アイテムの効果とかキチンと見なよ?」
「ええっ!いいよぉ。だってお姉ちゃんが一緒に行ってくれるんでしょ?」
「うん、それは勿論そうなんだけど。でもね一人前になるのにはね――――」
「うん。わかったよお姉ちゃんっ! それで?」
「………………なんでパンツ履いてないの?」
「だって、パジャマは持ってきたけど、下着は忘れてきちゃったんだもん」
「うーーん、私のがあるけど…………ちょっと待ってて」

 私は首にバスタオルを掛けただけの、清美を見ながら席を立つ。

『にしても、私に似ず、あちこちストレートだよね?凹凸もあまりないし』

 そして清美の小さな体を見てサイズが合わなそうだと気付く。


『あ、でも少しは胸が大きくなってきてはいるんだね? でも12歳だからそんなものか。まぁ、私が清美の歳の時にはもうスポブラしてたけどね。成長が早くてさ』


 私はそう思いながら、手に取ったパンツを清美に渡す。

「はい、清美。緩いとは思うけど、その上からパジャマ履いちゃいなよ?さすがにノーパンでパジャマはおかしいし、風邪ひいてもあれだから」

「うん、ありがとうお姉ちゃんっ!」

 と立ち上がり、足を上げ下着を履きだす。

 私はその間に、飲み物の準備をする。
 清美はお風呂でたくさん汗をかいてたみたいだし。
 水分補給をね。

「ねぇ、お姉ちゃん」
「うん、何?」

 私は冷蔵庫を開けながら清美に返事を返す。
泊まりに来ることは知っていたから、清美の好きな物は前もって買っておいた。


「………………お姉ちゃんのパンツ。サイズピッタリなんだけど」
「……………………マジ?」
「う、うん。大丈夫だと思うよ?これでも」

「……………………」
「……………………」

「………………あはは」
「??」

「あははははっ。それは私が小学生の時のだったよっ!良かったねちょうど昔のがあって。それはあげるから、そのまま履いて行っていいからねっ」

「え、これ10年以上も前のパンツなのっ!? それにお姉ちゃんは小学生の時に黒のレースのパンツ履いてたの?早くないの?お母さんに怒られなかったのぉ?」

「へ?」
「……………………」

「あ、ああ。うっかりしてたよっ!それは間違って買ったサイズだったんだよっだから気にしないでいいからねっ!私のはもっと大きいからさっ」
「う、うん、ありがとうお姉ちゃん」

 と何とかこの場を誤魔化して、妹の清美とゲーム内に入るのであった。
 清美の装備に最適なアイテムを目指して。

 それにしても……

『わ、私のお尻が小さいんじゃなくて、清美が大きいんだよね?成長してるんだよね?そうだよねきっと……』

 隣の清美の小さなお尻をジト目で見ながらそう思った。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...