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第7蝶 蝶の少女と双子姉妹との邂逅編
自己紹介と年下のお姉さま
しおりを挟む「おかえりなさい、お姉さまっ!」
「おかえりなさい、お姉っ!」
私が返ってきたときに、二人はそんな事を言って、私を出迎えたみたいになってたけど、
あれはいったいーーーー。
私は姉妹に、リカバリーポーションを使いながら「あっ!」と思い出す。
『そういえば私、この二人に名前教えてないじゃん。だからおかしな呼び方なんだよ』
と、私はその事に気付く。
お姉さまのところは、よくわからないけど、キチンと名前を教えれば問題ないだろう。
『うん、そうしよう』
「お姉さま、姉妹共々治療していただきありがとうございます」
「うん、お姉のお陰で、やっとズボンが履けたんだっ!ありがとうございます!」
治療を終えた姉妹は、そう言って健気に頭を下げてくる。
ありがとうも何も、あなたたち姉妹に、そんな事したの私なんだけど……。
それよりも、名前教えないとーーーー、
「あ、あのさ、私の名前は『澄香』て言うんだ『透水澄香』だから、スミカって呼んでくれるかな?私は年下だし、姉ってなんかおかしいし」
と、今更自己紹介をする。
それを聞いた姉妹の二人はーーーー
「え、お姉さまって『スミカ』って言う名前なんですかっ?お姉さまらしい、素晴らしいお名前ですねっ!『スミカお姉さまっ!』」
「お姉は『スミカ』っていうのかっ!良い名前だなっ『スミカ姉っ!』」
「んんっ!だ、だから、私は『スミカ』だって、姉はいらないーーーー」
「あっ、スミカお姉さま、喉など乾いていないですか?南の大陸から持ってきた、果実水などがあるのですが、お飲みになりますか?とっても美味しいですよっ」
「う、うん、ありがとういただくよ。それよりも、お姉さーーーー」
「スミカ姉っ!ワタシも、南方の乾燥した果物を持ってるんだぜっ!これも美味しいから、食べてみてよっ」
「え、あ、ありがと、それもいただくよ。で、その姉って呼びーーーー」
「はい、どうぞっスミカお姉さまっ!」
「食べてくれよっ!スミカ姉っ!」
「う、ううん、ふたりともありがとね、美味しくいただくよ」
「はいっ!」
「うんっ!」
「…………………」
なぜか、甲斐甲斐しく私の世話をする姉妹に、更に言いにくくなってしまう。
「モグモグ、ムシャムシャ、ゴクゴクッーーーー!?」
「ジーーーーーーッ」
「じーーーーーーっ」
「…………………………」
今度は姉妹に注目されてて、ものすごく食べずらいんだけど…………
なんでこの姉妹は、祈るように、手を胸の前に合わせて、私をガン見してんの?
またその二つの果実が、ムギュってなってるよ。私とおんなじだよっ。
「…………………………」
これって、もしかして、食べた感想を求めてるって事っ!?
「ジーーーーーーッ」
「じーーーーーーっ」
『……………………それっぽいね。私の感想待ち』
「ふ、ふたりとも、とっても、美味しかったよ、あ、ありがとうね、
それよりもーーーー」
「それは良かったですっスミカお姉さまっ!喉が渇いたらいつでも言ってくださいっ!」
「うん、ワタシにも、欲しいときに言ってくれよっ!直ぐに出すからなっ!」
「…………………………」
全く取り付く島もない。
しかも、めっちゃ、喜んでるしーーーー
もうダメだ。もう何も言えない。
こんな二人の、キラキラした目を見たら、これ以上は言わない方がいい。
ってか、無駄っぽい。この目は何も聞かない目だ。
それよりも、私にはもう一つ目的があるんだ。
姉妹の様子は気になるけど、早くしないと夜が明けてしまう。
「あのさ、ちょっと付き合って欲しいっていうか、手伝って欲しい事があるんだけど」
「はいっ、スミカお姉さまっ!私たちに任せて下さい!」
「おうっ、スミカ姉っ!ナゴ姉ちゃんとワタシに任せてっ!」
そう言って立ち上がり、二人ともはりきって返事をする。
私まだ何も言ってないけど……。
「この先の山の麓に、トロールの大群がいるらしいんだけど、討伐を少し手伝ってくれない?一人でもいいんだけど、思ったよりここで時間かかっちゃったからさ。大丈夫?強制はしないよ。危険な事だし」
『思ったより時間かかったのって、主に、この姉妹が原因なんだけどーーーー』
なんてことは言わない。
しばらくの間、この姉妹の面倒見るって決めたのは私だし。
「はい、私たちがお供しましょう。そのトロールの死体を貢物として、スミカお姉さまに捧げましょう」
「おうっ!ワタシたちの活躍を見ててくれよっ!それとトロールの肉は美味しいんだぜっ!」
「うん、ありがとう。それじゃお願いするね。森を抜けていくから付いてきてくれる?」
死体の貢物って何!?
なんか私、奉られそうになってない?
「はいわかりました。スミカお姉さま」
「うん、付いて行くぜ、スミカ姉!」
私たち三人は、まだ暗いサロマ村を駆け抜け、ビワの森の中心の山を目指して駆けていく。
「ねえ、さっきゴナタが言ってたけど、トロールの肉も美味しい言って本当なの?」
タタタタッっと森の中を走りながら、さっきの気になった事を聞いてみる。
「うん、スミカ姉っ。オークの肉よりはずっと美味しいぜっ!焼いても煮込んでも絶品なんだよっ」
「ゴナちゃんの言う通りですね。一応高級食材の部類に入っているんですよ。その美味しさから」
おおっ!トロールの肉も美味しいんだ。
この世界はあちこちに食材が溢れてるねっ。
って言っても、それを狩れるのは一部の人間なんだろうけど。
これで、またユーアへのお土産が出来る。
大量のオークとトロールのお肉に囲まれて、その中で喜んでいるユーアが目に浮かぶ。
だけど、
『い、いや、それはそれで気持ち悪いでしょうっ!サイコパス過ぎるでしょうっ!!』
私は血まみれの、大量のオークの死体の中心で、
無邪気に両手を挙げて喜ぶ少女を想像して、顔をしかめるのであった。
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