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第8蝶 ちょうちょの英雄編2
感動の再会とオオカミライダー??
しおりを挟む『やっば~~っ! あのオオカミの事をすっかり忘れてたよっ』
私は迂回して、折角来た道を引き返す。
その際に、オオカミの所在を確認しようと、MAPと索敵モードを視界に映す。
『ううん、きっとまだあそこにいるよね? かなり頭のいいオオカミの魔物だったし。それにもしかしたら―― んっ!? あれっ?』
こちらにもの凄い速さで向かってくるマーカーを見付ける。
もう少しで視認できるぐらいの距離まで接近している。
「あ」
あ、あのシルバーの毛皮は、
「は、はやっ!?」
シュタタタタタタッ――――
ダッ!
「えっ?」
ガバッ!
「おっと、危ない危ないっ! 捕まえた」
シルバーのモフモフを空中で「ガシッ」っと捕獲する。
私を飛び越えて、ユーアに飛び込もうとしたその魔物を。
「ああっ! そのシルバーウルフはっ! スミカお姉さまっ!」
「スミカ姉、忘れてたのって、もしかして?」
捕まえたそれを、そっと地面に降ろす。
その姿を見て姉妹はやっと思い出したようだ。
そしてオオカミは「はっはっはっ」ともの凄く興奮している様子だ。
『くう~んっ!』 はっはっはっ!
「おおっ~ よしよしっ!」
今にもユーアに飛び掛かりそうなオオカミを抑えながら、なでなでする。
オオカミも匂いの持ち主に会えたのがよっぽど嬉しいんだろう。
フワフワの尻尾も、扇風機のように「ブンブンッ」と回っている。
「うおッ! なんだこのシルバーウルフはッ! じょ、嬢ちゃん大丈夫なのか!?」
「なっ、速すぎて、わたしの索敵にも掴まりませんでしたよ!?」
「ス、スミカお姉ちゃんっ、な、なにその魔物っ!?」
「え?」
クレハンとルーギルの、この驚きようは分かる。けど、
ユーアのこの様子だと――――
「ユ、ユーアっ! このオオカミの魔物知らないの?」
「ボ、ボクですか? ちょっと、待って下さいっ! え、ええと、見たことあるような、ないような―― ああっ!」
ユーアは、私が撫でているオオカミの魔物をじーと見ていたが、
何かを思い出したのか、大きな声を上げる。
「ス、スミカお姉ちゃんっ、そのオオカミの魔物はスミカお姉ちゃんに初めて会った、ボクが崖から落ちた時にいたオオカミの魔物だよっ!」
「っ!?」
それを聞いて、すかさずユーア達が座っているエリアごと透明壁スキルで覆う。
ユーアに危険が及ぶ可能性のある存在が目の前にいるからだ。
私は撫でていたオオカミの魔物をグッと地面に抑えつける。
『くう~~ん! くう~~んっ!!』
強く抑えつけられた魔物は、抵抗しながらユーアを見る。
「えっ!? ス、スミカお姉ちゃんっ、ちょっと待ってっ!!」
ユーアは立ち上がりオオカミの魔物に近付こうとするが、
私の透明壁に阻まれているので、近寄る事が出来ない。
「ス、スミカお姉ちゃんっ! もう多分大丈夫だから、ボクとオオカミさんを会わせてっ! もしかしたら、そのオオカミの魔物はもっと前に会った事があるオオカミさんかもしれないんだっ!!」
『わうっ わうっ!』
「ほ、本当なのっ!? あのオオカミさんなのっ!?」
『わうっ!!』
ユーアの言う事にオオカミの魔物も反応して鳴き声を上げる。
まるでユーアは、この魔物と会話をしているように――――
『やっぱり、ユーアの能力って、もしかしたら――――』
私は以前にも、不思議に思っていたことを思い出すが、今は一先ず、ユーアとこのオオカミの魔物との関係が先だと、その考えを止める。
それは後でもできると。
私はユーア達を覆っていた、透明壁スキルを解除し、
オオカミの魔物の拘束を解く。一応警戒は怠らない。
ユーアはトテトテとオオカミの魔物前に立ちすくみ、
全身を真剣に見回し、そして、
「あ、あの時のオオカミさんなんだねっ! ボクずっと会いたかったんだよっ! ごめんねっ、すぐに気付いてあげられなくて、だって、ずっと大きくなっちゃたんだもんっ、あの時よりずっと大人になっちゃたんだもんっ! ボク、オオカミさんのお陰で、お仕事たくさん出来たんだよ、森で迷わなくなったんだよ、ボク、ボク、ずっと、お礼を言いたかったんだよ、良かった、よぉっ、また会えて、ボク、すごく、嬉しいよぉ――ううっ、うわ~~~~んっオオカミさ――――んっ!」
『くう~ん、くう~ん』
ペロペロっ
ユーアはオオカミの魔物に強く抱き着くと、オオカミとの過去の想いを全部ぶつけるように、激しく嗚咽を漏らす。
私と会う以前に、このオオカミとは何かあった事はわかる。
それは、元々私たちと森で会った時に、ユーアの匂いに執着していた時からわかっていた事だが、ユーアと一匹の、この様子を見ると随分と大切な過去の思い出が合ったんだろうと思う。
「ユーア、会えて良かったね」
このオオカミとの間の事は分からないが、撫でながらそう声を掛ける。
ユーアにとって、この再会は幸福な事なんだろうと思って。
「うんっ、うんっ、ありがとう、スミカお姉ちゃんっ! うううっ……」
『わうっわうっ!』
『うん、本当に良かったね、ユーア』
涙でクシャクシャになりながらも、笑顔を浮かべるユーアをみて、心からそう思った。
※※
タタタタタタタタッ――
シュタタタタタタッ――
私の隣をオオカミの背に跨ったユーアと並走する。
ユーアは、オオカミの背の毛皮を掴んで、嬉しそうに背中に乗っている。
今はまた街に向かって歩みを進めている。
『なるほどね、ユーアらしいね。本当にこの子は――』
私たちは、ユーアからオオカミの魔物との過去の話を聞いた。
最初に別れた時はまだ小さい、この半分くらいの体長しかなかった事。
そして、二回目に再開した時は、私とユーアが初めて会った時に、このオオカミに襲われて、崖から滑落した事。そしてその下に私がいた事。
この時のユーアは、倍ぐらいに成長したオオカミに気付かなかったらしい。
それを聞いて、少しだけわかった事がある。
ユーアが、この魔物を感知できなかった理由がなんとなくだけど。
「ユーア、やっと会えて、お礼言えて良かったねっ」
「うん、ありがとうっ! スミカお姉ちゃんのおかげだよっ!」
「ううん、違うよ。ユーアの行いが良かったんだよっ」
「うんでもね、ボクがルーギルさんたちと仲良くなれたのも、ナゴタさんとゴナタさんと知り合えたのも、オオカミさん、じゃなかった『ハラミ』とまた会えたのも、スミカお姉ちゃんに出会えたからだとボクは思うんだっ! だからありがとう、スミカお姉ちゃんっ! 大好きっ!」
「なるほどね、そういう風にも考える事が出来るんだねユーアは、なら私もユーアに出会ったから、みんなに出会えたのかもね? きっとそうだよね。それと、私も大好きだよ。ユーア」
「えへへっ」
「ふふ」
それを聞いたユーアは、はにかんだような笑顔を浮かべる。
これはプレゼントしてのサプライズではなかったけど、ユーアがこんなに喜んでくれたから結果オーライだよね?
ただ気になる事が、
『そういえば、このオオカミって街に入れるの?』
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