剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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SS双子姉妹の追想

最初のお仕置きその後

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「ハァ、ハァ、ハァ、ゴナちゃん、私、も、もう――――」

 ガクンッ

「はぁ、はぁ、はぁ、ナゴ姉ちゃん、ワタシも、む、り――――」

 バタンッ!


「ふうぃ~~、いい仕事したぁ!」


 ぱんぱんっと手を払ってドリンクレーション(練乳味)を取り出す。


「やっぱり、ひと汗かいた後の甘いものは最高だねっ!」


 ゴクゴクっとのどを潤しながら、力尽き倒れ込んだ足元の二人の人物を見て、満足そうに一人呟く。


 因みに装備の効果で、汗なんてかいてないのはいつもの事。

 手をぱんぱんっと払うのにも意味はない。
 もうここら辺の行動は一種の癖みたいなものだ。

 座るときに「どっこいしょ」って言っちゃうみたいな感じ。

 でも私はそんな事言わないよ? だってまだピチピチの15歳だから。
 ただ精神年齢は――――

 って女性に年齢を聞くのは失礼だよっ! なんてね。


 そしてその足元の人物、姉のナゴタと妹のゴナタの姉妹は顔を紅潮させたまま気を失っている。

『――――――』

 しかも二人とも下半身を丸出しでお尻を突き出したままで。


 ただ本来は白くて真ん丸のその形の良いはずのお尻は、あちこちに手形が付いていて赤く腫れあがり、痛々しそうに見える。

 そんな二人の年頃の乙女に、お仕置きと称した極悪非道な所業をしたのは、もちろんこの私『透水 澄香』

 そしてまたの名を『クリア・フレーバー』その人だ。
 

「…………なんか、久し振りにこのアバターのHNを思い出したなぁ。 なんて冗談はさておきこの二人って?」


 そして私はドリンクレーションを口に含みながら、先程聞いた姉妹の悲痛な過去の話を思い出す。


「なんか色々歪んでるって言うか、元々危うい雰囲気は持っていたけど、そんな過去があったんだね」


 大好きだった両親を一度に無くした幼かった頃の姉妹。
 その大好きな両親に憧れて冒険者に。


 そして、その両親の夢を追いかけた末に命を落とした両親の生き方と、今までの姉妹を否定するような、酒場での男たちとのあの出来事。

 そんな話を姉妹にお尻ペンペンしながら半ば無理やり聞きだした。

 
 それが切っ掛けで姉妹は街を出ていき、徐々に二人とも墜ちていった。


「……誰かこんなになる前に止められなかったの? 心がもう破綻寸前だったよ。このまま姉妹をほっといたら、きっと――――」


 止められなかったのはやはりこの姉妹の想いが強すぎた為、誰の言葉にも耳を貸さなかったのと、この姉妹の強さ自体にも原因があったのだろう。

 話を聞かないなら力ずくってわけにいかなかったのだから。
 単純に強さいうと脅威を二人は持っていたから。

 ただこれ以上姉妹が壊れていくことを見たくなかったし、許せなかった。


 こんな素晴らしい力を持ちながら、それを無駄に浪費する事には賛同なんてできるはずもなかった。守る為に手に入れた力を、真逆の事には使うなんて間違っている。

 でもこの二人の気持ちも想いも、そして壊れた事を仕方なく思う。
 だって、止める人も止められる人もいなかったのだから。
 そして大切な何かを失ったのだから。


『前の私が、実際そうだったしね――――』


 ただ私はそれを5年以上もゲームの中で引きこもって漫然と過ごしてきた。どこかで、抜け出したい、止めたいと思っていてもダメだった。

 そして、その抜け出した切っ掛けがこの世界とユーアの存在だった。

 ユーアの存在は大きい。
 その存在が 私の生きる意義と目的となったのだから。

 この妹を守る為に研鑽してきた力が、また妹を守る為に振るう事が出来るんだと、私は歓喜した。

 だから私はこの姉妹に自分を重ねてしまったのだと思う。
 私と同じように、誰かに救われて欲しいと。


 でも、私は、聖人君主でも神様でもこの姉妹の親でもない。
 今の姉妹にはきっと私の言葉も届かないし、私に救う力もない。
 ましてそんな義理もない。


 だから私は自分が出来る事をやった。
 お仕置きと称した『お説教』をしてやった。


 叱る両親がいないなら私がその代わりでもいいと、そう思ったからだ。


 そのぐらいだったら、私にだってできる。

 姉としても年上としても、家を空ける事が多い両親の代わりに、妹をたくさんと叱ってきた私なんだから。


「なんか本来の目的とズレた気がするけど、まあこれで十分わからせたはずだから、大丈夫だとは思うけど――――」

 未だに仲良く気を失っている姉妹を見る。
 まだ、真っ赤なお尻は丸出しだけど。


「後はこの姉妹次第かな? それでもわかってないなら、またお説教タイムをするだけだから」

 と、私はワキワキと両手を動かす。

 中々の張りとツヤと感触だった。形も申し分なかった。
 ユーアとは違う、女性としての魅力ある極上なお尻だった。
 思わず、何度かスリスリと、モミモミをしてしまったくらいだ。


『ユーアはユーアで、あの小さいお尻も可愛いんだよねっ! 吸い付くような感触なんて、赤ちゃんのお尻みたいだったし。妹が小っちゃかった頃を思い出したよ。まあ、この姉妹みたいに、女性的な大きさと厚みではないけど、張りとツヤだったら負けないよっ! ああ、そう言えば、メルウちゃんも中々に――――』

 拳を強く握り、なぜか一人でお尻談義が始まってしまう。


「って、それよりも……」

 でも今はそれどこじゃなかったと、ふと思い出す。


「それじゃ、気を失っている間に、オーク回収してきちゃおう。起きると面倒だからね? それに、この姉妹に取られるところだったし」


 そう言って私は再度ナイトビジョンゴーグルを出し、たくさんのオークの死体が散らばる、まだ暗いサロマ村を駆けていくのだった。


 ユーアのお肉を獲得するために。



※※ 

  

 一方その頃気を失っていた姉妹は、



「んんん、あれ? 私たちはいったい―――― あ、ゴナちゃん」
「ううう、ワタシたちは、あれから―――― あ、ナゴ姉ちゃん?」

 目覚めた私たち姉妹はお互いの顔を確認してホッと安堵する。
 そして、先ほどまで行われていた『お仕置き』を思い出して、


「い、痛い、お尻が痛いっ――――っ!!」
「い、痛てぇっ! お尻がぁぁぁっ――――っ!!」


 ついでにその痛みも思い出してしまう。


 それから数分間。
 下半身丸出しでお尻の痛みに絶叫を上げる姉妹がいた。


 幸いその恥ずかしい姿は、澄香のお陰で外から見える事はなかったが、ただ視覚化した透明壁スキルの模様が、色々な形を貼り合わせたような、


 『モザイクカラー』だった理由を知っているのは、展開した澄香本人だろう。

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