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第9蝶 妹の想いと幼女の願い1
心配性なお姉ちゃん
しおりを挟む「ま、まあっ待つのじゃっ!今はねぇねの事よりも、先ずユーアとラブナは孤児院の子供達が気になるのであろう?」
「うん、そうですっ!けど、ねぇねも……」
「まぁ、一応気になるわよね?一応ね。ねぇねもだけど」
「なら、わしから説明するから大人しく聞いてくれなのじゃっ!」
「うん、わかりました」
「ふんっ、仕方ないわねっ!」
ナジメはユーアとラブナの心配を取り除くため、先に孤児院の話をするようだ。
「ナジメ。わかってるよね?」コソッ
そんなナジメに私は小さく声を掛けると「コク」と首を縦に振った。
大丈夫だということだろう。
ナジメが孤児院の件はユーアたちに話をする段取りになっている。
この街の領主として。
ただ院長たちの不正云々の話はできれば知られたくない。
なのでナジメには予め話さないように頼んである。
今までお世話になってたであろう人たちに裏切られたとなれば、ユーアは深く傷つく事だろう。そんなユーアを私は見たくないし、勿論ラブナにも知られたくない。
『………………それと』
大人のそんな汚い部分を見せるのはいささか早すぎる。
ユーアはこの世界で、真っ白と言える程の純粋な心を持っている。裏切られたと知った時の反動が想像できない。それとユーアの中で何かが歪んでしまう可能性も大いにある。清純無垢が故に。
『……だから精神がまだ幼いうちは、私たち大人が目隠ししてあげよう。大人の嫌なところを知るのはもうちょっと先だよね……』
私はナジメの話を真剣に聞く、ユーアとラブナを見てそう考えていた。
「――――と言うことなのじゃ。だから子供達も元気だし、住むところも今晩は安心じゃろう?何なら後で見に行ってもいいぞ?わしも一緒に行ってあげるのじゃ」
「えっ!いいの?ナジメちゃんっ!」
「ア、アタシも行ってあげてもいいわよっ!暇だしねっ」
どうやら孤児院の話が一段落したようで、いつの間にかユーアとラブナが後で様子を見に行く話に纏まっていた。
「ユ、ユーア大丈夫なの?貴族街になんか行ったことあるの?」
私はいつの間にか進んでいた話に驚きの声を上げる。
「う、うん、少し行ったことあるよ?お使いでだけど……」
「あ、あそこには恐い野獣が一杯いるんだよっ、それも野放しなんだよ? ユーアみたいな可愛い子が歩いてたら直ぐに連れてかれちゃうよっ?誘拐されちゃうよ?何なら私も一緒に行くからねっ!心配だからねっ!?」
「ズ、ズミガお姉ぢゃんんっ!目が回るでずぅぅっ!!」
ユーアは「ガクガク」と首を振って苦しそうだった。
「あ、ごめんユーアっ!」
私はパッとユーアの肩から手を離す。
どうやらユーアの肩を掴んで揺さぶっていたようだ。
あまりにものユーアの凶行を聞いてしまった為に。
「あのう、ねぇね。わしが引率するから大丈夫じゃと思うのじゃが……。それにねぇねはナゴタたちに店を紹介するとか言ってなかったかのう?」
「ま、まあそうなんだけどねっ。でもねっ」
いくらナジメが連れて行く事になっていても、心配な物は心配なのだ。
理屈がどうのこうのではなく、ユーアの身が堪らなく気がかりなのだ。
「そうか、ねぇねはわしの事をあまり信じ――――」
「ううん、そんなんじゃないんだよっ!ナジメの強さは知ってるし信用してるからさ、だからそんな目で見ないでよっ」
そんな私の心配は、どうやらナジメを落ち込ませてしまったようだ。
ナジメは目を潤ませて小さな肩を落とし下を向いてしまった。
「あ、で、でしたら、ハラミも一緒に連れて行けば宜しいんじゃないですか? もし何かってもハラミがユーアとラブナを守ってくれますよっ!」
「うん、それがいいと思うなっ! ハラミはユーアちゃんの事大好きだもんなっ!」
姉妹の二人がハラミを撫でながら、堪らずといった様子で、私とナジメのやり取りに打開策を出してくれる。
「う~ん……そうだね」
確かにナゴタとゴナタの言う通り2重の護衛がいれば危険はほぼないだろう。
ハラミは獣魔の首輪をしているとはいえ、見た目は魔物のシルバーウルフだ。
一般人はおいそれと手出しは出来ないだろうし牽制にもなる。
まぁ、見た目でナジメは期待できないけど。
『それにハラミはそこら辺の冒険者よりも確実に強いんだよね? それにナジメもいるし。だったら大丈夫かな?』
「ハラミ?」
私はそう決めて少しだけ落ち着き、ハラミに声を掛ける。
『わう?』
ハラミは即座に一声鳴いて、ゴナタの後ろで頭を上げる。
「ユーアとラブナをお願いね? もし二人に何者かが危害を加えそうだったら氷柱を撃ち込んでいいから、喉笛食い千切っていいから」
と起きたであろうハラミにお願いをする。二人を守ってくれと。
『わうっ!』
「えええっ!スミカお姉ちゃんそれはダメだよっ!それとハラミの『ひょうちゅう』って何んですかぁっ!?」
「さ、さすがにそれはヤバいってスミ姉ぇ!余計この街に居られなくなっちゃうってっ!それにアタシもいるんだからちょっとは信用してよねっ!」
『わ、わうっ?』
「ね、ねぇね、お主は何処までユーアを……」
「お姉さま、いくらユーアちゃんが大事だからって……」
「お姉ぇさすがにそこまでは……」
「ううっ」
そんな私の過保護振りは、ユーアとラブナには驚愕され、ナジメと姉妹にはかなり引かれてしまった。
『ほ、本当は冗談だったんだけどねっ!1/4くらいは……』
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