142 / 586
第8蝶 ちょうちょの英雄編2
SS 澄香のゲームオーバー その2
しおりを挟む簡単なあらすじ
今回のお話は、ゲーム時代の澄香のお話です。
大切な何かを失った直後と、失う前が混在します。
澄香の強さの原点ともなったそんなお話です。
「今だよお姉ちゃんっ!」
「オッケー」
清美の合図で飛び出し、大型の人型機械兵の足元にすぐさま踏み込む。
体長は凡そ5メートルくらいだろう。
『グガガッ』
大型の機械兵は清美のスタンボーガン一発で、未だに動くことができない。
四肢の末端部分が辛うじて動かせてるくらいだ。
私はそれを確認しながら「タンッ」と機械兵の頭付近まで跳躍する。
ズバッ
ズバババババババッ!!!!
跳躍の落下に身を任せながら、大型機械兵の関節部分を両手のナイフで切り刻んでいく。そのナイフは現代で言うと「ボウイナイフ」より大型の鉈のような形状の物だ。
『ガガッ――』
機械兵は「プスプス」とそのまま前のめりに体を傾け、
ズズゥ――――ンッ!!
その巨体を地面に沈ませた。
「これでラスト一機だねっ!」
ザシュッ!
地面に伏している最後の機械兵の首を刎ねる。
そしてその体は白い粒子となって消えて行った。
「凄いよっ! お姉ちゃんっ!」
「清美。もうずいぶんと扱いに慣れたんじゃない?」
「タタタッ」と近寄ってくる妹に声を掛ける。
「うん、お姉ちゃんがたくさん教えてくれたからだよっ!」
ガバッ
そんな清美は嬉しそうに私に抱き着いてきてそう話す。
「それはそうなんだけど上達が早いよね? もしかして一人で練習してたとか」
胸に抱き着いて、上目遣いで見上げて来る清美を撫でる。
「うん、実はこっそり練習してたのNPC相手に。でもその時にPKの人たちに会っちゃったんだ。何とか逃げられたけど怖かったなぁ
伏し目がちになって、少し怯えたように話す。
ムギュッ
「って、痛いっ! 痛いよお姉ちゃんっ!」
「あ、ゴメンゴメンっ!」
話を聞いて、知らず知らず撫でている手に力が入ってしまった。
そんな私に頭をさすり、清美が痛みを訴えていた。
「……ねえ、清美。それって何処で襲われたの? それと何処のチーム? 名前は? 特徴は? 人数は ? 武器は? それから――――』
「ちょ、ちょっと待ってよっ! そんなこと聞いてどうするの?」
「そんなの決まってるじゃない。そいつらの躾に行くんだよ。清美に二度と手を出さないように徹底的になぶって何度も回復して、幾度も斬り付けてやるんだよ。泣いて懇願するまで」
今度は優しく撫でながらそう話す。
まだまだ分かっていない連中が多すぎるから。
「へ? なんで? ボクちゃんと逃げて来たんだよ?」
清美は意味がわからないと言った、困惑した表情で見上げる。
「うん、大丈夫。清美は何も心配しないでゲームを楽しみなよ。降りかかる火の粉は、私が全力で振り払ってあげるから」
「えっ! それ全然大丈夫じゃないよっ! みんなボク見たら逃げ――――」
「いいから、全部お姉ちゃんに任せなさいっ! それとこれからはそんな相手に会ったら、マーキングしておいてね? 個人だろうとチームだろうと躾に行くから」
「えええええ――――っ!!」
□ □ □ □ □ □
ザッザッザッ
ただひたすらにエリアを歩いていく。
そして辿り着いた最初の思い出。
「…………あの時の清美の顔ったら」
あの時の清美を思い出して軽く口元を緩める。
「確かここだったよね? そんな話をしたところは。なら――――」
ウィ――ンッウィ――ンッウィ――ンッ!
ウィ――ンッウィ――ンッウィ――ンッ!
『ガガガッ』『ガガガッ』『ガガガッ』
『ガガガッ』『ガガガッ』『ガガガッ』
5メートルを超える人型の武装した機械兵が出現した。
こんなところもあの時と同じだった。
「そりゃそうか。毎回同じところに現れるんだから。それに――――」
私は特殊警棒型のトンファーを両手に構える。
「――――もう何万体も倒してきた相手だしね」
ズガガガガガガガガガッ!!!!×6
機械兵6体は、私を認識した後で即座に攻撃を仕掛けてくる。
私は狙いが定まらないように、左右にステップしながら接近する。
カカカカカカカンッ!!!!
それでも避けきれない弾は、両手のトンファーで弾いていく。
トンッ
「一体目」
ブンッ!
ガゴォンッ!!
跳躍しながらトンファーの一撃で、最初の一体目の頭部を破壊する。
そのままその一体を足場にして宙を舞う。
「二体目・三体目」
その跳躍のまますれ違いざまに二体の頭部も破壊する。
ズガガガガガガガガガッ!!!!×3
残りの3体が銃を乱射してくるが、更に上に跳躍してこれを躱す。
「これで最後」
私は手元の『ハンドグレネード【リモート式】』の起動ボタンを押す。
これは2体目の跳躍の時、残り3体の付近に仕掛けていたものだ。
カチッ
ドゴォォォ―――――ンッッッ!!!!
『グガガッ!!』×3
その爆発で残り3体もこの場から消滅した。
「ふぅ――――――」
ザッザッザッ
私はそれを見届けた後でまた歩みを進める。
何時間、何日、何年かかるかわからない。
「――――――」
ザッザッザッ
それでも私は宛てもなく歩いて行く。
それが今の私には必要ことだと信じて。
それに、私の旅は始まったばかりなのだから。
全てを――――するための旅が。
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる