83 / 586
SS双子姉妹の追想
最初のお仕置きその後
しおりを挟む「ハァ、ハァ、ハァ、ゴナちゃん、私、も、もう――――」
ガクンッ
「はぁ、はぁ、はぁ、ナゴ姉ちゃん、ワタシも、む、り――――」
バタンッ!
「ふうぃ~~、いい仕事したぁ!」
ぱんぱんっと手を払ってドリンクレーション(練乳味)を取り出す。
「やっぱり、ひと汗かいた後の甘いものは最高だねっ!」
ゴクゴクっとのどを潤しながら、力尽き倒れ込んだ足元の二人の人物を見て、満足そうに一人呟く。
因みに装備の効果で、汗なんてかいてないのはいつもの事。
手をぱんぱんっと払うのにも意味はない。
もうここら辺の行動は一種の癖みたいなものだ。
座るときに「どっこいしょ」って言っちゃうみたいな感じ。
でも私はそんな事言わないよ? だってまだピチピチの15歳だから。
ただ精神年齢は――――
って女性に年齢を聞くのは失礼だよっ! なんてね。
そしてその足元の人物、姉のナゴタと妹のゴナタの姉妹は顔を紅潮させたまま気を失っている。
『――――――』
しかも二人とも下半身を丸出しでお尻を突き出したままで。
ただ本来は白くて真ん丸のその形の良いはずのお尻は、あちこちに手形が付いていて赤く腫れあがり、痛々しそうに見える。
そんな二人の年頃の乙女に、お仕置きと称した極悪非道な所業をしたのは、もちろんこの私『透水 澄香』
そしてまたの名を『クリア・フレーバー』その人だ。
「…………なんか、久し振りにこのアバターのHNを思い出したなぁ。 なんて冗談はさておきこの二人って?」
そして私はドリンクレーションを口に含みながら、先程聞いた姉妹の悲痛な過去の話を思い出す。
「なんか色々歪んでるって言うか、元々危うい雰囲気は持っていたけど、そんな過去があったんだね」
大好きだった両親を一度に無くした幼かった頃の姉妹。
その大好きな両親に憧れて冒険者に。
そして、その両親の夢を追いかけた末に命を落とした両親の生き方と、今までの姉妹を否定するような、酒場での男たちとのあの出来事。
そんな話を姉妹にお尻ペンペンしながら半ば無理やり聞きだした。
それが切っ掛けで姉妹は街を出ていき、徐々に二人とも墜ちていった。
「……誰かこんなになる前に止められなかったの? 心がもう破綻寸前だったよ。このまま姉妹をほっといたら、きっと――――」
止められなかったのはやはりこの姉妹の想いが強すぎた為、誰の言葉にも耳を貸さなかったのと、この姉妹の強さ自体にも原因があったのだろう。
話を聞かないなら力ずくってわけにいかなかったのだから。
単純に強さいうと脅威を二人は持っていたから。
ただこれ以上姉妹が壊れていくことを見たくなかったし、許せなかった。
こんな素晴らしい力を持ちながら、それを無駄に浪費する事には賛同なんてできるはずもなかった。守る為に手に入れた力を、真逆の事には使うなんて間違っている。
でもこの二人の気持ちも想いも、そして壊れた事を仕方なく思う。
だって、止める人も止められる人もいなかったのだから。
そして大切な何かを失ったのだから。
『前の私が、実際そうだったしね――――』
ただ私はそれを5年以上もゲームの中で引きこもって漫然と過ごしてきた。どこかで、抜け出したい、止めたいと思っていてもダメだった。
そして、その抜け出した切っ掛けがこの世界とユーアの存在だった。
ユーアの存在は大きい。
その存在が 私の生きる意義と目的となったのだから。
この妹を守る為に研鑽してきた力が、また妹を守る為に振るう事が出来るんだと、私は歓喜した。
だから私はこの姉妹に自分を重ねてしまったのだと思う。
私と同じように、誰かに救われて欲しいと。
でも、私は、聖人君主でも神様でもこの姉妹の親でもない。
今の姉妹にはきっと私の言葉も届かないし、私に救う力もない。
ましてそんな義理もない。
だから私は自分が出来る事をやった。
お仕置きと称した『お説教』をしてやった。
叱る両親がいないなら私がその代わりでもいいと、そう思ったからだ。
そのぐらいだったら、私にだってできる。
姉としても年上としても、家を空ける事が多い両親の代わりに、妹をたくさんと叱ってきた私なんだから。
「なんか本来の目的とズレた気がするけど、まあこれで十分わからせたはずだから、大丈夫だとは思うけど――――」
未だに仲良く気を失っている姉妹を見る。
まだ、真っ赤なお尻は丸出しだけど。
「後はこの姉妹次第かな? それでもわかってないなら、またお説教タイムをするだけだから」
と、私はワキワキと両手を動かす。
中々の張りとツヤと感触だった。形も申し分なかった。
ユーアとは違う、女性としての魅力ある極上なお尻だった。
思わず、何度かスリスリと、モミモミをしてしまったくらいだ。
『ユーアはユーアで、あの小さいお尻も可愛いんだよねっ! 吸い付くような感触なんて、赤ちゃんのお尻みたいだったし。妹が小っちゃかった頃を思い出したよ。まあ、この姉妹みたいに、女性的な大きさと厚みではないけど、張りとツヤだったら負けないよっ! ああ、そう言えば、メルウちゃんも中々に――――』
拳を強く握り、なぜか一人でお尻談義が始まってしまう。
「って、それよりも……」
でも今はそれどこじゃなかったと、ふと思い出す。
「それじゃ、気を失っている間に、オーク回収してきちゃおう。起きると面倒だからね? それに、この姉妹に取られるところだったし」
そう言って私は再度ナイトビジョンゴーグルを出し、たくさんのオークの死体が散らばる、まだ暗いサロマ村を駆けていくのだった。
ユーアのお肉を獲得するために。
※※
一方その頃気を失っていた姉妹は、
「んんん、あれ? 私たちはいったい―――― あ、ゴナちゃん」
「ううう、ワタシたちは、あれから―――― あ、ナゴ姉ちゃん?」
目覚めた私たち姉妹はお互いの顔を確認してホッと安堵する。
そして、先ほどまで行われていた『お仕置き』を思い出して、
「い、痛い、お尻が痛いっ――――っ!!」
「い、痛てぇっ! お尻がぁぁぁっ――――っ!!」
ついでにその痛みも思い出してしまう。
それから数分間。
下半身丸出しでお尻の痛みに絶叫を上げる姉妹がいた。
幸いその恥ずかしい姿は、澄香のお陰で外から見える事はなかったが、ただ視覚化した透明壁スキルの模様が、色々な形を貼り合わせたような、
『モザイクカラー』だった理由を知っているのは、展開した澄香本人だろう。
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる