170 / 586
第9蝶 妹の想いと幼女の願い1
布地の多い姉妹の?
しおりを挟む「あらぁ、何か悪いわねぇ、グッズの件も許してくれて、しかもこんな高級な回復薬まで貰っちゃってぇ……」
「う、ううん、別にいいよ。こっちもちょっと大人げなかったし……」
「その代わり、グッズの売り上げの一部は、スミカちゃんたちバタフライシスターズにも入ってくるようにするからね」
「そ、そう。あ、ありがとねっ」
そう言ってニスマジはニコニコと事務所に入っていった。
その手にはリカバリーポーションを数本握って。
『ふぅ~、さっきはちょっとやり過ぎた。ニスマジも呆然としてたしね……』
私の羽根を真似た試作の商品を八つ裂きにしたことを思い出す。
『まさか、あそこまでニスマジが落ち込むとは……正直私も焦ったよ』
試作品を破壊された時のニスマジは、誰が見てもわかる程、肩を落として落ち込んでいた。2メートルを超える巨漢のガチムキ男がだ。
ボロボロな試作品を手に持って呆然と見つめるニスマジに、
「あ、ご、ごめんニスマジっ!わ、悪気はあったんだけど、ちょっと自分を止められなかったっていうか、あまりにもショックだったっていうかっ!それに気持ち悪いニスマジのゴツゴツの素足が……」
「悪気はあったんだ……でももういいわよまた作ればいいだけだし。ただあれは一個しかなかったから暫く商品化が遅れるだけで……。ただこんなにも反対されちゃうとも思ってなくてねぇ……」
「べ、別に好き勝手にある程度ならやってくれてもいいよっ。そこはニスマジに任せるよっ!じゃこれ上げるから、そんなにねっ、落ち込まないでねっ?」
「っ!? あら、悪いわねぇ、そんなつもりじゃなかったのに。それじゃこれはせっかくだから頂くわぁっ!グッズもわたしに任せて頂戴なっ!」
「う、うん、宜しくね。ニスマジ……」
てな感じでニスマジとのやり取りが終わった。
何か一杯食わされた気がしないわけではないけど。
「それじゃ、私も何か買って行こうかな?」
私はニスマジを見送って店内をぶらぶら歩く。
ユーアに何か買って行きたいと思って。
それに私も装備以外の服も着てみようかなとも思いながら、色とりどりの洋服が飾られているコーナーの前に来る。
『うん。ユーアとお揃いのでもいいかも。別に装備外しても街中なら大丈夫だろうしね?スキルが使えないだけで。 あれ?』
ナゴタとゴナタは食器類を選び終えたのか、1コーナー先の肌着コーナーで二人キャッキャと話している。その手には女性ものの肌着らしい物を持っていた。
『ふーん、今度はアンダーでも買うのかな?――うんっ?それもしかしてっ!?』
私はこっそり二人を覗き見してみる。
二人はちょっと飾りのついた肌着を持っていた。
その大きさからアンダーシャツだと思っていたが……
二人はその肌着と思っていたものを胸に当てて確かめている。
『は、はぁっ!?そ、それって下着なのぉっ!?そんな面積が多いのがブラジャーなのぉ!!』
私はその大きさに驚愕する。
それは着[き]るではなく着[つ]けるものだったという事実に。
『そ、そんなの私やユーアの顔なんか見えなくなるほどの大きさだよぉ!』
マジかっ!
私はその大きさに恐怖する。
あまりにも布地が多すぎるブラジャーに。
『~~~~~~っっ』
ユーアの小さい体なんて腰まで隠れそうなサイズだった。
もちろんナジメが着ければブラジャーが歩いて見える事だろう。
「こ、これ何てどうだいっ?ナゴ姉ちゃんっ!」
「そうね、それも似合ってるわよ?ゴナちゃん」
「ナゴ姉ちゃんっ、それもいいなっ!」
「ふふっ、下はお姉さまとお揃いのストライプでもいいかしらね?」
「私もそっちにするよっ!色違いで」
『…………』
二人とも楽しそうに、お互いの体に合わせながら談笑している。
そんな二人に私は見付からないように、そっとその場を離れた。
何故かって?
私のサイズは大人コーナーには置いてないからだよ。
『………………』
それから私は、ユーアとお揃いの服と下着何着か選び店を後にする。
姉妹の二人は、まだ色々買い込みたいというのでここで別れた。
そしてその後は冒険者ギルドに顔を出すとの事だった。
昨日ルーギルたちに、冒険者の育成をして欲しいとか言われてた件だろう。
「あ、雨?」
私は店を出て空を見上げて、地面が濡れているのに気付く。
ポツポツとだが、徐々に降り始めている。
空はわずかながらも曇っており、薄黒い雲で太陽が隠れていた。
「さて、この後はどうしようかな?」
私は透明壁スキルを傘代わりに、頭上に展開して独り呟く。
「あ、ログマさんの所にオークとトロールの肉を置きに行こう。それとついでに解体して貰おう。うん、そうしよう」
次の目的地を決めて、ログマさん夫妻のお店『トロノ精肉店』を目指し歩いて行く。
『…………そう言えば一人で歩くのも久し振りかも』
あちこちから、私の名前や容姿を囁く声が聞こえるが気にせず進む。
いちいち相手していたら大変だし、下手に話して幻滅されても、変な噂が立っても嫌だし。ならこちらから接触せずに無視するに限る。
『まぁ、話し掛けられた時は仕方ないから、その時はネコ被ろう』
さすがに声をかけられたら無視はできない。
『その時はナゴタの真似をして、丁寧な物腰と話し方で対応しよう』
そんな事を考えてるうちに『トロノ精肉店』についた。
雨はさっきより少し強くなってきたが、スキルのお陰で濡れずに済んだ。
ガララッ
「こんにちは~。ログマさんいる? お肉捌いて欲しいんですけど」
私は入り口の扉を開け店内に入る。
奥さんのカジカさんはこの時間だときっと2階の食堂だろう。
今はお昼を1時間ほど過ぎたところだし。
「ス、スミ姉ぇっいらっしゃいっ!今日は何しにきたのよっ!」
「へっ?ラブ ナ? って、ぎゃあぁぁぁっっっ!!!!」
私はニスマジの店の黒蝶姉妹店に続いて、再び絶叫を上げるのだった。
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。


強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる