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第7蝶 蝶の少女と双子姉妹との邂逅編
スミカと双子姉妹の出会い
しおりを挟む「「「……………………」」」
『~~~~~~っ』
な、なんだろう、みんなの視線が突き刺さる。
特に、下に降ろしたルーギルと、ユーアの視線が痛い。
ルーギルはわかるとして、ユーアはなんで頬まで膨らませているんだろう?
もしかして怒っているのかな?
ナゴナタ姉妹をユーアの手を借りて、攻撃したことを。
ツンツンッ
プヒュッ!
「スミカお姉ちゃんっ!」
「わっ!」
うう、膨らんだ頬っぺたツンツンしたら余計に怒られた。
プンプンモードのユーアも可愛い。私は悪くない。
むくれてるユーアは子供が拗ねているみたいで、ちょっかいを出したくなるのだ。だから私のせいではない。はず。
そんな中、クレハンは――――
大人しく座って、みんなに渡した果実水を落ち着いて飲んでいる。
私が話し出すのを待っている感じだ。
そして、この騒動の渦中の二人の姉妹はというと
「じぃ~~~~」
「じぃ~~~~」
「………………?」
なんだろう。その熱視線が痛い、ていうか、怖い。
なんで、この姉妹は私とユーアをチラ見しているのだろう?
「……………………ポッ」
「……………………ポッ」
「っ!?」
うわっ、目が合ったらモジモジしだしたっ!
こ、怖いっ! 一体なんなんだろう!?
私は気を取り直して「コホンッ」と一声発してから話を切り出す。
「それじゃ、まずは簡単に報告をするね」
「はい、スミカお姉ちゃん」
「はい、スミカさんお願いします」
「オウッ!よろしく頼むぜッ!」
「はい、スミカお姉さま」
「ああ、スミカ姉」
私は5人の返事を聞いて話し出す。
「オークの死体は全部回収してきて、そこでナゴタとゴナタの姉妹と会って、ついでにトロールを倒してきたんだよ」
「だから遅くなったんだ」とも付け加える。
「えええっ! スミカお姉ちゃんオーク回収してくれたの!? あと、お話短いよっ!」
「ハァッ!? トロールまで倒した?? そこんとこもっと詳しくッ!! ってか簡潔すぎんだろっ!」
「……………やっぱりそうでしたか。なんとなくそんな予感が。でもナゴナタ姉妹は? 話が簡潔過ぎて状況がわかりません」
「あの時の、スミカお姉さまは素敵でしたっ!」
「ああっ!そうだったな、ナゴ姉ちゃん!」
ユーアはナゴナタ姉妹とトロールの話より、なぜかオークの回収に強く反応していた。絶対にオークのお肉が目当てだ。
ルーギルとクレハンはわかる。
あれが普通の反応だ。
ナゴナタ姉妹は、正直よくわからない。
二人抱き合ってキャッキャッしてるし。
そしてムギュってなってるし。
その憎い二つの塊同士が。チッ。
「それじゃ、もう少し詳細を細かく話すね。えーと、ルーギルとクレハンには、夜中に出かけるって話はしたんだよね?」
「ああ、肉を馳走になってる時に聞いたぜッ。サロマ村に気になる事があったんだろッ?」
「ええ、それの確認と、忘れ物があるとの話でしたね」
私の問いかけに二人はそう説明してくれた。
「スミカお姉ちゃん、なんでボクに言ってくれなかったんですか?」
ユーアが少し悲しそうに聞いてくる。
「それはね、私が行くって言ったらユーアは付いてくるでしょう?」
「はい」
「ユーアは、その日は初めての実践とたくさんの魔物と戦ったでしょう? だから夜だけはゆっくりして欲しかったんだよ。それにユーアは育ちざかりなんだから、夜はしっかりと寝ないとね」
そう説明した。
本当はもう少し理由や、まだ話せない事もあるけど、大体はユーアを思っての事が大半だ。だから私は間違ってはいない
「うん、わかりました。スミカお姉ちゃんっ!」
「スミカお姉さまは、お優しいです。まるで天女さまのようにっ!」
「ああ、スミカ姉は、優しいなっ! ユーアちゃんも幸せだなっ!」
「………………はい?」
ユーアと話をしてるのに、なぜこの二人は割って入ってきたんだろう?
あなたたち姉妹の話して無いよね?
あと、その私に対する高評価はなんなの?
今までも気になっていたけど、二人の地雷をどこで踏んでしまったんだろう?
「コホンッ。まあ、私が夜に出かけた理由はわかったよね」
「「はい(オウッ)」」
「それじゃ、出かけた時からゆっくり話すね」
※※
※ここからは、澄香の回想シーンになります。
ただ全てを語ってるわけではないですが
この話では澄香の考えや思いも含まれます。
「よし、ユーアはぐっすりだね。今日は疲れたでしょう? 本当にお疲れさま」
私は眠っているユーアの頬を撫でてそう独り呟く。
ユーアが望んだ事とはいえ、私と出会ったばかりに、こんな事にも巻き込まれたり、心配させたりして、本当に迷惑をかけてたんだと思う。
元々変化を望まない私からしたら、大迷惑な存在だと思う。
「でも、ユーアはきっと、そんな風に思ってないんだろうな」
そうユーアはきっと思ってない。
この子はそういう子だ。
私に付いて行きたいという思いはあるけど、その中身は、常識知らずの、変な格好をした、ちょっとだけ年上の私を心配しての行動なんだと思う。
ほっといては危ないし心配だと。
「でも、迷惑かけてる分は、私がユーアを守るし、ユーアが望むものは私も協力する、ユーアには、なんでも与えてあげたいから――――」
私は、スクっと立ち上がる。
「――――だから、まだまだ私と一緒にいてね。もっと世界を二人で見てみようよ。それじゃ行ってくるね、ユーア」
レストエリアを出て、再度バリケード代わりの透明スキルを張りなおす。
透明壁スキルのレンジを超えてしまうけど、操作ができないだけで消滅するわけではないから安全だ。
アイテムボックスより、ナイトビジョンゴーグルを出し装着する。
別に夜目が効かないわけではないが、高速で動く予定なので念の為にだ。小さいものに躓いても嫌だし。
※
私はそのまま夜の森を疾走する。
まずはサロマの村。
オークたちに全滅させられた村だ。
「う~、素早くて小さいオークの未知の腕輪は回収したけど、巨大オークの分は回収忘れてたからね……」
森を抜け、昼間に行ったサロマ村の破壊されたままの柵が見えてくる。
「まだ、オークの死体は残ってるよね? ユーアとログマさんの所に持っていきたいんだから」
オークの肉は、非常に美味しいらしい。
だからユーアにあげたいって言うか、一度、トロノ精肉店のログマさんの所に持ち込んで、解体してもらうつもりだ。
お礼にオークの肉を沢山あげてもいいしね。
村の柵を抜けて、中に入る。
オークの死体が散らばっているのは、もう少し先のはず。
「ううっ、なんか、臭いっ! 腐った匂いじゃないけど――」
すでに入り口付近まで匂いが漂っていた。
そりゃそうだろう。
100近い死体が放置されてるんだから。
「まずは、巨大オークの身に着けていた腕輪が先だね」
記憶を頼りに、その地点を目指してゆっくり駆けていく。
「あった、この辺だっ!」
壊れた家々の近くに、大きく穿かれた穴を見付ける。
その中に踏み入って、荒れた地面の中を探す。
「よし、これで一つ目の目的は終了っと。後はオークの回収と、ん?」
私はここで言葉を止める。
『こんな夜中の、こんな滅んだ村に人がくるの?』
索敵モードに切り替えた私は、二つのマーカーを確認する。
『ちょっと変な感じするね、こんな時間だし…… でも一応確認しておこうか。もしかしたら迷ってるだけかもしれないし』
念のために、蝶の羽根を動かして自分を透明化する。
『こっからだと、200メートルくらいは先か。一体何者だろう?』
その二人を視認するために、地上からではなく
スキルを使って空から跳躍していく。
『いた。二人なのは間違いない。けど、なんであんな子供が?』
見下ろして見た二人は、私とそんな変わらない背丈の女の人だった。
片方は、青白い感じのドレスの格好。
身長は私より少し上かな?
髪型は、肩まであるサイドテール。
優しそうな顔立ちの美人ではあるが、なんか陰を含んでそうな表情。
武器らしきものは持ってない。
もう一人は、顔と身長は同じぐらい。
白いTシャツみたいなものと、赤いホットパンツ。
すらりとして、引き締まった足が見える。
髪型はツインテールで、少し気が強そうな印象を受ける。
こちらも武器を所持していない。もちろん防具も。
『双子? だよね、きっと』
印象がまるっきり正反対だから、一瞬わからないけど、顔だけ見れば、それだとわかる。それに――――
『…………あれは、きっと私の敵だ。間違いない』
その双子は、これでもかってくらい女性の部分を強調していた。
胸の開いたドレスから見える、そのたわわな双丘。
主張し過ぎて、胸元が盛り上がり
シャツが捲りあがっておへそが覗く程の物量。
『クッ』
この世界で初めて、完膚なきまでに敗北を悟った瞬間だった。
今まで、大きな人はいなかったわけじゃないけど、ログマさんの奥さんのカジカさんは、お世辞に見ても、ランクBくらいだった。
その他、コムケの街には、それなりの人はいたけどこれは別格。
私は一応成長予定だから、会った人たちの事はあんまり気にしなかった。
けど――
『あれは、いくら私が成長しても無理…………』
それほど圧倒的なものなのだ。
戦う前から勝敗は決していた。
「お――い、ナゴ姉ちゃん、オークの死体が沢山あるぜっ! 貰って行こうよっ!」
「え? このオークの大群に滅ぼされてしまったのかしら? 久し振りに寄ったというのに」
「でも、きっと退治されたんだろっ? この死体がその証拠じゃないか?」
「それはわかるけど、ここの人たちにも会いたかったのに残念だわ。それよりもゴナちゃん」
「ああ、わかってるよっ、ナゴ姉ちゃんっ!」
二人は雑談を途中で止めて、空中を見上げる。
「そこに誰かいるのは、わかっているわよっ!」
「おい、コソコソ覗いてないで、出て来いよっ!」
そう叫んでいた。
思った通りに只者ではなかったっていう事か。
こんな夜中に、武器も防具も付けずに、かと言って護衛もいない。
オークの死体を見ても驚かない。
そして見えない筈の私をすぐさま察知する。
これだけ証拠が揃えば、あの子らが普通じゃないってわかる。
「待って、今降りるから」
そう言って私は、足場にしていた透明壁から飛び降りる。
『なんか面倒な事にならなきゃいいけど』
そう呟きながら。
その何気ない呟きが、フラグになるとは知らずに。
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