剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第8蝶 ちょうちょの英雄編2

耳年増と無効試合?

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 私はなし崩し的に、ナゴタとゴナタのお願いを聞き入れた。
 いつになるかわからないけど、双子の姉妹との混浴に……


『そ、それよりも』

 ていうか、今はそれどころではないよね? 何か忘れてない?
 私たちが何の為にここに来て戦ったのかを。


※※


 私とナゴタとゴナタの模擬戦は終わった。

 街の人たちは何だかんだで盛大に盛り上がってたように見えた。

 もちろん懸案の冒険者たちも同じように見えた。
 少なからず私たちにはそんな風に映った。


 だったら、

『…………終わったんだよね? なんで、ルーギルもクレハンも終わりにしないの? 終了を宣言しないの?』

 訓練場の真ん中で、何やら話し合っている3人に視線を向ける。
 ルーギルとクレハン、そして一人加わった冒険者のまとめ役のギュウソに。


『あれ? なんであの幼女もあそこにいるの?』

 最初は小さくてその姿が見えなかったが、ナジメがルーギルたちの足元にいた。
 そして何やら話し合いに混じっている。


「あっ、スミカお姉ちゃん」
「うん、どうしたの?ユーア」

 隣にいるユーアに顔を向ける。

「羽根が少し大きくなってないかな?」
「へ? 羽根が」
「うん、いつもより大きくなってるよ」
「う~~ん、そう言われてみれば、少し大きくなってるかも」

 ユーアに言われて首を回して見てみたが、確かに視界に映る部分が多く見える。
 形や色は全く変わらず、大きさだけが変化したようだ。


「そうだよねっ! 前よりも蝶ちょみたいになったよスミカお姉ちゃんっ! もしかしたら飛べるのかなっ! いいなぁっ!」

 キラキラした目で背中の羽根を見つめる。

「う~ん。それは無理みたいだね。ユーア」
「え? それは残念です…… スミカお姉ちゃんが飛ぶの見たかったです」

 ヒラヒラと動かしてみたけど、飛ぶどころか全く浮かなかった。
 そもそもそんなに高速で動かせないし、大きさも足りない。

『てか、そもそもなんで大きくなったの?―――― ああ、なるほどね』

 そっとステータス画面を見て一人納得する。
 これでは飛べるわけがないと。



「本当ですね、お姉さまっ! 前よりも魅力的ですよっ!」
「なら、ワタシの『蜜』吸ってくれよっ! 蝶だけに。なんてなっ!」

「「「えっ!?」」」

「え?」

 ナゴタは良いとして、ゴナタの言葉に一瞬硬直する。
 冗談なのか本気なのか知らないけど、そこはかとなくセンシティブなセリフに。

「ゴナちゃんっ! あなた自分が何を言ってるかわかってるのっ!?」
「ゴ、ゴナタ、そ、そう言う冗談はやめてよねっ!」
「ゴナ師匠の変態っ! 痴女っ! 露出狂っ!!」

「え?」

 そんなハレンチともとれる台詞に、私とナゴタと何故かラブナが反応していた。
 大人の私とナゴタはいいとして、なんでラブナが反応してるのだろう。
 確かユーアの1歳年上なだけだよね?


「へっ? なんでそんなに怒ってるんだい? 顔を赤くしてさ。ってかラブナ、お前は師匠に向かってなんてことを言ってるんだよっ! ちじょって何だっ!」

「へっ? う、わああああ――――っ!」

「……………」
「……………」

 ゴナタは意味も分からずにラブナを追いかけ始めた。
 そんな二人他所に、いの一番に反応した姉のナゴタを覗き込む。

「~~~~っ!!」

 視線が合ったナゴタは「カァ~~ッ」と真っ赤になって下を向いてしまった。
 ずっと一緒だったこの姉妹の、なぜか姉だけが耳年増だった。

 まあ、それを言ったらラブナが一番だけどね。あの年齢でさ。
 それと私のユーアに変な事教えてないよね?

 えっ!? 私? 
 私はほら、精神年齢的には一番年上だからね。色々とね。



※※※※



(いやっ―――――――?))
(だから―――――――っ!?))
(うん―――――――?))
((はあっ! ―――――かっ!))
((――まあ ―――――だろう?))


 私たち以外のたくさんの声が聞こえる。
 街の人たちも冒険者も一緒になって、ガヤガヤと何かを話し合ってる。

 ただそれは、野次や文句と言った、誰かを乏しめるものではなく、
 どちらかと言うと――――――


『――――困惑している?』

 そうそんな感じ。

 隣同士や顔見知り同士で首を傾げ話している様子は、何か困ってると言うか、なんか納得できてないって言うか、何やらハッキリしないといったそんな表情だ。

 正直、あまりいい雰囲気だとは思わない。
 私たちの全ての試合が終わった後で、この様子はどこか不安になる。


「う~ん」

「お姉さま、これは一体? もしかして今回の件、私たちは失敗…………」
「お姉ぇ…………」

「ナゴタさん、ゴナタさん……」
「師匠たち、まさかっ!」

 街の人たち、そして冒険者たちの表情を見て何となく察する。
 それに合わせるかのように、シスターズの面々の表情にも影が差す。


「ちょっとルーギルっ! 一体どうなってんのっ!」

 中央に集まって、未だ話し合っている4人に大声を上げる。
 少しの殺気と、ちょっとの怒気を含んで、鋭く睨む。


 ここまでやって収穫無しじゃ、割に合わないし、やりきれない。
 二人とも全力で戦ったんだから、それに見合う結果が欲しい。 

 一番の目的は、この姉妹のこれからの事なんだから。

 この街を出ていくか、私たちと一緒に街で暮らせるかの。


「オ、オウッ! 待たせて悪りいなッ! 今ようやく話が纏まったからそっち行くぜッ! それじゃ、俺はスミカ嬢たちに説明してくるッ。お前たちは街のやつらと冒険者をたのむッ!」

 私の呼びかけに気付いたルーギルは、話し合ってた他の3人に何かの指示を出し、こちらに小走りで駆けてくる。
 因みにナジメだけには声を掛けず、その場に残ってはいたけど。


「アア~、なんだァッ、かなり言いづらいんだけどよォ――――」

 ルーギルは何やら苦虫を嚙み潰したような表情で話し出す。
 この顔から察するに、あまりいい話ではなさそうだ。


「それはいいから、一体どうなったの?」

 それでも聞かないと話が進まないので、ルーギルに問いかける。
 シスターズの面々は、一様に口を閉ざし話に注視している。


「ア~~、今のお前たちの模擬戦の話なんだかよォ、どうやら良く分からなかったんだよォ。って言えばわかるかァ?」

 頭の後ろをガシガシ搔きながら、私たち全員に視線を送る。

「全然」

「「「………………」」」

「まァ、そうだよなッ。ならハッキリ言うぜッ? さっきのお前たちの、ナゴタとゴナタの模擬戦は『見えなかった』んだよッ!」

「はぁっ!? いきなり何言ってんの? 見えなかったって何? 私とナゴタとゴナタはキチンと戦ったよねっ! みんな何見てたの?」

 意味の分からない、ルーギルの答えに心外だと詰め寄る。

 見えなかったってどういう事? 
 私みたいに消える訳じゃないし。


「それじゃ、一から説明するぜッ? まず最初のナゴタとの戦いからだッ」

 こうして、誰も納得できない私たちに、ルーギルの説明が始まった。

 その『見えなかった』と言っている、内容とは……


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