剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

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SS双子姉妹の追想

ぺろぺろ魔物に全員完敗!?

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「ね、ねえっ、ナゴタとゴナタ、二人とも、こっちに来てくれる?」


 シルバーウルフに覆い被さられ、揉みくちゃにされながら、二人を呼ぶ。


「え、はい、承知しました」
「うん、わかったよっ!」

 二人は返事をしながら、私の近くまで来てくれた。

 途端、

『!? ばぅっ!』

「きゃっ!?」
「あ、ナゴ姉ちゃんっ!」

 シルバーウルフは、近付いてきた姉妹に気付いた途端に、姉のナゴタに覆い被さり、私がされたように至るところを舐められてしまう。


『わうっ! はっはっはっはっ!』

 ペロペロ ペロペロ

「あ、あなたは、一体何をっ! って、どこを舐めているのですかっ!? そ、そんなとこまで舐め上げないでくださいっ!? ちょっ、なぜ、そんなところに、か、顔をっ!? ま、待ってっ!あまり調子に乗ってると、痛い目に合―― あああああっ! そ、そこは、私っ弱、いっ! んんんんんっ!?――――」


「……………………」
「~~~~~~っ!」


 なぜだろう。

 やられている事は私と同じはずなのに、何故かいけない気持ちになるのは。
 一瞬にして、そんなアダルトな空間が出来上がってしまう、なんて。

 私の場合はきっと、大きな犬にじゃれられる子供みたいな感じなんだろう。

 だけどナゴタがやると、思わずモザイクカラーの透明壁で覆い隠したくなる。
 もちろん、視聴制限年齢ありで。


「………………次は、ゴナタね」


 そんなナゴタの光景を見ながら、そわそわしている妹のゴナタに声を掛ける。


「えっ? えええええ――――っ! ス、スミカ姉っ!?」
「なんて、冗談だよ」


 私の言葉に焦っているゴナタに、そう返事をしながらアイテムボックスより、先ほど顔を拭ったタオルを出して、ナゴタに覆いかぶさっているオオカミに近づけてみる。


 すると―――

『ばうっ!』

 そのオオカミはすぐさまナゴタより体を浮かし、そのタオルに顔を近づけ、匂いを嗅いだり、顔を摺り寄せたりしている。

 相変わらず、フサフサの尻尾はブンブンと振られたままだ。


「ふぅ~、ふぅ、助かりました。スミカお姉さまっ。はぁ、はぁっ」

「……………………」
「~~~~~~っ!」

 そう言って、オオカミのペロペロ攻撃から解放されたナゴタは、顔や首筋、胸元まで、テロテロに濡れ光っていた。
 胸元なんかドレスがちょっと乱れてるし、胸の峡谷が深いのも見えるし、きれいな顔も上気してるし。


『ま、まあいいっ、そ、それよりも、これでなんとなくわかったよ』


 未だに嬉々としてタオルにじゃれる、シルバーウルフを見てそう呟いた。


※※


「スミカお姉さま、ありがとうございます」


 ナゴタはお礼と一緒に、使い終わったタオルを差し出してくる。
 タオルはシルバーウルフの唾液でベトベトだった。


「それとも、洗ってお返ししましょうか? そんなに、汚れてしまって……」

 受け取ったタオルを、指先で摘まんでいたのを見て、
 申し訳なさそうにしている。


「ううん、別にいいよ。ナゴタを呼んだのは、私だから」

 私はそんなナゴタに、そう返事を返す。

 レストエリアに入れば、洗濯機があるから洗うのも簡単だし。
 乾燥までして、ふんわりと仕上がるから。とも思ってみたり。


「そうですか、ありがとうございます。それとこのシルバーウルフですが、一体?」

「ああ、多分『匂い』に釣られてきたんだよ。嗅いだことのある匂いに」

「匂いですか? それは一体なんの匂いなのでしょうか?」
「確かにずっと、タオルの匂いを嗅いでいるなっ!」

 未だにタオルをクンカクンカしている、シルバーウルフ。

「私と一緒にいる、小っちゃくて可愛い少女の匂いだと思うよ」

「そんな方の匂いがなぜ、こんなところに?」
「うん、しかも、かなり気に入られてるみたいな感じだなっ!」

「あ、え~とねぇ」

 その二人の疑問に答える為に、もう一枚のタオルを出す。
 もちろんこれも使用済みのものだ。


「この使い終わったタオルに、その少女の匂いが移ってるんだよ。それで、ナゴタもゴナタも、私が渡した時に、顔や首筋まで拭ったでしょ? このタオルで。だからあなた達にも匂いが付いちゃったんじゃないかな? もちろん、私もだけど」

 そう説明をし、再度タオルの匂いを嗅いでみる。

『ふあぁ~』

 ユーアの甘い匂いが微かにする。
 赤ちゃんみたいな、甘い粉ミルクの香りが。


「え、そうなのですか? ならなぜ、その匂いをこのシルバーウルフは気に入ってるんでしょう?」
「あっ!ワタシ。顔だけじゃなく違うところも拭いたんだけど」


「あ~、そこまではわからないかな? でも何かそのオオカミにしたんだと思う。気に入られるような何かをね。それは本人に聞いてみないと分からないなぁ」

 シルバーウルフの、柔らかそうなタテガミを見ながらそう答える。
 触ったら気持ちよさそうだ。色もユーアの髪と一緒の色だし。

『まあ、ユーアはあの性格だから、大体は予想はつくけどね』

 なんて、心の中では思ってみたりする。
 ただ確証も何もないので、ここでは言えないけど。


「それよりそろそろトロールの討伐に向かおうか? このオオカミはこのままでも大丈夫そうだし…… ってあれ?」

 気が付くと、目の前にいたオオカミが消えていた。

「うわっ! ちょ、ちょっとっ!」

 そんなオオカミは、今度はゴナタに襲い掛かっていた。

「もうっ! やめてくれよっ!」

 襲われているゴナタは、内股になって手で塞ぎ、太ももをガードしている。

「うわっ!?」

 だが、全てを隠しきれるはずもなく、執拗な接触に難なく突破されてしまう。


「うんんんっ! ちょっとくすぐったいよっ! や、やめ、内側にその顔突っ込むなっ! って、ベロベロするなっ! ざらざらして気持ち――― んんん~~~ やめろぉ~~っ!」

『がう~~っ!♪』


「…………なんで、太ももをペロペロされてんの? ゴナタは」

 またもや変な空間を見せられる私。
 その原因を姉に聞いてみる。
 

「…………はい。妹は貸していただいたタオルで太ももを拭いていたからです。あの子はホットパンツで素足を出していましたから、汚れが気になって拭いていたんです。それでだと思います」

「………………なるほど」

 その返答に納得し、軽く頷く。
 さっき違うとこ拭いたとか言ってたから。


「み、見てないで助けてくれよぉ~~っ! もうっ! あんんっ!――――」


 これで全員が、あのペロペロオオカミの餌食になった。

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