剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第8蝶 ちょうちょの英雄編2

街への道中と忘れ物

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 レストエリアを覆っていた、透明壁を解除する。
 クレハンの話は、道すがら出来ると思ったからだ。


「それじゃみんな街に帰ろうか。どうする帰りも私の魔法に乗っていく?」

 後ろを振り向いて、現在ここにいる仲間の、


 私(Cランク)『D』

 ユーア(Eランク)『AA』
 ナゴタ(Bランク)『G』
 ゴナタ(Bランク)『G』
 ルーギル(元Dランク)
 クレハン(元Eランク)

 の5人に問いかける。

 因みに『 』は私の予想の胸部ランクだ。
 ※一部実寸も混ざっている。多分私の(ボソ)


 ここまで来るときは、私の透明壁を浮かせて、それに乗ってきたからかなりの時間短縮になった。だったら帰りも使わない手はない。

 特に何も理由がないならば、その方がいいだろう。


「ん~、そうだなァ、その方が楽できんもんなッ! でもなぁ~~」

「そうですね、お願いできますでしょうか? スミカさん」
「スミカお姉ちゃん、お願いします」

「スミカお姉さま、私たちもよろしくお願いいたします」
「スミカ姉っ! よろしくなっ!」

「うんわかった。それじゃそうしようか。荷物はどうする? みんな自分で持つ? それとも私の収納魔法に入れる?」

 行きと同じで、そうしたように一応確認する。


「いいえ、時間もかからない事ですし、乗せてもらっているだけなので」
「ボクは大丈夫ですっ!」

「私たちも大丈夫です。マジックバッグに収まっているので」
「うん、うんっ」


((でもよォ、旅の醍醐味ってのもよォ~~~~))


「うん、わかった。それじゃ、これにみんな乗って」

 私は行きと違い、ちょっと大きく視覚化した透明壁[□]を地面から1メートル程の高さに展開する。カラーは行きと一緒の緑の色だ。


((まぁ、楽して帰るのも、悪かねえがッ、のんびり旅の話をしながら~~))


「よし、みんな乗ったねっ。それじゃ私たちの街に帰るよっ」

 みんなが乗ったのを確認して、透明壁を後ろに移動させる。
 私が前にきて、みんなを牽引するみたいな感じだ。


「それじゃ、しゅぱ――――つっ!!」


 私は透明壁を浮遊させたまま走り出す。


 道が狭い所は跳んで行けばいいだろう。と考えながら、行きと同じように、まだもたもたしているルーギルをぶち抜く。


「あ、お、おいッ! お前らまたッ!」

「え? あ、あれ? スミカお姉ちゃん、ルーギルさんを忘れてるよっ!」
「ス、スミカさん、帰りもギルド長を忘れていくんですかっ?」

「ルーギルは一人で歩いて帰って来るんじゃない? なんかずっと悩んでたみたいだし」

 慌てる二人に素っ気なく答える。
 だって一人で盛り上がってたし。

「で、でもぉ、スミカお姉ちゃん。乗せて上げてよぉ~」
「す、すいませんスミカさん、引き返してもらっていいですかっ?」

「わかったよ。ただの冗談だから。きちんと乗せていくよ」

 キュッ ズザザ――

 懇願する二人に答えてUターンする。
 クレハンだけならまだしも、ユーアから言われたんじゃ仕方ない。

『今度こそ乗車賃、貰ってやろうかな』

 なんて、心の中で愚痴ってみた。


――


「ったく、お前らよォ~ 俺は一応ギルド長なんだけどよォ。なんで忘れるかなァ。この討伐はギルド長でもある、俺の依頼なんだがよォ、まさか依頼主を置いてけぼり――――」


 折角わざわざ引き返して乗せて上げたのに、グチグチとルーギルの小言が止まらない。ユーアとクレハンがなんとか宥めてくれてるみたいだけど。


『まあ、忘れたんじゃなくて、本当はわざとなんだけどね、今回もさ。 ん? 忘れる? ――――』

 ルーギルの愚痴に内心でほくそ笑みながら、気になる単語が出てきて思考が止まる。


 忘れる?


「あああっ! 忘れたあぁっ――――!!」


「うわっ! な、何っ! スミカお姉ちゃんっ!!」

 前を走る私の突然の絶叫に、驚いて聞き返すユーア。

「どうしたのですかっ! スミカお姉さまっ!!」
「どうしたんだっ! スミカ姉っ!!」
「うおッ! 一体何だってぇんだッ! スミカ嬢ッ!」
「ス、スミカさんっ!?」

 ユーアに続いて、他の面々も驚きの声を上げる。


「ナゴタっ! ゴナタっ! あれ、忘れてきちゃったよっ!」

 私は他の面々より先に、姉妹の二人に声を掛ける。
 姉妹の二人なら「あれ」を知っているから。


「えっ? あれですか? んん、何でしょう? あれって」
「スミカ姉っ! あれって何だいっ?」
「え?」

 姉妹の二人は、分からずと言った様子で首を傾げる。
 妹のゴナタならまだしも、しっかり者の姉のナゴタまでも忘れていた。


『だ、だめだね、これは…… なら仕方ない。ユーアをびっくりさせたかったけど、一旦戻って迎えに行くしかないっ!』

 若干落ち込みながら、それでも即決をする。
 

「みんなっ! 忘れ物したから一旦、設営したところに戻るねっ!」

「「「え?」」」

 ズザザッ!―― 

 驚くみんなを他所に再度Uターンをする。
 そしてすかさずMAPと索敵モードに切り替える。

 きっとまだあそこにいるはずだから。

『えっ!?』

 視界に映る高速で動くマーカーを見て驚いた。




 ペロペロッ


『わうっ』
(ああ、新鮮なお肉美味しかったなっ)

『くうん、くうん』
(蝶のお姉さんの合図まだかなあ?)

『わうっわうっ!』
(早くあの、わたしを救ってくれた女の子に会いたいなっ!)

『く~~ん ――――』
(でも、この前会った時、ペロペロしようとしたら高い所から落っこちちゃったんだよね?)

『くんっ』
(わたしが追っかけた時は、あの蝶のお姉さんがいたから逃げちゃったけど)

『く~~ん、わうわうっ!』
(あの、蝶のお姉さんの話だと、会わせてくれるって言ってたから無事だったんだよねっ! 良かったっ!)

 ガバッ

『わうっ!』
(あれ? あの女の子の匂いが遠くに行っちゃうっ!?)

『わう~んっ!!』
(は、早く、追いかけなきゃっ!)


 ダダッ!

 シュタタタタ――――


『わうっ! わうっ!』
(わたしは、会いに行くんだっ!)

『わう~~~~~~ん!!』
(わたしを救ってくれたあの子に会いにっ!)


 そして、また背中に乗ってもらうんだっ!

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